第13話 悪役の力を見せつけてやる!え?弱すぎる⁉

「さ、修行の開始さね。まぁ、魔力が使えないから教えるのは基本的な体術くらいさね」


「体力やらを付けるとこまで見れるほど、あたいも暇じゃないんでね。このメニューを毎日こなすんだね」


 街の長みたいなものだし、時間もないんだろう。マトラ姉ぇは申し訳ななさそうにそう言った。


「まずは実力の確認さね。今の実力が分からなけりゃ、どうしようもないからね」


「かかってくるといい」


 それじゃ、遠慮なくいこうか。こちとら、天使を倒してるんだ。魔力なしとはいえ、同条件のやつに負けるほど弱くはないはずだ!


 マトラ姉ぇとは大体5mほど離れている。あちらは大人で、こちらはまだ年端もいかぬ子供なのだから、どうしても間合いに差がある。ここはやはり背の低さをアドバンテージに変えて戦うほかないな。


 身をかがめてマトラ姉ぇに走って向かう。どうやら彼女は迎撃を選択したようだ。ならば尚更、俺はヒット&アウェイに徹しよう。

 まずはジャb———


「甘いね。まだまだ考えすぎで動作が固いし、安直で分かり易い。フェイントじゃないか、疑っちまったじゃないか」


「あ、すまん。うっかり力を籠めすぎたさね」


 ここで俺の意識は途切れた………


 ………


「全く、貧弱すぎるさね………これでどうやって生き延びてきたんだい?」


 そうか………俺は能力だよりなどという、能力バトルものではあるまじき行いをしていたのか………

 天使を倒して慢心していた!俺は日本からの転生者!法治国家出身の人間が生まれ変わって外付けの能力を貰っただけで、その技量や心構えまでもがそれにふさわしくなるはずがない!

 もっともっと、強くならなくては!


 彼は知らない。この世界には素の身体能力に種族差があることを。そして今、彼の基準になろうとしているマトラ姉ぇは、それが最も高い種族である白虎族だということを。


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