②青天井に手を伸ばす



 立場や環境が大きく左右するものではあるけれど、人を活かすことも殺すこともできる。言葉には、そんな力が宿っている。

 それがわたしの生きてきた人生の中で、教訓とも言えるくらい強く学んだことだ。


 ――兄妹支え合って生きるんだぞ。


 お父さんのあの言葉が、今のわたしを作ってくれている。

 いや、きっとそれだけじゃない。

 わたしは今までお兄ちゃん以外にも、お父さんからもお母さんからも、明ちゃんからも、蕾華からも、そして……梓ちゃんからも。

 これまでに出会ってきた人たちから沢山の言葉を貰ってきた。

 食べた物が血となり肉となるように、それら全てが今のわたしを作っている。

 だからこれからも、わたしは沢山の人に沢山の言葉を返して、そしてまた貰って。そのやり取りを繰り返していくのだ。

 わたしの言葉がわたしの傍に居てくれる人たちの、そして何より、お兄ちゃんの何かになって一部として生きていくとしたら、とても嬉しい。

 マンション生活にも慣れてきた日の夜、そんなことを考えながらお兄ちゃんの顔を見つめた。

 するとお兄ちゃんも、わたしをじっと見てくれる。

 ああ。

 とても。

 とても幸せだ。




 今なら天井に手が届くかもしれない。

 ふと、そう思って。

 わたしは左手を真上に伸ばした。

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青天井に手を伸ばす 陸離なぎ @nagi_rkr

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