インターミッションー旦那様は気持ちを知りたいー

まじめでしっかりしているように見えるけど、どこか抜けているところがかわいくて仕方がない。


「そんなに近かったかな…?」


先ほどの風花さんの慌てた様子を思い出して僕は笑った。


寝室へ行くと、風花さんは先にベッドに入っていた。


彼女の隣に滑り込むようにして僕もベッドの中に入ると、その顔を覗き込んだ。


…寝ていた。


こうして寝顔を見る度に僕は風花さんと結婚したんだなと毎回のように思う。


その寝顔はかわいらしくて今すぐにでも襲ってしまいたい…けれど、彼女の前では理解のある旦那様のままでいたいので我慢をした。


実を言うと…キスもセックスも、最後にしたのは半年も前だったりする。


レスではないと思うけれど、ヘタに手を出してしまって風花さんに嫌われたらと思ったらなかなか手を出すことができないでいる。


もう少し言うならば、

「風花さんの気持ちがわからないんだよな…」


そう呟いた後で、僕は枕に顔を埋めた。


風花さんに嫌われている…と言うことはないと思うけれど、彼女の気持ちがわからなくなる時がある。


そもそも風花さんと交際を始めた時も、プロポーズをした時も、僕は彼女の気持ちを聞いていなかった。


 * * *


「風花さん、好きです」


彼女に告白したのは中学卒業間近の夕暮れ時だった。


進学先の高校に合格して、後は卒業式を待つのみだったこの日に僕は風花さんを公園に呼び出した。


「ありがとう、私も髙嶋くんのことが好きだよ」


精いっぱいの勇気を出して告白をした僕に、風花さんは笑って答えてくれた。


ああ、よかった。


風花さんも僕と同じ気持ちだった…いや、ちょっと待て。


僕は“ラブ”の意味で風花さんに言ったのに、風花さんは“ライク”の意味で僕に言ったんだよな…?


思わぬ勘違いを呼んでしまいそうな気がしたので、すぐに僕は口を開いた。


「風花さん、僕と交際をしてくれませんか?」


続けて言った僕に、風花さんは一重の目を大きく見開いた。


「えーっと、交際って“男女交際”のことだよね…?」


風花さんはそう聞いた後で首を傾げた。


「そうです、男女交際の意味です」


僕は彼女の質問に答えた。


「あー、なるほど…」


風花さんはそう呟くと、考えるような仕草をした。


…これは勘違いをしていたヤツだな。


もしかしたら、他に好きな人がいるって言う可能性もあるだろうな。


「あの…」


「いいよ」


僕をさえぎるように、風花さんは言った。


「髙嶋くんと交際してもいいよ」


「えっ…い、いいんですか…?」


自分から告白をしたくせに我ながら何を言っているのだろうか?


「うん、いいよ」


そう返事をした風花さんはとてもかわいらしくて、心臓がドキッ…と鳴ったのがわかった。


何この人、天使かよ…!?


いや、天使だったわ…と言うジョーダンはさて置き。


「あ…ありがとうございます!


不束者ですが、どうぞよろしくお願いします!」


勢いよくお礼を言って頭を下げた僕に、

「うん、よろしくね」


風花さんはそう言って微笑みかけたのだった。


 * * *


そんな感じで風花さんと交際を始めてプロポーズをして今に至ると言う訳である。


何だろうな、我ながら突っ走っている感があるな。


僕だけが風花さんを好きなばかりで、風花さんは僕のことをどう思っているのかわからない。


「ーー嫌われてはない、と思いたい…」


言い聞かせるように呟くと、目を閉じた。

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シークレットシスターーDance with the Devilー 名古屋ゆりあ @yuriarhythm0214

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