第33話 玉座の間
険しいお話しが続いてすみません~~!<(_ _)>このお話で一旦落ち着きますので!><
~・~・~・~
皆、勢揃いね…………両開きの扉が開いて私が入ると、王族たちは一斉にこちらを向く。
それと同時に王妃殿下や側妃達、兄弟姉妹は皆、一様に私に憎しみの目を向けていた。一体どうして?ボルアネアに厄介払いしたのは自分たちなのに――
私は兵に腕を引かれて、レッドカーペットの中央まで連れて行かれた。
「ようやく戻ったか……ロザリアよ。元気そうだな」
「お父様もお元気そうで…………」
「はっ!お元気そう、ですって?我らがどんな生活を強いられているかも知らずにぬけぬけと…………そなたは随分ボルアネアで優雅な生活をしているようではないか」
突然口を開いたのは王妃殿下だった。私があちらでどんな生活をしていようと、皆には関係ないわ。私を自分たちの保身の為にボルアネアに差し出したのは皆なのに…………
「……私は与えられた生活の中で、慎ましく生活をしているだけです。この結婚は両国で決めたものではないのですか?」
「リンデンバーグはボルアネアに敗れ、要求を飲まないわけにはいかなかったのだ。好きで差し出したのではない……」
「あちらから連れて来たボルアネアの王女の子供である私は、政治の道具として使い勝手が良いんですものね」
「無礼な…………口を慎め!」
王妃殿下は激昂し、私を怒鳴りつける。でももう幼い子供ではないから、萎縮したりはしないわ。私は私を大事に想ってくれる人達がいる、その事が何よりも私に勇気を与えてくれていた。
「……お母様は最後まで、ボルアネアに帰りたいと日記に書いていました。そうさせまいとしていたのは、お父様ではないですか……私が政治の道具として必要になったから、今度もまたボルアネアから連れて来たというわけですね?私を条件にまたボルアネアを脅す気ですか?政治の主導権をとりもどそうと……?」
「…………………………」
「そんな事で国が再建出来る状態ではない事が、お分かりになりませんか?」
また戦になったら、兵達も犠牲になってしまう。この城にいるのは国に忠誠を誓っているわけではない、ただの雇われ兵だろうから……この人達にとってはどうでもいい事でしょうけど。
「…………自身の欲望の為にお母様を攫ってずっと幽閉し、故郷に帰る事も叶わず朽ちていったお母様の無念を考えると……私がこの国を救おうだなんて思うわけがありません。ここにいる皆さま方で何とかするべきですわ……」
「随分な口をきくようになったわね、私たちの顔を見てはただ怯えていただけの小娘が」
側妃の一人が昔を思い出しながら口を出す。私を盾にお母様を傷つけた――――
「……お前の母親もバカな女よ。お前の事など考えなければ母国に帰る事が出来たというのに……ふふっ…………お前を母親から引き離すために連れていった時のあの女の顔は傑作だった」
王妃殿下の顔は愉悦に歪んでいた。私をお母様から引き離す為に?そんな事があったなんて日記には…………まさかあの破られた日記の跡は………………
「お前は覚えてはいまい。まだ2歳だったからな……生意気だったから調教してやろうとしただけなのに我らを悪者扱いしてくる。お前を抱きしめ、泣きながら懇願してきた……お前に手を出すなと――――そこまで言われれば仕方ない、私も鬼ではないからな。代わりに母親の方を調教してやったのよ……お前が関わるとロザリアは碌な事にならない、お前の存在がロザリアを不幸にしている、お前の娘で可哀想だと散々教えてやった。そのうちお前と関わらなくなっただろう?母親の深い愛だ、誇りに思うがよい。ふふっ」
「そのうち、お前も母親も我らの顔を見ても反応しなくなっていったから、全くつまらなくなったな……ふふふっ」
王妃殿下と側妃の話に皆がクスクス笑い、その声が玉座の間に響き渡る――――
「なんて下劣な…………」
お母様を笑わないで――――
「……その辺にしておけ。もういない者の話をしても意味はない」
お父様が皆を鎮めるように言葉をかけた。意味はない?お父様にとってはそれだけの存在だとしても私にとっては…………悔しさで握りしめていた手から血が滲んでいた。
「陛下!陛下は甘いですわ。ロザリアが役に立たないから我らはこんな目に遭っているというのに」
王妃の金切り声が玉座の間に響き渡る。そして第1王子が根も葉もない事実を突きつけてきた。
「衛兵!この女を地下牢にでも入れておけ。ボルアネアには通達しておいたから、じきに向こうから交渉の為の連絡が来るだろう。あちらにはお前が我が国に戻って来たいと言うから手を貸したと言ってある」
「な、にを…………」
私が自らここに来たと?
ううん、そんな事を誰も信じるわけないわ。それにレナルドがどこかに潜んでいるはずよ。きっと私の事をテオ様や陛下に知らせてくれているはず…………絶対に信じて待つのよ。
私はどうしてお母様が私の事を空気のように扱っていたのか、その理由が聞きたかったのだ。それも先ほど王妃殿下がご丁寧に教えてくれた……――――私がいるから生きられると書いていたお母様、いつも遠くを見ていたお母様。
私は悔しくて、悔しくて、お母様の魂と一緒にボルアネアに帰るまで、こんなところで朽ちるわけにはいかないと心に誓った。
かつての私は生きる事に全く執着していなかったのに……いつ死んでも良かった。でも今はこんなにも死にたくないと思っている。それもこれも全てテオ様やベルンシュタットの皆のおかげだわ。
絶対にあのお方に会わずに朽ちたくない。お母様、私に力を――
「さあ、行くぞ」
両手を拘束されたまま兵に腕を引っ張られる。玉座の間から出て、壁伝いに歩いて行くと、地下牢への入口が見えた。
古い片開きの扉を開けると、地下に行く階段が続いている……薄暗くて狭い階段には何人かの兵が配置されていて、地下に着くと、そのまま地下牢の一室に入れられてしまったのだった。
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