第20話 いつまで追いかけたらいいんだろう

ねぇ

私はいつまで

こんなことしてていいのかな。


引き際は、誰も教えてくれない。

自分で、決めるしかない。


結婚を夢みること

自分の店を持ちたいと願うこと

そのための努力

一体いつまで続けたらいいんだろう。


無我夢中で打ちこむこともあれば、

急に虚しくなって投げ出したくなることもある。


だけどまだ、

すべてを手放す勇気はないの。


やっぱり、ほしいのよ。


温かい家庭も

好きなことを仕事にして

収入を得たいという野望も、

手に入れたい。


中途半端にできなくて


やりたいことも仕事じゃなくて

趣味程度にとどまれば、とも考える。

結婚にこだわらなくても、

浩輝さんがいてくれるならって

妥協しそうにもなる。


だけど

結婚は安心。

社会的にも認められ、財産も受け取れる。

あの人とは事実婚も無理。

ずっと私のことを愛してくれる保証はないし、

彼は意外に冷たいところがあるのはなんとなくわかってる。

でも別れないのはきっと、おたがいにメリットがあるからだわ。


好きとか愛してるなんて言葉は、

私達の間ではごまかしの戯言でしかない。


あの人は誰のことも愛せない。

自分のことも愛していない。

誰のことも信用せず、お金がすべて。

愛情も、お金で買えると思ってる。


時々、息苦しい水の中にいるような気分になる。


浮上できなくてもがいている。


ふと空を見上げると、飛行機が魚に見えた。


銀の腹を見せ、私の頭上をぷかぷかと

気持ち良さそうに泳いでいる。


高みを目指すって、

あの鉄の魚を掴むようなものだ。


コンテストで優勝すること。

栄冠を勝ち取ること。


果てしなく遠い


成功する人間なんて

世の中のごく一部だ。


ひと握りの人間しか、

夢を叶えることはできない。


途中でやめてしまった人達は

何をきっかけに区切りをつけれたのか。


多くの称賛を手に入れてる人がいる。

その一方で、どんなにたくさん努力しても

誰にも見てもらえず、

優れたモノを持っていても

埋もれたまま消えていく人がいる。


この違いは何なんだろう?


ネットでの投票

私のは数日間何もナイ。

ランキング上位者には、

たくさんの票数が集まっている。


ほんとにすごいと納得する人もいれば、

贔屓目ではなく、正直私のほうがいいのに、

って思うのもあるのよ。

この前のドレスコード事件みたいに…


なんでこの人ばかりがチヤホヤされるの?

なんで私じゃないの?

そう思うこともしばしば。


嫉妬、悔しさ、怒りにも似た感情がわき起こる。

勝負、勝敗、順位を決める場なら

必ず誰かが選ばれ

それより多くの人が堕ちることとなる。


この感情に耐えきれないなら、

最初から挑まなければいいのに。


認められたいからだ、きっと。


私という存在を。


誰かに気付いてほしい。


この声に


叫ぶ想いに。



何をしても

トップにはなれない。


それが実力と言われれば

そこまでなのだろう。


素直に認めて

引き下がればいいのに。


あきらめたいのに

あきらめきれない。


往生際が悪い


がんばればいつか手に入るんじゃないかと

わずかな希望を心の隅にしまってる。



趣味の料理を

仕事にしたい。

自分の店を出したい。

淡い想いがいつしかかたちとなり、

実現へ向けて一歩踏み出し、

チャンスを掴むためコンテストに応募した咲希。


けれどそのハードルは高く、

既にくじけそうな心境を吐露しています。

同時に彼との関係も、相容れない結婚観の違いが

徐々に深まる溝となっている模様。

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