衝撃のメール
凛音が家に帰っていない。
この事実を知った俺は不安しかなかった。
もしかしたら、誘拐されたかも。
凛音は女子高生の時から街でナンパされているし、今でもそれは続いているだろう。もし、断って強引に裏路地に引き連れられたら、抵抗する術などないだろう。
そしてレンタル彼女という仕事上、多くの男性と関わる機会も多い。
女性の場合だと自分が貢いでいるホストが別の女性と歩いている様子を見て、刃物で刺すという事件も多発している。
独占欲が強い男性はあまり多いイメージはないが、それでも凛音が別の男と手を繋いでいる様子を見て、いい思いをする人はいないだろう。実際、映画館で凛音がレンタル彼女として働いている様子を見て、後から嫉妬のような感情が湧いてきた。
だからこそ、凛音が誘拐されてしまったかもしれないと不安になったのだ。
俺はどうしようか考えた。
きっと凛音の父親に連絡しても連絡がつくまでに数時間はかかるだろう。凛音の父が働いているドバイは時差で今頃昼間だ。仕事で忙しいためすぐに凛音と連絡を取ってもらうことはできないだろう。
そして俺は警察も視野に入れていた。ただ、友達の家に遊びに行っているだけかもしれないし、凛音がどこへ行ったのかなんて俺に把握する術などない。
どうしよう...。
俺は途方に暮れていた。そんなもどかしい気持ちを抱きつつ、何も行動しない自分にも腹がたったため、少しだけだが行動しようと思っていた。
自分にできる行動は、凛音と関係のあるような人に連絡を送ってみることくらいだ。自分のできることなど限られている。ただ、少しだけでも力にならないといけない。万が一の為に。
そう心に決めた俺は、色んな人に連絡を送ってみた。
手始めに咲希に
《凛音と数日間連絡がつかないんだ》と送ると、すぐに既読がつく。俺の言い訳を聞いてほしいというメッセージは無視していたのに、ちゃんとメールを確認していたのか。
まあ今はそれどころじゃない。咲希に連絡がつかなくなったことを言うと、
《とにかく落ち着いて。私からも色んな人に連絡をしてみるから。もし警察に連絡するって涼が決めたら連絡頂戴ね》と返ってきた。確かに咲希の言う通りだ。少し落ち着いてみよう。
そう頭では考えているものの、俺は居ても立っても居られなかったのだ。
凛音と同じ大学であるだけで、《この人を知っていますか?》と画像を送ったりしていた。小瀬川 凛音の名前は出さないようにしていた。もしかしたら、「小瀬川」と検索され、レンタル彼女のホームページと照らし合わせられたら、俺も言い訳が出来ない。ただ、写真だけ送っても、全員から返ってくる答えは《知らない》
咲希も同じように多くの人に連絡をしてくれた。しかし、誰からも知っているというメッセージは送られてこなかったと言う。
夜の20時。そろそろ警察への連絡をすることを決め、咲希に《今から警察に連絡する》とメッセージを送ろうとした瞬間、
ピロン♪
俺のスマホが軽快に鳴り響いた。
メールを送るのを一旦踏みとどまり、俺は着信したメールを確認する。
確認すると、俺に一件のメールが届いていた。
送信先は、蒲生 健だった。
前、初めて凛音がレンタル彼女をしているのを目撃した映画館に一緒に行った友達だ。健は凛音とは関わりはないだろう。そう、思っていた。
そして健から着た、一件のメールを開くと、
「小瀬川には関わらないでくれ」
とだけ書かれていた。
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