第6話 子供部屋おばさん

高木が何らかの決意を秘めて両親への最後の手紙を書こうと自分の部屋に入って行ったころ、そこから3キロほど先にある住宅の二階の部屋でひとり邪悪な笑みを浮かべる二十代後半の女がいた。


同じく26歳になっていた円香である。

我ながら陰険極まりない往復はがきを憎っくき相手に出し、それを見たあの変態野郎がどんな顔をしているか想像するとニヤニヤを禁じ得ない。


下痢便しているところをのぞかれた屈辱は、あと三十年くらいたっても忘れられそうにない。


高校大学と順調に進学してからも、社会人になってからも、中学三年のあの時以来ずっと今のように時々思い出してしまいムシャクシャする。


高木の野郎は、一年の時から自分をチラチラ見てきやがったキモい奴だ。

三年で同じクラスになってしまい、しかも隣の席にされてしまった。

恐る恐る話しかけてきたから、その勇気に免じて嫌々作り笑いして口をきいてやってたのに、あんなことしやがって!


のぞかれていたことが分かった後はショックのあまり学校に一時期行けなくなり、心配する同級生からの電話やメールに対して「高木の顔は一生見たくない」「あいつだけは許せない」と返答し続けていたら、クラスのみんなばかりか、一年や二年の時の元クラスメイトや不良グループまでもが一丸となって高木を学校から追い出してくれた。


学校に復帰できたのは彼らのおかげだ。


だが、あののぞきによって自分の人生は狂わされたと思っている。


二度と和式トイレで用を足せなくなって今に至る。

中学と同じく和式のトイレしかなかった高校時代には学校で一度もトイレに入れず、我慢しきれずに漏らして汚してしまったパンティをひそかに放棄したことだってあった。

だからいつも替えのパンティ持参で学校に通っていたくらいだ。

また、高木を朝も晩も絶えず恨み続けた結果なのか容貌も陰湿なものになってしまったらしい。

高校・大学でも中学校時代ほどちやほやされなくなったばかりか、スクールカーストが中下位まで落ち込んだ。

大学時代の就職活動でも陰キャっぽく見られて悪い印象を企業の面接官に与えたらしく希望していた会社に入れず、ようやく入れたのはブラック企業。

情け容赦ないパワハラと激務に耐え切れずに退職してしまい自宅に引きこもり、ストレスで甘いものを爆食し始めるようになってから増えだした体重は70㎏に迫る勢いで、彼氏もできなくなって久しい。


全部高木のせいだ。


今回中学の同窓会をやらないかという電話が同級生からかかって来た時に「出席はしないけど」と断りつつも連絡係に立候補、何年も温めていた嫌がらせをしてやったが、こんなもんじゃ済まさない。


そう思っていた最中、さらに陰険で破滅的な第二段の報復が頭に浮かんだ瞳は、26歳という年齢にしては老けて丸くなった顔を醜くゆがませてニヤリと笑った。


今度こそとどめを刺してやる!

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思春期の悔恨~糞を垂れる美少女をのぞいた代償~ 44年の童貞地獄 @komaetarou

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