第5話 私の伴侶に

「其方の名前を教えてくれぬか?」


「は、はい。礼央と言います」


「レオ……いい名だ。可愛らしいな」


「そんな……」


「ふふっ。その恥じらう顔も実に可愛らしい。私の名はヴィクトル。レオにはヴィックと呼んでほしい」


「ヴィック……」


レオの可愛らしい口から名を呼ばれる。

ああ、なんて幸せなのだろうな。


「レオ……ずっとそばにいてくれ。そして、私の伴侶となってこの国を支えてくれないか?」


「えっ? この国を、支えるって……もしかして、ヴィックは……あの、国王さま、だったり……?」


「ああ、そうだ。私はアールベルデ王国の国王だ。レオには王妃となって、ずっと私のそばにいてほしい」


「で、でも……僕は、男ですよ? 王妃なんて……」


「?? レオが男だからなんなのだ? それが王妃になれない理由でも?」


「いや、だって……子どもが……」


レオとの会話が噛み合わず、もしかして……と思い尋ねてみた。


「もしかして、レオのいたところでは男は子を産めぬのか?」


「えっ? あ、はい。もちろんです。子どもは女性が産むもので……」


なるほど。

それならばレオが慌てるのもわかる。


だが……


「レオ……子どものこと以外は気にならぬのか?」


「えっ?」


「レオのいた場所で子は女が産むものだとされているならば、婚姻相手も異性なのではないのか? だが、レオは私との婚姻は嫌がっているようには見えなかったが……」


そう尋ねると、レオは一気に顔を赤らめて


「僕……ずっと夢で多分ヴィックだと思う人に抱きしめられてました。夢の中の人の優しい匂いと温もりに癒されていて、それで……好きになっていた、と思います。だから、夢の中で神さまに初めてキス……口づけした相手が運命の相手だって教えてもらって、すぐに夢の中の人のことが頭に浮かびました。あの癒しを与えてくれる人だったらいいなって……。だから目を開けてあの匂いのする人に抱きしめられてて、もしかしたらこの人かも……ってドキドキしてたんです。でも、ヴィックが国王さまだって知ったら、跡継ぎが気になってしまって……」


と一生懸命説明してくれた。


その必死な様子にレオへの愛おしさがますます募る。


ああ、なんてこの子は可愛いんだろう。


そうか、レオは私と過ごしたあの夜のことを夢だと思っているのか。

あんなにも愛しく慈しみながら抱きしめていたというのに……。


「レオ……あれは夢ではないよ」


「えっ? 夢、じゃない?」


「ああ。レオはいつもここにいた。私の寝室で私が抱きしめると嬉しそうに擦り寄ってきて……そして、目が覚めるとあちらに帰って行っていた」


「そんな……」


「ずっとずっとレオが目を開けてくれるのを待っていたのだ。私はレオがずっと夢だと思っていた頃から、レオのことだけを思い続けていたのだよ。子どものことは気にしないでいい。そう言ったら私と添い遂げてくれるか?」


「跡継ぎは大丈夫なのですか?」


「ふふっ。問題ない。私たちが愛し合えば、自然に子はできる」


「えっ? それって……」


「子は神からの授かりものだ。本当に愛し合う二人の元に神が与えて下さるのだ」


「――っ!!」


私の言葉にレオは大層驚いていた。

が、すぐに私にぎゅっと抱きついてきて、


「それなら、僕を……ヴィックの伴侶に、してください……」


と言ってくれた。


「ああ、レオ……! 私は一生其方を離さないぞ」


「はい。ずっと愛してください」


レオの可愛らしい言葉にもう我慢できなくなり、私は引きちぎるようにレオの服を脱がせた。



心のままに愛し合い、気づけばレオは私の腕の中で意識を失っていた。


「フレディ、寝室を整えておけ!」


執事にそう指示をして、私はレオを連れ風呂場に向かった。



風呂場でお互いの身体を清めて寝室へ戻るとベッドはすっかり綺麗な状態に戻っていた。


レオをベッドに寝かせてふと見ると、ベッド脇のテーブルには水とメモが置いてあった。



<ヴィクトルさま。運命のお相手がこちらに来られて興奮されるお気持ちは十分理解いたしますが、お相手さまは魂が極限までお疲れになった状態でこちらにお越しでございます。そろそろゆっくりと休ませて差し上げてくださいませ。お相手さまがお目覚めになりましたら、すぐにお食事をご用意いたしますので、お声かけくださいませ。フレディ>



フレディ……。

ああ、やっぱりあいつは良い執事だ。

私を良い方向へ導いてくれる。


レオ……疲れ切った身体に私の欲を激しく浴びせてしまったな。

申し訳ない。

明日は公務も休みだ。

ゆっくりと二人で休むとしよう。


私はテーブルに置かれた水を口に含み、抱き起こしたレオに飲ませた。

よほど喉が渇いていたのだろう。


三度ほど飲ませてやるとようやく落ち着いた。


これからは私がレオを幸せにしよう。

レオは私のそばで笑っていてくれたらいい。


私はレオの隣に身体を滑らせ、レオをギュッと強く抱きしめた。

今までとは違うこれからのレオとの楽しい日々を想像して私も幸せの眠りについた。

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イケメン国王の初恋 〜運命の相手は異世界人 波木真帆 @namikimaho

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