第26話 俺様NEW戦闘機アルファーエックスエックスNo.1


 飛翔した俺様NEW戦闘機アルファーエックスエックスNo.1ではあるが早くも紅の制御下を外れニトロの名にふさわしい推進力を手に入れた戦闘機は大空を自由奔放に飛んでいる。コックピットの設計が甘かったのか既にガタガタと揺れていていつ外れても可笑しくない状況ではあるが男は歌う。


「――常識・問答無用・俺様最強ぉ!!!」


 ガタッ。

 エリカにしては珍しく設計にミスがあったらしくコックピットが外れて紅だけが音速の世界に飛ばされる。


 ――。


 ――――ウォォォ!!!


 が、神災竜となった紅が俺様NEW戦闘機アルファーエックスエックスNo.1を掴み戦闘機に散歩される飼い主状態で引っ張られ始める。


「いぎゃあああああああああ」


 さっきまでの威勢は消え、情けない声が響きあっけにとられる会場地上

 もうなにがしたいのかわけがわからないよ、と皆が思い始めた時だった。

 神災竜の視界にあるものが写った。

 0.1秒でそれが役に立つと判断した覚醒済みの脳は身体に指令をだすのであった。


「――コレだぁ! 本命変更で言うこと聞きやがれぇ!!!」


 多くのプレイヤーの度肝を抜くのに時間はかからなかった。

 昨日から朱音たちが拠点とするアルテミス山脈に俺様NEW戦闘機アルファーエックスエックスNo.1が突撃し洞窟の中で暴れていく。一緒に吸い込まれるように犬と一緒に中に消えていった神災竜に


「アイツ何がしたかったんだ?」


「さぁ?」


「朱音さんあの子消えましたよ?」


「そうね。なにするつもりかしら?」


 と、一般プレイヤーもプロプレイヤーも首を傾ける。

 気になるのかそこから目を離す者はいない。

 時間にして5秒程度だろうか。


 ありえないことが起きた。

 本イベント最強プレイヤーの朱音が加えていたタバコを落とし、エリカがあっ……やばっ……と声を漏らし、うそでしょ……とアリスとアイリスが頬を痙攣させ、一万ポイント以上を秒で稼ぎやがったと手元のランキング表を見たプレイヤーが唖然とし、最早バグ要素でしかない男の活躍においおいイベント崩壊が本格的に始まりだしたぞ……どうするんだよ……これ……と危機感を覚え始めた者もいた。


「俺が用意した朱音と小百合の二重防衛戦完全スルーだとぉ……!?」


 ある部屋からはそんな声も漏れた。


「アルテミス山脈が蒸発……ですって……」


 一億を超える耐久値を誇るアルテミス山脈。

 故にニトロ系のアイテムを使って炭鉱作業しても崩壊する恐れはないはずのフィールドオブジェクトの一つだった。なによりプレイヤーへの安全が確保された山脈でもあったのだが……。


「どういうこと!? ……ってまさかマヤ!? 私たちに内緒で紅にスキルとか渡したりしてないわよね!?」


「私ぃスキル奪ったお詫びにコレ欲しいって言われたから超圧縮以外あげてないよぉ?」


「あげたスキルの効果はなに?」


「里美様の想像通り。プレイヤーが受けたダメージをMPで受け止めてその分のダメージを圧縮した弾を作って砲弾とするスキルだよぉ~」


「ってことはつまりアルティメットニトロを馬鹿みたいに積んだ戦闘機の自爆によるダメージを超圧縮で受け止め暴発させた。だけどダンジョンのようなところでは爆風すら逃げる範囲が限られていることから超圧縮を連発して使えばその力は何倍にも膨れ上がる……つまりアルテミス山脈の蒸発を可能にしたわけ……?」


 エリカの解説は九割正解だった。

 そして「アハハハハハっ!!! 最高に気持ちぃぃぃ~ZE☆彡!!!」と力の差を見せつけた化物が笑うアルテミス山脈を指さす里美。


「でしょうね……だってほら……」


 真っ赤な大地として焦土化したアルテミス山脈跡地の中央値に赤い眼を光らせ高らかに笑う化物。瞬間火力を持ってして鉱山に出現したモンスターを一掃するだけでなく鉱山ごと蒸発させた神災竜の紅。


 だけどこの程度の事象はまだまだ序章に過ぎないとわかるのは後のこと。


 アルテミス山脈の近くにいたプレイヤーは全員吹き飛ばされ、モンスターは衝撃波と一緒にやってきた真っ赤な炎に燃やされ瞬殺されたと提示板に報告が入る。同時に最警戒人物リストに紅の名が刻まれた。


 1 名前:???


 やっぱり……今回はフルスロットルだなw


 2 名前:???


 なんだよ常識的には物理的破壊不能オブジェクト蒸発ってwww


 ……。


 ――五分後。


 957 名前:???


 伝令。

 各プレイヤーはPVEだから安全と言う認識を捨てろ。


 神災が完全復活した。

 今回はエリカだけじゃない。神災竜を護る里美と先日加入したマヤもいる。

 マヤの情報はまだ少ないがアイツも共犯。油断するな!


 958 名前:レジスタンス神災教信者


 各プレイヤーに通達。

 『終焉の神災者』に対抗するため大連合軍を結成したいと思う。

 参加表明は俺まで宜しく。

 これは『終焉の神災者』VS『最強プレイヤー級』VS『一般プレイヤー』の戦争イベントである!



 と徒党を組み、再びラスボスとして紅の首を狙う者も現れ始める。

 なによりイベントの主旨が変わり始めた瞬間でもあった。



 984 名前:朱音


 徒党は勝手にしてもいいけどアンタたち私の邪魔したら許さないから 

 最高に愛しているわダーリン♡

 首洗って待っててね~


 985 名前:???


 なんちゃいつもほど余裕ないんだなw

 まぁ秒で一万ポイント差はプレイヤーkill奪取を考えてもキツイわなw

(アイツは逃げ足だけはマジで凄い奴だしw)


 やっぱり神災は見てて飽きない(笑)


 …………提示板は1000を超えたため新しいスレッドを立ててください。

 この文章が出るまでに10分かかる事はなかった。


 紅のモチベーション向上に続くようにして各プレイヤーのイベントに対するモチベーションも一気に上がるのであった。

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