第7話 : 旅行 [2]

一つ確かに学んだことは、責任を放棄する選択肢は許されなかったという事実だ。 ここで何かしなければならないという事実だけを再確認して家に帰ってくる。


午後になると徐々に暗雲が立ち始め、下校時間になると雨がざあざあ降る。 単なる直感に過ぎなかったのに、ぴったり合ったことに驚かざるを得ない。


その少年が私の言うことを無視して傘もなく門を出たのが思い浮かぶ。


少しけしからんが、泊まるところを与えた人でもあるから恩返しをするつもりで少年に傘を渡しに学校へ行く。


私は学校の正門で少年が途方に暮れているのを発見する。


慌てた様子が歴然とした少年に近づき、傘を渡す。


ちょうどその時、昨日会った少女が近寄ろうとして立ち止まる。


「あ、傘があるんだ。 一緒にかぶって行こうと思ったんだけど。」


少女の視線が私に向かっていることに気づき、努めて避けようと首を回すと、私の後ろから歩いてくるある女性と目が合う。


「一緒にかぶって行ってもいいのに。」 少年の声から物足りなさがにじみ出ている。 失望感が混じった一言が私に向けられた恨みのように感じられる。


「いや、二人で使うと不便なだけだろう。」 少女は微笑みながら親しみを込めて答えるが、むしろ唐突な拒絶に感じられる。


「ええと…」彼はもう彼女を捕まえることができず、ただ遠ざかっていくのを見守るだけだ。


「ああ… 一緒に使って行くいい機会だったのに、おじさんが台無しにした。」 少女が去ると、彼は私に目を向ける。


「一緒に…行こうか?」申し訳ない気持ちを少しでも晴らそうとそっと傘を渡す。


「一人で行きます。」彼は気にせず立ち去る。


私は彼を追いかけようとして立ち止まる。 今捕まえればかえって怒るばかりだ。 気分がよくなるまで待ってからゆっくり話したほうがいいと思う。


私は学校の正門を出る途中、少女がさっき目が合ったその女性と一緒にいるのを発見する。 私はその光景をじっと見つめながら少女と目が合う。 まるで罪でも犯したかのように正門の塀に隠れてしまい、二人が交わす対話を盗み聞きする。


「体調も悪いのにじめじめした天気に雨でも降られて風邪ひいたらどうするの。」


「大丈夫です。たまには外の空気を吸いながら家に帰るのも悪くないです。」


「早く車に乗りなさい。」


「はい。」


少女はすぐにその女性の車に乗り込む。


私はその車が通り過ぎるのをじっと見て、遠くに消えてから少年の家に帰ろうとする。


家に着くと少年はまだしかめっ面をしている。


「まだ怒りが解けなかったの?」先に話しかけてみようと思う。


彼は何も言わない。


「どうせあの女の子は車に乗って行くつもりだった。」


「車?私と一緒に歩いて行くと言ったんです。」信じられないようにかっとなる。 やはりこのためにすねていたのだ。


「どういうことだ。 私が出る途中で車に乗るのを見たんだけど」


「え?そんなはずないのに… 見間違えたのだろう。」


「確かにその女の子だった。」


「車で行くのにどうして傘を差して行こうと言ったの?」


私はその質問を聞くと訳が分からなくて言葉が詰まる。


「そうだね…」納得せざるを得ない。


これは私にも理解できない部分だった。


「とにかくこうなった以上、お願いしたいことがあります。」


「我が家に来たのも、路地で出会ったのも、そして傘を持って学校に来たのも偶然ではありません。 きっと私の望みに答えてくれると思います。」


「だから何を望んでいるんだろう。」


「未来が知りたいです。」


「未来?」


「これから何をしたいのか? それを知れば、何か未来がわかるのではないでしょうか?」


「それは話にもならない。」


「どうして家に帰ったの? どうして路地で出会ったの? なぜ傘を持ってきたのか? ただ邪魔するつもり?」


「ただそうしたかっただけなのに。」


「何か必然のようなものです。 運命のようなもの。 これから何をしたいのか、これからどうなるのか知りたいです。」


「よく分からない。」


「あ…」


追及されるのが戸惑い、ただ家を出ようとする。


「さあ…ちょっと待って、一人で考えてみるよ。」


こうしたからといって変わることはない。 明日少女に直接会ってみたほうがずっといいと思う。 少女の話を聞いてみると、いい考えが浮かぶかもしれない。 この状況を自ら納得するのが優先だ。


さっさと家を出るとすぐ少女に出会う。


「ああ、あなたは…」私はあわててためらう。


「こんにちは!私たち初めて会うんじゃないですよね? 学校で会ったじゃないですか?」私が一歩退くと少女が一歩近づいてくる。


「そうだね。」まだこのように会うには準備ができていないのに、その少女が私が出てくる時をここで待っていたのかもしれないという気がする。


「どこにそんなに急いで行かれるんですか? もしかして私を探していたのですか?」少女が近づきながら尋ねる。


「あ… いや、それは。」 私は負担な視線を避けようとする。


「どうしてそんなに戸惑うんですか? まるでここで会えない人でも見たかのように?」


私は彼と会話を終えてから彼女のことを考えていたが、まるでその考えを読んだかのようにばったり会ったのが当惑せざるを得ない。 彼が言ったように、今起きていることはすべて必然かもしれない。


