修羅場2
「え、涼の彼女って凛音?」
そう呟いた瞬間、
「こちら、ふんわりワッフルとアイスコーヒー、カフェラテ2つでございます」
まるでタイミングを見計らっていたかのように、注文していた料理が届く。
咲希は何も言わずに、俺と凛音の向かい側の席に座る。
店員さんが運んできてくれたワッフルに目を輝かせている凛音を見ると、俺も嬉しい気持ちになる。
「ありがとうございます!」
凛音が無邪気な笑顔で店員さんに挨拶している様子もまた、魅力的だ。
ただ、うつつを抜かしている場合ではない。前を見ると「信じられない」と言わんばかりの顔で咲希は俺のことを見てくる。
咲希はきっと、なぜ俺が凛音と付き合っているのかという疑問を抱いているのだろう。凛音と俺を交互に見て「えぇっ...」と嘆いている。
そんな気まずい空気感を断ち切るようにして凛音は、「冷めないうちに食べましょ」と言ったため、
「「「いただきます」」」
ナイフとフォークを我ながら巧みに操り、手前に置いてあるシロップにつけ、口に運ぶ。
「サクサクふわふわで美味しい〜!」
凛音がハイテンションで俺に話しかけてくるので、俺もそれに合わせる。
「そうだな!シロップとも合っていて、いくらでも食べれるな!」
口いっぱいに広がる風味豊かなバターの味わいとハチミツの優しい甘み。シンプルなプレーンだからこそそれぞれの素材の味が際立ち、シロップをつけることで、更に美味しさが増してく。
「涼、こっちむいて〜!」
と言われ、凛音の方を向くと、
「口開けて!あ〜ん!」
と告げると、バター香るワッフルを口いっぱいに詰め込んできた。
突然のスキンシップに驚いたが、不敵な笑みを浮かべている凛音にちょっとだけ恐怖を覚えた。
その瞬間、
「嘘、でしょ・・・?」
と咲希が手に握っていたフォークが無惨にも床に滑り落ちた。
きっと咲希は本物の彼女がいるとは思ってもいなかっただろう。今まで彼女がいるような素振りを一切見せず、凛音の話など咲希には半年くらいしていなかった。
それなのに彼女として凛音が紹介されたら、どう思うだろうか。
相当驚くだろう。
案の定、咲希は驚きを隠せない様子で、未だに戸惑っている。
「まあ、咲希。私達が付き合うことになったのも、色んな理由が複雑に絡み合っているの」
凛音がそう咲希に言葉をかけるが、理由が複雑に絡み合っているというのは、レンタル彼女のことを指しているのだろう。
レンタル彼女を借りているから、私達は付き合っているのだが、何も知らない人がこんな風に言われたら、本当のカップルだと信じ込んでしまう。
今まで何度もレンタル彼女として様々なデートに呼ばれたであろう、凛音だからこそできる業なのかもしれない。
なぜ凛音がレンタル彼女をやっているのか全くわからない。真相は闇の中だ。
咲希は注文したワッフルをすぐに食べ終わると、
「ここでは聞けないこと、別の場所で色々聞かせて」
と言い、場所を変えることを提案した。
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