わたしメリーさん、現世で死に神と出会うの

わたしの名前はメリー。持ち主の人に捨てられた人形…だった。

今の私は人間と似た容姿ををしている。しかし、人間には私の姿は見えない。いわゆる霊と言われる奴だ。


そして私は今日も人に電話をかける、理由は分からない。だけどそれが私のすべきことなのはしっかりと理解している。いつも繰り返される日常。


いつものように電話をかけ最終的に背後から殺す、これが私の日常だ。

しかし、今日は少し違う予感がした。

なにかが起こる、何が起こるかは分からないがそんなことを思った。




「わたし…メリーさん…。今あなたの後ろにいるの…」


私は持っているナイフで男の首を刎ねた。

そのまま倒れる男を見つめて思った、人間というのは儚いものなんだなと。

今までも何十、何百もの人間を殺してきたが誰一人として私に対抗できたものは居なかった。


それほど私が強いのか…それとも人間が脆いのか、私にはわからなかった。


「今日は何かが起こる予感がしたけど気のせいだったのかな」


私はそう思いながら帰路につく。

そうして交通量の多い交差点に着く、私が暮らしている場所はこの先だ。


車が激しく行きかう中私は車道に出た。いつもの同じ行動、だが私が感じた予感は嫌な形で的中する。

車道を歩いていると一台のトラックが目に入った。なぜかそのトラックが気になり私は立ち止まってしまった。


そして私は感じた。避けなければと。

いつもならそんなことを思わないが今は反射的にそう思った。だがそう思った時にはもうすでに遅かった。


トラックの運転手と目が合う、いつもならあり得ないことだった。だが、運転手ははっきりと私の目を見ていた。


瞬間、体に衝撃が走る。

全身が砕けるかのような感覚、痛い…苦しい…寒い…熱い…。今まで感じたことのない感覚が一斉に襲ってくる。


私は薄れゆく意識の中で思った、これが大量に人を殺した者の末路なのかと…。

神は思っていたほど優しくはないようだ。



そして私は、意識を失った…。








~~~~~~~~~~~~~~~


目が覚めたら見知らぬ空間にいた。

見渡す限り白。まるで白でできた箱の中にいるみたいだ。


「ここは…」


「ここは私が用意した空間よ」


「…!?」


何もない空間から突如として女の声が聞こえた。

頭に直接話しかけてきているのかと疑うくらいにはっきりと声が聞こえる。


メリーさんは聞こえてきた声に対して探るように聞いた。


「あなたはだれなの。姿を見せて」


そう言った数秒後、突如として空間に亀裂が入った。パリン…とガラスが割れるかのような音が鳴り響いた。ひび割れた空間を見てみるとその先には漆黒が広がっていた。ここから出てくるのは神ではなく悪魔かと思うほどに漆黒が広がっていた。


「悪魔なんて失礼ね。私は立派な神よ」


割れた空間から女性が出てきた。長い黒髪で必要最低限の布面積を持った服?を纏っていた。


「一応あなたに配慮したつもりだったのだけれど…。これは間違いだったかしら」


細い目をつむりながら首をこてんと傾げた。

なんだこの自称神様は…。思考は読んでくるし、常識がないし…、色々と意味が分からない。


「まあ、細かいことはいいじゃない」


「全くよくないわよ…、まあいいわ。今は知りたいことがあるからね」


私が今知りたいのはなぜあの時私が交通事故に合ったのかだ。通常ならあり得ない現象だ、だが神が私を殺したのだというなら納得する。現時点で私の目の前には神と名乗る女がいるからだ。

いつもの私なら神など信じないが、ありえないことが私の身に起きたのだ。信じない方が難しい。


「あなたの考えてることは分かりますよ。どうして霊であるあなたが交通事故に合ったかでしょう?」


「まったくもってその通りよ」


「あなたも分かっているとは思うけれどあなたを殺したのは私よ。霊であるあなたの体を一瞬だけ具現化したわ。これで納得いったかしら」


なるほど…。いつもなら霊の状態である私の体をトラックと接触する前に人間の体にすることによって私を殺したのか。やることが実に神らしい。

だがまだ謎に残ることがある。それは…。


「それはどうして私が殺されなくちゃならなかったのか、でしょう?」


考えたことを言い当てられたのは癪に障るがその通りだ。私が大量殺人霊だからか?いやそれはない。私よりも前にいた都市伝説の霊たちは私よりも人を殺しているからだ。だとしたら一体なぜ…。


「なんであなたが殺されたか…。それはね、あなたがあの世界にとって危険な存在だからよ」


「私が…危険な存在?」


確かに私はたくさんの人を殺している。だが、これだけでは殺される理由にはならない。

なにか、私が気づいてないだけでやってはいけないいことをしていたのだろうか。


「いいえ、あなたはただ人を殺していただけよ。けれど、人を殺すたびにあなたは成長した。その成長速度が危険と判断したのよ」


成長速度が速い?意味が分かるが成長なんてしていない。早く走れたり、頭の回転が速くなったりと私が自覚できるような成長はしていない。なにか私に直接関係ないところが成長しているのだろうか。


「私が言った成長とはあなたが人間に昇華する速度のことよ」

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