レンタル彼女とキスをする

「ここでは聞けないこと、別の場所で色々聞かせて」



俺はどこまで迫られるのか恐怖を感じていたが、意外にも提案された場所は


「カラオケ、行こ。人の目も気にならないし」

「懐かしいね」

そう、咲希が提案してきたのはカラオケだった。


俺たち3人が高校生の頃はよく3人でカラオケを利用したものだ。


「そういえば、昔、涼も動画投稿してたよね」

凛音にそう言われ、俺は思い出す。



ああ、そういえば投稿してたな。

俺がカラオケで歌っていると、その歌声を録音され、そのまま動画投稿されたという事件があった。勿論、咲希と凛音のいたずらだったため、あまり綺麗に録音できていなかったものの、動画投稿からわずか1週間で100万再生を達成してしまい、恐怖でアカウントを消したのだ。


俺の歌が下手すぎて恥晒しになったのかと、怖く感じアカウントを消したのだが、今では良い思い出だった。

100万再生もされたのなら、記念に動画を残しておくべきだったなと思っていた。



「3人で2時間お願いします」

店員さんに頼み、部屋に入り、俺は奥の席に座る。

すると、凛音もついてくるように、俺の隣に座ってくる。

その様子を見た咲希は、


「凛音、本当に涼の彼女なの?頼まれて彼女の振りをしてるだけじゃないの?」

と核心をつく質問をされた。

俺はやばいと思ったが、凛音は動揺することなく、


「私は、本気で涼のことが好き」

と端的に俺への好意を咲希に伝えた。こんなにも奇麗な幼馴染に「好き」と近くで言われ、俺の鼓動はどんどんと早まっていく。


しかし、咲希はそれに追い打ちをかけた。



「じゃあ、凛音。涼にキスしてみてよ」



「おい、流石にそれは」と言いかけた時に、俺は声を飲み込んだ。


凛音は「んっ」と声を漏らすと、息をすることすら許さないように俺の唇を覆った。


至近距離で見るとやはり彼女はとても可愛らしくそして凛と美しい。くっきりとした二重の瞳の長い睫毛は少し伏し目がちで、整った顔立ちは魅力的で惹きつけられ見ていて飽きそうにない。


何かを確かめるように交わされた口づけは、舌先を絡め合い、触れ合ったまま離れられなくなる。いや、離れたくない。

唾液が混じり合う、熱を分け合い、吐息まで飲み込むようなキスを、俺は長い間堪能していた。幼馴染とするファーストキスを形だけにしたくないと思い、逃げる舌先を追いかけるように粘膜をたどる。




長い口づけを交わしたあと、凛音の口唇から漏れた「ずっと前から好きだったよ、涼」という言葉は誰にも届くことなく、消えていった。

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