「まあ、結構です。 私に会いに行く途中だったかもしれないし、単純な偶然だったかもしれませんが、構いません。 こうやってばったり出くわしたんですから。


「さっき学校の正門で話した会話を盗み聞きしましたよね?」


「それも一部でそんなことは。」 少女のきらきらとした瞳を見ると、彼女の瞳を見ていると良心の呵責を感じて、とても図々しく否定できない。 曖昧な否定はむしろより強い肯定の表れだ。


「その話は全部聞いたということですねか? ひどいです…まあ、むしろよかったと思います。 どうやって話そうか悩んでいたんですよ。 余計な手間を省いてくれましたね。 実は、私お願いがあるんですよ。」


「お願い?」


「はい、お願い。」


「実は私は体調が少し悪いんです。 クラスの友達には虚弱な姿を見せ、心配されるのが嫌で表に出してはいませんが、数日後には都市にある大きな病院に行って治療を受けなければならないそうです。」


「ああ… そうなんだ。」その言葉を聞くと、あらゆる考えが頭の中をかすめる。 先程言った頼みというのが何か気にならざるを得ない。


「まさにそのような憐憫に満ちた視線を受けたくないです! 同情心を誘発したくて言ったのではないんですよ! そんなに可哀想な人ではありません! そんな同情心がむしろ私を悲恋のヒロインにするんですよ!」


「そんな表情だったの? ごめんね。」


「とにかく…それで! 去る前に大切な友達と思い出を作りたいです。」


「それを手伝ってほしいということ?」


「いいえ。」


「違うの?」


「二人きりでいられたら、いい思い出になると思います。 それで!二人きりでいられるようにしてください。」


「あ…」


「どういう意味なのか分かりますか? さっきも学校でもご覧になったと思いますが、私のことを心配していつもついて行くんです。」


「分かった!だからあの人を私が捕まえてほしいというの?」


「いいえ。心配を解決するのを手伝ってください。」


「それが…」


「あの方の願いを叶える方法は本人もよく知っていると思います。 ぜひ!お願いします!」


「分かった。」


翌日もやはり下校時間になり、その女性は昨日のように少女を迎えに来る。


「ねえ…ちょっと時間を空けてもらえますか?」私は勇気を出して彼女に話しかける。


「え?どうしたの?」と彼女は少女の手をぎゅっと握ったまま首をかしげる。


「それでは私は先に家に帰ります。」すぐそばにいた少女がまるで待っていたかのように彼女の手を振り切ってその場を離れる。


「あ…ちょっと待って。」 彼女はその姿を後ろから見つめながら眉をひそめる。


「ちょっと話したいことがあります。」私は気にせず彼女をじっと見つめている。


「それではここは少しうるさいので静かなところに行きましょうか?」と彼女は再び私に首を回して、私の提案を受け入れるという意味で騒々しい学校正門から少し離れた静かな方を指差した。


「はい、そうですね。」


静かに彼女について行きながら、何をどう話せばいいのか頭の中で整理する。 私の悩みを解決する上で重要な糸口になるかもしれないという気がして慎重にならざるを得ない。


「これくらいでいいと思います。」 桜の花びらだけが舞う閑静な川沿いに着くと、彼女は立ち止まる。


私もやはり足を止めて何か言おうと口をもぐもぐさせる。


「私が先に一言出してもいいですか?」彼女は少し前までは不便な雰囲気を漂わせておきながら、いつそうしたかのように先に積極的に飛びかかる。 私をここに誘い込もうと演技したのかもしれない。


「え? はい… そうしましょう。」 選手を抜いて戸惑っている時に思わず要求を受け入れる。


「もし…未来が見られるなら信じますか?」


「え?」予想外の質問に言葉が詰まる。


「私は見ることができます。 そしてあの子が望む未来を守ってあげたいです。 これが私の存在の理由なら信じますか。」 私がこのような反応を見せると予想したかのように平然と話を続ける。


「それがどういう…」理解できない言葉だけを並べる彼女に何の返事をすればいいのか分からなくてためらう。


「今すぐ理解できなくても大丈夫です。」


「あの子が望む未来というのは正確に何ですか?」私は彼女の話にもう少し耳を傾けることにする。


「それは…」彼女は言葉じりを濁す。


「知らないんですか?」今まで堂々としていた彼女の態度が変わることに気づく。 彼女がためらう理由が何なのか直感する。


「ただ守ってあげたいだけです。」彼女は努めて平然とした表情をしながら、そのような明らかな理由を隠そうとしているようだ。


「それが少年と縁が結ばれるのを邪魔する理由ですか?」


「特に邪魔したくはありませんが、ネックになるなら、喜んで直接出かけます。 決断が揺れています。 迷いと不安でいっぱいになっているのが見えませんか? 見たところかなり親しいようですが、手伝ってほしいです。 何の関係かは分からないけど、あの子がこの関係を整理すれば気を引き締めることができると思うんですよ。 決心を固めることができるんです。 これがどれほど重要かを知ってほしいです。」


「本当に未来を見られるということなら、私が未来から過去に来たような気がするという言葉も信じられますか?」


「え?」


「一度試してみるのはどうですか?」私の言葉にむしろ彼女は当惑する。 私は彼女が非常に単純な目的意識で動いていることを発見する。 まるで自分自身を見ているようだ。


「何の試験ですか?」

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