第12話 勘違い
「行こう」
突然のことで反応出来なかったが、フィオは即座に向かうべきと判断したようだった。
「あ、うん!」
それぞれ金属と氷で足場を作り空へ飛んだ。
空中からアマネさんの後ろ姿を捉える。
(!!服が…)
所々白くなっているのが見えた。
「凍ってる…?」
自分の属性を感じた。水と風属性を持つ彼女からはありえないことだ。
「氷を操ってくる敵なんていないはずだぞ。」
言われなくてもわかってる。
(いったい何が…)
そのとき、答えが飛んできた。
白い虫の群れがアマネさんの周りをぐるぐると回り始めた。
「よくわかんないけど急ごう!」
フィオに声をかけ、加速する。
群れが大きく広がり、アマネさんを飲み込もうとする。
(間に合えっ!!)
彼女を包むように氷の壁を作る。
しかし、何匹かは氷の隙間に入り込んでしまった。が、アマネさんが風の力を使い虫を吹き飛ばした。
少し離れた所へ着地し、群れを観察する。すると1部の羽が黄色い1匹が群れから飛び出した。それに続き青い羽を持つ虫たちが移動した。どうやら黄色い羽の虫が群れのボスらしい。
群れはぐるぐると旋回しながら空へと飛んで行った。
「アマネさん!!」
氷の壁を消し、近づく。
「さっきのはなんだ?」
フィオが尋ねる。
「わからない。突然襲ってきたの。」
そう答える彼女は怯えているようだった。
優しく背中をさすってあげていると、
「こっちへ来たってことは、何かあったの?」
と聞かれた。
しかしそれを聞きたいのはこっちだ。
「アマネさんがレーザー打ったの見えたから来たんだよ?」
と答えると、きょとんとした顔をされた。
「私打ってないわよ?」
3人で顔を見合わせる。
そのとき、象の前方から再び青いレーザーが打ち上げられた。
(まずい。)
3人とも無言で飛び立ち前方へ向かった。
高速で移動しながら己の判断を悔いた。
(なんで、なんで気づかなかったんだ!)
拳に力が入る。
(アマネさんのはいつも緑のはずなのに、方向から勝手に勘違いしてた!)
打ち上げられてからしばらく時間が経ってしまっていることに焦る。青いレーザーを打つ人は1人しかいない。「人に迷惑はかけられない」と、滅多に助けを求めたりしない人だ。だからこそ余計に焦っていた。
2区を飛び出し、1区に入ったところに彼女はいた。
地面が何ヶ所も大きくえぐれ、クレーターのようになっていた。凍っている部分もある。
一際大きく、えぐれている中心に、彼女〈フウ〉は倒れていた。変わり果てた姿で。
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