第9話 : 約束 [1]
紗耶香が時間が経つのも忘れて読書にはまっている間に投票は終わり、結果の確認だけが残っている。
「この子は今どこにいるの?」祐希は皆一緒に結果を見たい気持ちで紗耶香 が来るのを待つ。
「来るだろう。 いつも少しずつ遅れたんじゃない?」桃香は紗耶香が文芸部にどれほど大きな自負心を持っているかをはっきり経験で感じたので、このような重要な瞬間に来ないわけがないと思う。
その後も数十分を彼女が必ずアヒルだと信じながら待つが、何の知らせもない。 忍耐心が限界に達する。
「とりあえず結果を確認してみよう。」このように漠然と待っていればきりがなさそうだ。
両側にぎっしりと貼られたステッカーを一つずつ数え始め、残ったステッカー数が減るほど結果がより一層目にはっきり見える。
小さな意見の衝突で始まった賭けが、あれこれときっかけにますます大きくなり、ついにこのように結果が出た。
真っ先に口を開くのは栞奈だ。
「もしかして何か間違っているのではないですか? 私の目だけ変なのか」彼女はどうしても結果を受け入れることができず、両目を疑う。
「それは違うと思う。 皆はっきり見ているじゃないか。」桃香は栞奈が薄情だと感じるほど淡々とした反応だ。
「そんな…」栞奈は言葉が出ない。
その光景を見守る弘も同じだ。
彼が確かに望んだ結果であり、当然喜ぶと思ったが、実際こうなるとどうしてもそうはいかない。 あっけにとられて状況がどのように流れているのか見守るだけだ。
皆が栞奈をどう慰めたらいいのか分からず、ためらっている間にドアを開ける音が聞こえる。
紗耶香が入ってくる。
「あ…やっと来たね。 どうしていつもこんなに重要な度に遅れるの?」祐希は現在の中途半端な雰囲気をわざと知らんぷりしようと文句を言う。
「ごめんね…投票は終わったの?」紗耶香は自分が突然入ってきて部屋の雰囲気が変わったことに気づく。
「あ…結果がこのように出た。」まるで投票ステッカーを数えるのが終わるのを待っていたかのように絶妙な瞬間に登場するのが不思議だ。
紗耶香 も結果をはっきりと確認する。
「あ、そうだ。ところで…···. 私がまだ投票していないんだから」 彼女はステッカーを手に取り,ゆっくりと投票板に近づく。
「あえてやる必要はなさそうだけど、一票差でひっくり返る結果じゃないでしょ? どうせ決まったよ」
「でも私にも投票をする権利があるんだよ!」 彼女は皆の関心が集中していることを確認し,意思表示を明確にすることにした。
「そうだけど、どっちにあげようが結果は変わらないじゃない? する必要がなさそうだけど。」 本当にそうしたいというのに、特に引き止めたくはないが、実際に何の意味があるのかと思って冷笑的な反応だけを見せる。
「約束したんだ。必ず守ることに。」 その意味というのは紗耶香が以前栞奈と公園で会話をしてからさらに大きく響いた。
「何の約束?」 一部始終を全く知らない祐希は紗耶香の言うことがまともに理解できない。
「私の理想のタイプに合う部員を投票で言ってあげることに。」紗耶香はその日の記憶がまだ生々しく残っている。
「約束したよ」紗耶香はひろしと栞奈を交互に見て答える。
「それでこのように急いで来たんだ。 こんな大事な瞬間にね。」
「だから…結果がもう出たのに… それは何の意味が。」
「いや、意味がある。 特に今この雰囲気で」別に説明してくれる人はいないが、雰囲気を通じて大体どんな状況なのか見当がつく。
「確かに意味があると。 弘はきっと私が何を言っているのか分かるだろう。 そうでしょ?」彼女の声から固い決意が感じられる。
「栞奈?」紗耶香は投票板の前で大声で栞奈を呼ぶ。
「え?」栞奈はびっくりして反応する。
「あの時私が公園で言った話を聞いたなら、分かると思う。 私が今何を言っているのか。」
「見える?」 紗耶香は投票結果が決まった投票板のひろしの方にステッカーを貼る。
「私が望む部員は弘だ。」残忍だと言えば残忍な方式で自分の意見を表示しながら結果をより一層確実にする。
「そして、その意味というのは私たち皆が感じているまさにその感情だ。」すでにその感情を胸で切々と感じる状況で、改めて陳腐な説明を並べる必要はない。
紗耶香はゆっくり栞奈に近づく。
「でも、それを心で受け入れられないのはあなた一人だけだよ。」
栞奈は頭を下げては紗耶香と目を合わせることができない。
「あの時公園で約束したじゃない? ずるそうにしないことにしたじゃない?」紗耶香は栞奈の目をまっすぐ見つめる。
万感交差する栞奈は何も言えない。
「そして…」 紗耶香はすぐに首をひろしの方に向ける。
「おめでとう!私たち文芸部に入ったことを。 これから仲良くしよう。」 紗耶香はすぐそばにいる栞奈のことを知らないふりをして明るく笑いながら弘に手を差し伸べる。
栞奈はこの光景を見て感情にこみ上げるが、必死に押さえつける。
「よし、お疲れ様。 そしておめでとう。 私はもう行ってみる。 新入部員を歓迎する瞬間に敗者が割り込んで台無しにするわけにはいかない。」 栞奈はこうしていても惨めになるだけなので、努めて涙を隠して不良債権を去ろうとする。
栞奈を除いた全ての部員は彼女が去る姿をじっと見守るだけだ。
紗耶香が突然ひろしの手を握る。
文芸部は小説を上手に書くことが一番重要だけど、違うとしたら何が重要なの?それなら勝負だ! @Song1
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