第6話 帰宅

パフェを食べた後、カラオケに誘われたが断った。

リカちゃんが何というわけでなく、浮かれていた俺自身が恥ずかしいのだ。


俺が断ると、ハルマも帰ると言った。



二人と別れて、家に向かって歩き出す。

ハルマが、俺から借りていた参考書を返したいと言ったので、部屋にあがった。



「これ、ありがと。後で俺も買うよ。」


「ああ。」


なんとなくボーッとしながら返事をした。



「そんなにリカちゃんのこと、好きだったの?」


「うん…なんていうか、好きになりかけてた……って感じかな……。ああいう子と一緒にいれたら楽しそうじゃん。」


「胸はあんまり無さそうだったよ。」


「だから、それはオプションなの!」


「いつも送ってくる画像はみんな大きいじゃん。」


「好きな人のおっぱいは、大きくても小さくてもいいの!ってゆーか、なんであの場であんなこと言うの?ドン引きされてたよ!」


「大事なことなのに、言わないから。」


「言ったってしょうがないじゃん!胸は急に大きくならないよ!なんで俺がリカちゃんが気になるって知ってて、そんな話するんだよ!」



と、自分で言ってハッとした。

今まで、ハルマが俺の好きな人をとると思っていたが、俺の株を下げることも作戦のひとつなんじゃなかろうか。



「……怒ってる?」


ハルマがちょっとビックリしたような顔で聞いてきた。


「……怒ってるよ……。」



本当は怒ってない。

胸の話なんて、もう高校生だし、大したことじゃない。

あの後、二人はカラオケにも誘ってくれたし、本当にキモがられたわけじゃないだろう。

元から彼氏がいたんだから、ハルマは何も悪くない。


でも、なんとなくハルマをちょっとだけ困らせたかった。

まあ、俺が怒ったくらいでハルマが何を困るんだ、ってかんじだけど。

 


「……ごめん。そんなにちゃんと考えてるって思ってなくて。とりあえず、彼女がほしいのかなって思ってた……。」


ハルマは急にシュンとなった。



たしかに、最初は不純な動機だし、今ももう彼氏がいるならいいや、ってくらいどうでもよくなってる。


ここで、気にしてないっても言えるけど……。

今までモテるのが当たり前で、マウントしてきていた(と、俺が勝手に思っている)ハルマが、しおらしくしている姿になんかムズムズしてきた。



「ハルマは振る側だからわかんないんだろうけど、振られる方はやっぱり辛いんだよ。これ以上仲良くできないんだな、とか、俺にダメなとこがあるんだな、とか、落ち込むよ。」


ちょっと大げさに言った。



「そんなの、俺にだって経験あるよ!」


急にハルマが大声を出して、ビックリした。



「え?そうなの?俺、知らないんだけど。」


なんでも話せる仲だと思っていたから、ちょっとショックを受けた。



「……好きな人に振り向いてもらえなくて、好きじゃない人にいくら好かれても、意味ないよ……。」


ハルマはうつむいた。

こんな暗いトーンのハルマを初めて見た。



「……結構……ガチなんだね?今の話?昔の話?」


「今も……だよ。」


「それこそ、告らないの?」


「どうせ無理だから……。」



ハルマで無理ってなんだろう。

彼氏持ち?先生?

先生はエロいな。

まさか人妻……。

人妻とハルマは……なんか似合う。


何を考えてるんだ俺は。

友人の悩みで妄想してる場合じゃない。



「でも、かなわないのにずっと同じ人ばかり追ってても、辛くない?新しい人が合うかもしれないし……。」


「……すぐ諦められるのって、本当に好きなの?」


ハルマがこちらを睨むように見た。



なんか、ギクッとした。


言われてみれば、自分は顔がかわいいとか、せいぜい話しやすいくらいでその子のことが好きになってしまう。

だから結ばれなくても、ショックは受けても傷つきはしない。


でも、ハルマは違うらしい。

そんなにハルマを夢中にさせるなんて、どんな人なんだろう。



「俺、今までハルマとはなんでも話せたから、てっきり好きな人はいないと思ってたんだ…。俺には言いたくないんだよね。別に、興味本位で聞きたいわけじゃないんだ!なんか、今まで知らずに色々言ってごめん……。」



ハルマがそんなに思い詰めていたとは知らなかった。

本当は相手が誰だか知りたい。

でも、こんなに一緒にいて、気づきもせず、教えてももらえないなら聞くべきじゃないんだろう。

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