【17】姫も歩けばなんかのアジトに侵入する。


「こっちだぉ~!」


 噴水広場まで高速でかっ飛んできたサメっちが、匂いがする道へ高速で曲がる。


「うあああああ!!」

「なんだああ!?」

「魔物よおおおお!!」


 噴水広場が騒然とした気がするけど、一瞬だったし、みんな気のせいって思うだろう。そうだろう(ゴリ押し)。


「ちょっと、姉さん、オレをどうするの! どうなるの、オレ!?」

「キミはリリィちゃんを助けるヒーローになりにいくのよ(適当)」

「いや、オレは別にヒーローとか憧れてないんだけど……まあ。リリィが助けられるなら」


 そう言うと、覚悟が決まったのか、良い顔になった。

 なかなか、イケメンじゃないの、ロニー。


 それにしても、この道は……たしか民家とかあまりなくて……教会があるほうじゃなかったっけ?


「匂いが強くなったよ~。もう近い。ああ……あれだ、あの正面の建物だ」


 サメっちが言った。

 それはやはり、この街の教会だ。


「え! 教会!?」


 ロニーが叫んだ。


「よし、人生は勢いが必要な時もある、このまま突っ込もう、行くぜ! キッ……サメっち」

「オーケー、マイケル」

「マイケルだれ!? 姉さん、マイケルって名前なの!?」


「マイケル違う」


「ほんとに誰だよ!?」


 付き合いが良いな、少年。気にしないでくれ。

 


 バーン、と教会の重そうな扉に突っ込んで真っ直ぐ進むと、そこは聖堂。


「……まあ、聖堂には、まずいないわよね」


 私とロニーはサメっちから降りた。


「くんかくんか。こっちだねぇ~。ついてきて~」


 サメっちが聖堂の中の扉の一つをヒレで指した。


 サメっちについて行くと、ひとけは無いものの、薄暗い廊下が続いている。

 生活スペースに続いているのかな? と思ったけど、しばらくしてサメっちが指し示した扉を開けると、地下階段が現れた。


「うわ、胡散うさん臭い階段」


 ロニーが言った。同感よ。


「行きましょう」


 二人と一匹で階段を降りる。

 しばらく歩くと、重たい両扉があった。


「ん、鍵かかってるのかな。びくともしない」


「僕、開けようか~?」

「あ、そうだね。サメっち、お願い」


「むん」


 サメっちが両手両足を出した。

 旦那様いはく、成人男性の生足と腕。


「うあああああああ!」


 ロニーがSAN値直さんちちょくそう葬(謎)になりそうな顔をした。

 生足魅惑のサメに対してちょっと失礼よね、可愛いのに。


「静かにしなさいよね……」

「この見た目に対して悲鳴あげるなとか、人の心がないよ!?」


 こんな子供までサメっちを可愛いと思えないなんて、人類は心の余裕を失っているんじゃないだろうか。


 サメっちが、バキッ! メリメリメリ……! と扉を無理矢理取り外した。


「扉を力技で取った!? 開けるって言ってなかった!?」

「どっちでも同じことじゃない?」

「違うよ!?」


 細けぇことはいいんだよ……!


「ほら、それはともかく――」


 中は結構広い部屋だった。

 牢屋が見える。――その中に手足を縛られた子どもたちが数人いた。

 他にも珍しい動物がいたり、宝石箱、絵画……。


 ……これは、さては。

 奴隷オークションやら盗品オークションやら、やってるな!! ここの神父!!!


「……あ!!」

「ロニー兄ちゃん!!」


 子供たちがロニーに近寄る。


「リリィちゃん以外にもたくさん捕まってるわね」


「……って、いあああああああああ!!!」


 子どもたちが私(仮面)とサメっちを見てSAN値直葬な悲鳴を上げた。


「あ、こら、お前らうるさいぞ。しーっ!! 大丈夫だ、この人は変な人だけど味方だ!」


「変な人!? 普通のお姉さんだよ!」

 心外な!


「(スルー)……リリィがいない! みんな、リリィは?」

 

 とうとうスルーされた!

 ……ってそうだ、探しに来た発端ほったんとなったリリィちゃんが見当たらない。


「あ、リリィなら、さっき神父様に連れて行かれた!」


「前から希望してる買い手がいたからすぐ引き渡しするって……ちょっと小汚いから……ってお風呂いれるって連れてった!」


「なんだって!」


 ロニーが激怒して叫んだ。


 ――その時。


「なんだ! うるせぇぞ ガキども!!」


 武装した数人の男たちが、部屋に入ってきた!



 ……まあ、これだけ騒げば見つかるわよね!

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