第三章


 [第二会議室にて]


――では、議案審査会を始めたいと思います。

――会長は?

――いなくても大丈夫だろ、今回は。

――顎で使われているようで嫌ですね。

――それは…。

――ええ、訂正します。行き過ぎた発言でした。

――当の本人がいないと、どういう意図でアレを持ってきたのか分からんだろ。

――それは、議題に移ってからでお願いします、構いませんね。

――はいはい。

――じゃあ始めましょう。


 (中略)


――部室は調べたんですよね?

――ええ、置いてあったものは全て確認しました。

――じゃあお手上げだろ。

――せめてもう少し早く言ってくれていれば…、こんな時期まで残ってる訳ないのに。

――どうしますか。取り下げた方が良い気がします。教員の諮問会からも彼には推薦を内定しているから、と。

――会長も大丈夫なんですかね、こんな事して。

――大丈夫じゃないだろどう見ても。完全な自滅だ。

――ちょっと。

――はいはい。


 少しの沈黙。


――すみません、あの…。

――はい?

――どうして退学処分にしないんですか?

――『どうして』、というのは?

――だから、直接に彼を退学処分にすればいいのに、どうして一回演劇部の除名を経由するんでしょう?

――ええと。

――お前が説明しろよ。

――あのですね。ほとんどの在籍中の生徒は退学処分の対象になりますが、その免責規定があって、それは生徒会の役員、そしてすべての公認部活動・委員会の役職持ち。私たちと彼らはその対象にならないんです。

――そうなんですか。

――そうです。


 少しの沈黙。


――あの、あとですね…。

――まだあるんですか、書面で提出してもらえれば後ほど回答しましょう。

――いいえ、そう言えば忘れていました。私たち全体の目標設定、そして定例会に向けた指針についての全体の合意が取れていなかったと思います。流れを確認しておくのも大切でしょう。

――"身内には"甘い。

――何か言いました?

――何も言ってません。


 (中略)


――厳しいな。

――始める前からソレですか。

――始める前も何も、もう始まってるだろ。裁判と一緒で、法廷に持っていく前に調理しておかないと負けてるみたいなモンだ。

――ですがもし投票になったとして、過半数ですからそれほど分が悪い話では無いのでは?

――『分が悪くない』じゃ駄目だろ、生徒会持ち込みなのに。面子メンツにも関わる。

――それでは?


 少しの沈黙。


――『それでは?』って何だ?

――反論を行うなら、代案を示して頂きたいです。

――そうだな、こういうのはどうだろう。

――成程。

――表現を…。

――いいえ、その必要はありませんし、私たちにとってこれは決して悪い話ではありません。ですが何か筋書きがある訳では無いのでしょう?

――どう思う?

――ひとつ付け加えると、私の忍耐を試そうとするのは控えておいた方がいいでしょう。

――いやはや。それじゃあ、議長にはそのがあるってコトで構いませんね。

――どういう意味でしょう?

――例えば、彼は生徒会に敵意を抱く不満分子の一派であり、予算配分の件を通じてそれを明らかにした。彼は組織細胞を意識的・もしくは煽動的に結成し、その連中が首領であるところの演劇部部長に対する動議に対して実力的妨害に出た!

――上手いモノですね。

――いいえ、ここからですよ。連中はとうとう生徒会に対し行動に出たんです。それも定例会の直前に、審議会のメンバーを襲うコトでね。


 少しの沈黙。


――あの…。ぼくはその話を、決して諒解していないんですけど…。

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