第26話:完成度増し増し、からの……



「何これ、何これっ! なんで? お母さん用のコレ、こんなにつるんつるん、なの!?」


 出来上がった美里用の『上げ底』の物体オブジェクト


 それを手に、アカネが驚きの声。


「んふふ。チタンの威力?」


「サメ肌はサメ肌なんだけど、今までのと、全然違うぅうう。チタン? あの高いハサミ?」


「そうそう。チタン加工の四千円のハサミ」


「うぅ……」


 アカネは葛藤する。


 やはり、金なのか?


 世の中、金に支配されているのか?


「でも、それだけじゃないよね?」


 雪人の作業を見ていて、いつもと少し違うところも。


「そうだね。ハサミのお陰で、仕上げをかなり綿密にやったし」


「うんうん。ちまちま、ちまちまやってたね」


 ある程度は勢いを付けて、チョキチョキ、とが基本ながら。


 仕上げの時は。


 ちょぉ、っきん。ちょぉ、っきん。


 みたく。


 じっくり、ゆっくり、正確に、精密に。


「それに、何か、ヤスリかけてたよね?」


「うん。スプレーかけた後に、ヤスリをかけて表面のザラザラをできるだけ取ったんだ」


 雪人がそのヤスリを手に、ヤスリがけをする手の動きを真似ながら。


「あとね、スプレーも変えたの」


「そう言えば、色がちょっと違うね?」


 つるんつるん、と、物体オブジェクトを撫でまわしながら、アカネ。


「ラッカー系から水性の塗料に変えてみたの」


「水性? 汗で溶けたりしないの?」


「それは大丈夫みたい。屋外の木の板とかの塗装に使う塗料だから」


 今度は、そのスプレー塗料の缶を片手に解説する雪人。


「ほーほー」


「あとねー」


「まだ何かっ!?」


「じゃ、じゃーん」


 雪人が取りい出しましたるは。


「もう一個!?」


 同じような、物体オブジェクト


「うん、これ、ボク用……」


「え?」


「これ用のブラも買ったよー」


「ぉぃ」


 さすがに。


 しかし。


 アカネも懇願おねだりして作ってもらったし。


 アカネ、美里、それに、ユキ。



 三人揃って。


 雪枝と同じサイズで。


 一家全員。



「あ、あなたたち、ねぇ……」


 さすがに。


 三人ならんだその姿を見た雪枝が、頭をかかえる。


「えへへー、いいでしょー。写真、撮りましょ、写真。ささ、雪枝さんも並んで並んでー」


 ことあるごとに、記念写真。


 一家全員、仲睦まじく。


 苦笑する家長の雪枝が真ん中に座り。


 後ろに、雪枝のの美里。


 左右に


 三人、にっこりと。


 家族四人、同じで。



 はい。



 ぱしゃっ。




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