第3話 ただいま②

「ねぇ、正人、とりあえず五年前から何してたの?」

「え、待ってよ母さん俺が消えたのは10年前のはずだろ?」

「何言ってるのよあんたが失踪したのは五年前よ?」


 あ、そういえば召喚された時女神様が言ってたっけ、地球より2倍時の流れが早いって。

 てことは俺は異世界で十年過ごしたけどこっちでは五年しか経ってないのか。なるほど。


「ごめんあっちと時間の流れが違ったみたい。」

「まぁいいわ、とりあえず失踪した理由と何してたか話してちょうだい、その子達も含めて」

「あ、ハイ」


 それから俺は簡単にだけど母さんに

 異世界に召喚された事、2人の事との出会い、魔王を倒してこっちに戻ってこれたことを話した。


「なにそれあんたもっと聞かせなさいよ!一漫画家として聞き捨てならないわ!」


 しまった、そういえば母さんは漫画家だったんだ。

 まぁ、漫画家だからこうして受け止めてもらえてる事だしいいか。


「それは父さんが帰ってからね、てか、こっちにダンジョンみたいなのがあったんだけどあれ何?」


 ふと来る途中に見たダンジョンっぽい建物の事を聞いた。


「あぁ、ダンジョンね、ちょうど正人がいなくなってから2年後かしら、全世界にダンジョンが突然出てきたのよ。」

「え、マジで⁉︎」

「大マジよ、当然世界は大混乱だったわ」

「マジかよてかよく無事だったなこの家」


 やっぱりダンジョンだったらしい。

 女神様が言ってた事ってこの事だったんだな。


「まぁね、そこらの家庭と違って心得があるからね。それでしばらくしてダンジョン協会やらなんやらができて、探索者っていう職業が最近定着した訳よ。探索者って言うのは…ってあんたなら言わなくても分かるか。」

 

 いつもの優しい笑顔で母さんが言った。


「そうだったのか…てか大丈夫なの?ダンジョンがあるって事はダンジョンで獲得した魔法とかスキルとか地上で悪用されたりするでしょ⁉︎」


 ダンジョンで獲得した魔法とかスキルを使えば犯罪なんて楽勝だし、ましてや種類によってなんでもできてしまう。

 それこそ国を乗っ取ったりとか。


「あぁ、その事なら平気よ、ダンジョン内でしか魔法やスキルは使えないし、レベルアップして得た筋力とかはレベル0時のステータスに戻るから。」

「へぇ、なら良かった。あれ?でも待てよ?母さん、俺普通に魔法とかスキル使えたけど。」

「え、嘘⁉︎正人使えるの⁉︎」

「あ、あぁ、ここに来る時も飛行魔法で飛んで来たし…」


 これはあれか?女神様のおかげか?それとも異世界で得た力だからなのか?


「まぁ、正人は悪用したりしないからいいか、そんな度胸もないでしょ?」

「褒めてるの?それ」

「褒めてる褒めてる(棒)」

「左様ですか」


『ぐぅぅぅぅぅぅぅ』

 突然俺の膝の上からそんな音が鳴った。


「あるじースズお腹すいたの」


 音の正体はどうやらスズらしい。よほどお腹が空いてたのだろう。


「あぁすまんスズ、そういえば殆ど何も食べてなかったらからな、今作るからまだ寝て待ってていいぞ。母さん、キッチン借りるぞ」

「えぇ、もちろん。なんだったら私が作ろうか?」

「いいっていいって、成長した俺の料理の腕を見ててよ!とりあえずあれを出すか。」


 そう言って俺は『アイテムボックス』からスズ達に食べさせるメインディッシュとなる食材を出した。


「ま、正人あんたそれ…」


 母さんがまるで魔王が出てきたかのような顔をしている。


「あ、これ?これは皇帝美魚エンペラーフィッシュだよ、こいつめちゃくちゃうめぇんだよ!安心して!体とかに害はないから。」


「そ、そう?ならいいけど…」


 母さんはまだ驚いた顔をしている。


「まぁ、すぐできるから待っててよ、てな訳でまずは『解体』!」


 まずはスキル『解体』を使って皇帝美魚を頭を落として3枚に卸す。


「やっぱり『解体』は便利だな、応用が効く、次に卸した身を切ってこっちは刺身、こっちはフライにするか。」

「正人…あんた世の中の料理人や主婦に恨まれるから外でその解体?ってやつ使わないでね、絶対に!」


 いつも以上に真剣な目で母さんが言う。

 これ、本当なやつじゃん。

 恨まれるのはもうごめんだし外では絶対やめよう。ダンジョン内なら平気かもだけど。


「わ、分かったよ…ほら、とりあえず刺身食べてみてよ、今までのどの魚より絶対美味しいから!」


 切った刺身を皿に盛り付けたのを母さんに渡す。


「わ、分かったわよ…じゃあ、いただきます……ん、んん⁉︎確かにこれはうまいわ…どの魚よりもうまい。」


 最初は疑ってた母さんだったが、見事に皇帝美魚の虜になった。


「だろ?まぁ、刺身だけで満足してもらっては困るんだけどな、よし、できた。皇帝美魚のフライ!母さんスズとシズを起こしてくれないか?」

「えぇ、スズちゃんシズちゃん、ご飯できたわよ。」

「ふわぁ〜、あるじのママだおはようなの」

「んぅ、あるじのママおはよう」

「ふふ、おはよう…さ、2人ともご飯食べましょ!その前に手を洗いましょうね!…ん?」


 ブー、ブー、と母さんの携帯が鳴る。


〈(真紀)もしもしあなた?〉

〈(悟)もしもし真紀。もうすぐ帰るから、風呂の準備しておいてくれ。〉

〈(真紀)えぇ、分かったわ、早く帰って来てね!〉

〈(悟)あぁ、それじゃ。〉


「正人ーもうすぐ父さん帰ってくるって!2人に手を洗わせるついでにお風呂沸かしてくるわね」

「おぉ、もうそんな時間か、丁度いいか、分かった。」





[スキル説明解体編]


 スキル名『解体』


 効果

『解体』は生物にしか適用されない。


『解体』は対象を自身のイメージを適用し、文字通り解体する。

なお効果は使用者のイメージと知識により左右する。

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