第2話:彼女は精霊。

レンタル彼女・ラップランドフォレストってところから乃絵瑠のえる・ロヴェニエって女の子がやって来た。


なんにも覚えてないけど、僕は酔っ払っててレンタル彼女をポチッとしたらしい。

酔っててもちゃんと自分のタイプの子を選んでる僕、さすがだよ。


覚えてないから言い訳できないし、せっかく来た乃絵瑠ちゃんを追い返す

なんて可哀想だし、もったいないから、レンタルすることにした。


二時間15,000円で。


で、貴重な二時間を有効に使わないと・・・。

だから最初はどうしても彼女のことが知りたいよね。


「乃絵瑠ちゃんは?・・・ハーフだから生まれはどこ、日本?」


「生まれも育ちもフィンランドのラップランドにあるコルヴァトゥントゥリ

「耳の山」ってところの出身だよ」


「あ〜そうなんだ・・・へ〜フィンランド・・・え?フィンランド?」

「君、フィンランドからわざわざ、僕んちに来たの?」


「レンタル彼女の本社はフィンランドだけど、日本にも主張所があるから・・・」


「ああ、主張所ね・・・びっくりしたわ、フィンランドから来たのかと思った」


「先に言っちゃうけど、私・・・精霊「エレメンタル」なの」


「なに?」


「だから精霊」


「またまた・・・早速人をからかって・・・どこからどう見たって人間じゃん」

「そういう話題で盛り上げようって訳?」


「私が精霊だって言うと、引く人もいるし、喜んでくれる人もいるね」

「ヨッシーはどっち?」


「まあ、普通は信じないよね。俺は引きはしないけど、でもね・・・」


「本当に本当の精霊だよ」

「私は今は人間の姿をしてるけど風のシルフって言って風を司るエレメンタル

「精霊」なの」


「ああ、それってファンタジーゲームの中に出てくるキャラだろ?」


「ゲームなんかじゃなくて精霊はいるところにはちゃんといるの」


「でね、私はサンタさんと同じ国に住んでいてサンタさんが忙しいクリスマス

の時期だけ、お手伝いしてて普段はとってもヒマなの、だからレンタル彼女代行

サービスで働くことにしたの」


「精霊ね・・・」


言ったって精霊なんてやっぱりファンタジーの中だけのキャラだろ?


僕は乃絵瑠ちゃんはそう言う妄想を描く痛い女の子かと思った。

男でも女でもフンタジーの世界に固執するあまり現実と非現実を混同しちゃって

る人・・・つまりメルヘンの中に生きる人ね。


まあいいや・・・精霊でも人間でも可愛けりゃ彼女として文句ないし。


「あの、信じてないでしょ?」


「信じてあげたいよ・・・でもさ君が精霊だって証拠がさ、あれば信じるよ」


「そ、分かった・・・すると乃絵瑠ちゃんの体がふっと細くなったと思ったら

服が脱げて彼女はその場で消えた」


「え?なに?今の・・・どうなった?乃絵瑠ちゃん?・・・乃絵瑠ちゃん」


するとすぐに僕のホホをひと吹きの風が撫でた。

風は僕の体を取り巻いてグルグル回りながら耳元で囁いた。


「信じる?ヨッシー?」


「分かった・・・分かったから・・・でも僕としては精霊の君じゃなく人間の

時の乃絵瑠ちゃんのほうがいいかも〜」

「だって風でいられたらなにもできないもん」


「なにもってなに?」


「いやそれじゃ触ることもできないでしょ?」

「もうアピールしてくれなくても充分わかったから・・・信じるから」


「じゃ〜あっち向いててくれる・・・服脱いじゃったから・・・その」


「あ、分かった、ごめん、向こう向いてる」

「あのさ・・・これまで何人の彼女になって来たの?」


「ヨッシーが最初の彼氏」


「え?俺がはじめて?」


「そうだよ・・・いけない?」


「いやいや、むしろ嬉しかったりして・・・車やバイクで言ったら新車じゃん」


「はい、おまたせ・・・じゃ今度はヨッシーのこと聞かせて」


「え〜と僕の歳は23歳・・・市内の某企業に勤める一介のサラリーマン」

「現在マンションで独り住い・・・彼女なし歴5年目突入」

「持病なし・・・いたって健康・・・エッチの経験多少あり」


「そんなとこ?・・・男なんてつまんないプロフィールだよ」

「で、酒に酔った勢いでレンタル彼女のサイトを覗いてたみたいだね」

「よっぽど、彼女が欲しかったんだろうね・・・」


「だからかな彼女と手をつないで砂浜を歩く夢をよく見るよ、あはは」


「そうなんだ・・・でもこうなって私、最初の彼氏がヨッシーでよかった

って思ってるよ」

「まあ・・・建前だけの付き合いだけど・・・そう言ってくれて僕も嬉しいよ」


「あのさ・・・このシステムって専属ってできないの?」


「専属?」


「そう・・・呼ばなくても毎日定期的に時間が来たら来てもらえるとかって」


「他のお客様がいなかったらいいと思うけど・・・でもそんなことしてたら

いつか破産するよ・・・」


「そうか・・・あくまで商売だもんな・・・めちゃ落ち込む」


「ヨッシー・・・私にいてほしいの?」


「だってさ、僕、乃絵瑠ちゃんのこと本気で好きになっちゃったんだもん」

「こんな形でも、せっかく巡り会えたのに・・・時間が来たら君は帰っちゃう」

「君が帰っちゃうとひとりでいた時より余計寂しくなるよ・・・」


「また来てあげるから・・・元気だして、ね」


そしてタイムリミットが来て乃絵瑠ちゃんは僕のスマホに自分の連絡先を残して

帰って行った。

まるで風のように・・・。


この日の出来事はまるで夢のような出来事・・・もう二度と乃絵瑠ちゃには

会えない気がした。


なんで酔っ払って彼女を呼んだりしたんだよ・・・もう気持ち戻せないじゃん。


とぅ〜び〜こんて乳。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る