第14話 修行の成果!え?そんなに凄いの!?

あれから数ヶ月、自分の弱さを痛感した俺は、毎日言われた通りのメニューをこなし続けた。

ランニングに腕立て伏せ。懸垂や腹筋などに、マトラ姉ぇ直伝の「剛虎拳」の型練習などだ。おかげで体には筋肉が付いてきて、もうヒョロガリとは言えなくなった。それでもマトラ姉ぇ曰く、もっと効果的な鍛錬が有るらしいが、魔力が必要だから出来ないのだという。やり方だけ聞き出したから、今度こっそりやってみようと思う。


あとは週に一度のマトラ姉ぇとの模擬戦だ。今日、ようやく一撃当てられたのだ。たった一撃だが、確かに自分の成長を感じられて嬉しかった。


「よぉ坊主!またマトラさんにボコボコにされたのか?それにしちゃあ随分と嬉しそうだが」


「そうなんだよ!ようやくマトラ姉ぇに一撃当てられたんだ!まあ、まだ一撃だけなんだけど……」


「魔力無しでだろ?そりゃ大したもんだ!この街の次代の英雄様の誕生か?」


ガッハッハと豪快に彼は笑った。


「ほれ、英雄様にプレゼントだ!上等な猪だぞ。マトラさんが捕って来たんだ」


「こんなでかいのをマトラ姉ぇが⁉︎凄いなぁ……」


「だろ?そんな凄い人に一撃当てられたんだ。お前も十分凄いやつだよ」


不器用ながらも、彼なりの励まし方なのだろう。その優しさがただただ嬉しかった。


「ありがとう!肉屋のおっちゃん‼︎」


「おい待て!俺にはジョンという立派な名前があってだな———」


こんな感じで、街の人とは良い関係を築けている。


「おい坊主!嬉しそうだがどうしたのか?もしや我々『マトラ様に踏まれ隊』に入隊するのか?」


「おい!ガキになんてこと聞かせるんだ!……ごめんな坊主。こいつとはゆっくりしとくからさ」


「お兄ちゃん!何かあったの?とっても嬉しそうだよ?」


「聞いて驚け!マトラ姉ぇに一発当てたのさ!」


「ほんとか坊主!こりゃあ凄い!」


「おじちゃん、そんなに凄いの?」


「おじっ……まぁいい。これは凄いことだぞぉ。例えるなら……まあなんだ、とにかく凄いってことだ」


「そうなんだ!凄いねお兄ちゃん!」


「何⁉︎坊主がマトラさんに一撃当てた⁉︎そりゃ凄い!俺の林檎を持っていってくれ」


「何⁉︎あたいのとこのキャベツを!」


———


悪役であっても、この騒がしさは心地いい……

もし俺の正体が受け入れられたなら、ここにずっと居たいと思った。


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