第10話 象
象が立っているのはおそらく第2区。
(アレン…大丈夫なの?)
まだ3区が安全とは思えない状況で、2区へ行くのがためらわれる。
そのとき、空に水色の光が打ち上げられた。
同時に、1部の雲が空砲を受けたかのように沈んだ。
(フウさん!)
動いたのはNo.9のフウだった。自身の風属性を使い、2区へ飛んで行ったらしい。それを合図とするかのようにほかの区画からもレーザーが打ち上げられ、幹部が移動する様子が見られた。
(そうだよね。とりあえず行かないと。)
何が起こるかわからないのはどの区画も同じだが、目の前に現れた敵をただ眺めている訳にはいかない。
「ここはお願いします!」
守護者達に一言。
『はい!』
返事を聞き、空に黄色いレーザーを打ち上げる。そして、生み出した氷の板に乗り2区へ向かった。
全員ではなかったが、幹部が集まったのは実に50周期ぶりだった。最後に集まったのは、先代幹部達の送別式だ。その中には、アレンの父であるアウレスもいた。
(No.1がいれば…)
アウレスは歴代最強と言われたNo.1だった。しかし、少しの間都市を離れることになり、再び帰ってくることはなかった。
「いないのに言ったってしょうがない。私達でなんとかしなきゃ!」
不安で沈みかけた心を奮い立たせ、2区の幹部が集まっている場所へ降り立った。
(みんな変わってないな…)
それもそのはず。守護者幹部になるためには、ガーディアンというスキルを得なければならず、ガーディアンを得たものは不変の存在となる。
集まっていたのは3人。
No.4〈アマネ〉、No.5〈フィオ〉、No.7〈シン〉だった。
「来たのか。」
いち早く私に気づいたのはフィオだ。
「師匠!今アレンさんとフウさんが様子見程度に戦っているところです!」
シンが状況を教えてくれる。象の頭上の雲が何者かに形を変えられているのが遠目から見える。
「全くと言っていいほど効いてなさそうね。」
アマネがあまり良くない情報を付け足した。象の様子を見るが、微塵も動いていないようだった。
「これを削るのか…」
不可能という言葉が頭をよぎり、思わず声に出る。
少しして、雲が一定の形を保ち続けるようになった。アレンとフウの攻撃が止まったようだ。2つの影が近いてくる。
「無理だ。」
「無理です。」
音も立てずに着地した2人が声を揃え結果を言った。
「そんな気がしてた。」
フィオの言葉に酷く共感した。
その場の誰もが否定せず黙り込む。
都市内最強であるはずの守護者幹部が6人揃って立ち尽くしていた。
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