第11話 不安

(いったいどうしたら…)

倒せる見込みがない象。

白く点滅し続ける中央電波塔。

わからないことだらけだ。

「象が動き出さないうちに何か手を打たないと。」

アマネさんが冷静に言う。

「そうだな。」

「そうだね。」

アレンとフィオも頷いている。

私だってぼんやりしていられない。

「アレン、フウさん、戦った時のこと詳しく聞かせて欲しいです。」

敵に弱点があることを祈り、戦闘時の感覚をできるだけ詳しく聞こうと思う。

「岩に攻撃してる感じだったな。手応えがなくて、硬い。」

「私も似たようなものでした。毛皮が分厚くて、攻撃が通りません。」

「なるほど…」

残念ながらだいたい見ていた通りだった。敵の弱点に繋がりそうな情報はない。

(とすると、)

「目とかは攻撃してみました?」

目はどの生物でも共通して弱点となり得るだろう。

「それが…」

「閉じてたぞ。」

「そうですか…」

敵は目を閉じるどころか、瞬きすらしないはずだ。しかし、色々なことが重なりすぎて驚くことはない。あの象が明らかにほかの敵と違うのは見ればわかる。

「目を開けたら動き出しそうですね。見ておくべきでしょうか?」

シンの言うことは最もだ。攻撃する際には目は開けるだろう。

「見ておいた方がいいと思う。」

「私が見ておくわ。」

アマネさんが軽く手を挙げ、象の前方へと飛んで言った。

「私は研究院の方に行って何か情報がないか聞いてきます。」

と、フウさんが言う。

「僕とリズは象の後方を警戒しておこう。」

「そうだね。アレンは自由にしてて。」

この区を1番知ってるのはアレンだ。余計な縛りはない方がいい。

「わかった。…ちゃんと守れよ。」

フィオにだけ何やら耳打ちする。

それから幹部達は解散し、それぞれの役目に着いた。


「さっきアレンに何言われてたの?」

2人きりになり、張り詰めた空気をほぐそうと話題を振る。

「えっ、あ、守ってやれよって言われただけだよ。ほら、リズってあんま頼りにならないじゃん?」

フィオの顔を見ると、不安を抱えながらもなんとか元に戻ろうとしている感じだ。

「そうですかー。じゃあちゃんと守ってくださいねー?」

こうゆう軽いやり取りは空気をほぐすのにちょうどいい。


そんなこんなで、周りを警戒しながらも軽いやり取りを続けた。黙っていると不安に飲まれそうだったからだ。


しばらくして、象の前方から青いレーザーが打ち上げられた。

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