健の正体
《小瀬川には関わらないでくれ》
このメッセージを理解するのに長い時間を要した。
全く関係のないはずの蒲生 健から、小瀬川に関してメッセージが送られてくるとは想像もしていなかった。
そもそも、凛音と健は面識がないと思う。
そして「小瀬川には関わらないでくれ」というメッセージの意味が全く理解できない。なぜ小瀬川の名前と、今の事態を知っているのか。そして、関わってほしくないのか。
その理由の検討すらつかなかった。
以前、凛音に健という友達が出来たことを言うと、
「へぇ。いい友達が出来たんだね」と興味がなさそうに言っていた。だから凛音と直接的な関係はないはずだ。
それじゃあ尚更...。
原因が全くわからない俺は、警察への連絡を一旦やめ、健に色々と聞いてみることにした。
《どうして小瀬川の名前を知っているの?》
《一体、健はどういう関係なんだ?》
《なんで俺が関わったらいけないの?》
心に浮かんだ疑問をそのまま文にして健にぶつけるが、既読がついても《小瀬川には関わらないでくれ》と送られてくるだけ。
《なぜ関わっちゃ駄目なんだ?》とメールを送っても、少し返事を躊躇っているのか、返信が遅かったが《小瀬川には関わらないでくれ》と突き通してくる。
流石に俺は、健が冗談交じりにやっているだけではないと考え、健の家に向かうことを決めた。
夜21時。
住宅街の道路を歩く俺を、少し錆びた電灯が薄暗く照らす。
以前、健に年賀状を送るために住所を聞いた。その年賀状の住所をスマホにメモしていたので、凛音の家から急いで健の家に向かった。
なんとなく、そこに答えがある気がしたからだ。
住所を見てみると、大きな通りに面している一軒家だと思う。この通りは俺もよく通るが、一軒家があった覚えはない。確かオフィス街だったような気がする。
そして、大きい通りに面した家だと、車の音などの騒音に悩まされるという話をよく聞くが健からはそんな話は聞いたことがない。
この前は「近所が静かで睡眠の質がめっちゃいい!」と喜んでいたので、少し不自然だ。
ただそんなことを考えている暇はない。今はとにかく小瀬川 凛音の安全が第一だ。そう思い、足を早める。
電車に乗り、健の住所の地に向かう。
ただ、目的地に近づくに連れ、俺も異変を見逃す事はできなかった。
「ここって完全にオフィス街だよな...?」
スマホのマップが示していた場所はオフィス街だったのだ。
居酒屋の赤提灯が綺麗に光り輝いているが、ビルの方は人気がない。
凛音について健がなにか知っていることは、ほぼ確実なのでそこに向かうしかないのだ。その一心で目的地に向かった。
「ここであってるのか・・・?」
辿り着いた場所は5階建てのオフィスと見られる場所。高層ビルに挟まれた小さなビルだが、見た目は新しそうで、見上げてみると、3階あたりがガラス張りになっている。
会社の前には車が1台停まっているが、明かりが灯っている様子はない。
手元のマップも目的地に到着したと書かれている。
健の家がこんなにもオフィスのような場所だとは到底思えない。
ただ年賀状を出した先がここであるため、会社の目の前まで近づいてみる。表札を確認してみると、
「【Re:彼女】って・・・俺が利用したレンタル彼女サービスの会社じゃん」
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