第7話

夕日が綺麗だ。


ここは夕日百選にも選ばれそうな場所だな。


気持ちのいい風が吹いている。


オレンジの夕日から放射状に放たれる光が、ラピスラズリ色をした空に輝く一番星を照らしているようだ。


わたしはなぜここにいるのだろう。



「シミーから逃げられると思っているのかずら」


ハッとした。


声のする崖の下を恐る恐る覗く。


息の根が止まる。



崖の下では、怨念を取り込み大きく膨張してしまったシミーの姿が。

大きく口を開けてわたしを飲み込もうと待ち構えている。



わたしは眼を閉じた。

もう逃げられないのだ。



家を出る時、日焼け止めを塗ってこなかった。

日傘もUVカット機能のついた帽子も、何も持たずに家を飛び出してきた。

飛行機の機内では近い太陽光に眩しさを感じながらも、温かく心地いいと思っただけで。

寝落ちしてたどり着いた、ここは沖縄県。


全国一の紫外線量の多さを科学的に認められている県だ。


知らないうちに、シミーの怨念を増幅させていた。



わたしは、もう、シミーから逃れられない。




わたしの体も命も、どす黒く変色し膨張した濃いシミーに飲み込まれた。





ハッとして目が覚める。


スマホの目覚まし機能の音で現実に帰ってきた。



どこから夢だったのか。かなり嫌な夢だった。



洗面所の前に立つ、鏡にはそんなに悪くない肌の自分がいる。



ほっとした。

まだ化粧品を代えて一ヶ月も経ってないし、

まだまだわたしはキレイな肌を目指せる。


振り向いたら鏡に映る首もとにどす黒いナニモノかの姿があった。


「ハーイ!シミーだに!」


わたしがそれに気付くのは、それからまだまだ先のこと。

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シミーの悪意 久保田愉也 @yukimitaina

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