第9話 イレギュラー
戦闘区にて、守護者達と話しているとブザーが鳴り響いた。
(成長を見せて貰いますか)
守護者達の戦闘を見るのは久しぶりだ。日々厳しい特訓を続けている…と聞いている。
「怪我だけしないように!それと、血を飲まれた場合はすぐに引いて複数人で相手するように!」
いつも1人で戦っている割には的確な指示を出せたと思う。
『はい!』
いつも通り守護者達の声はよく揃っていた。
その日は敵の数が少なかった。
というより、少なすぎた。
「…5体?」
その場にいる全員が混乱した表情を浮かべている。ほかの区画の空を見るが、やはり煙の量が少ない。1桁代なんて見たことあっただろうか。
「イレギュラーかも。気を引き締めて。」
『!!はい!』
一気に空気が張り詰めた。
イレギュラーであれば、本部にある都市内で最も高い中央電波塔が赤く点滅するはずだが、それはまだ見られていない。
「とりあえず、降ってきた分だけ倒そう。何があるか分からないから2人1組で戦うように!」
『はい!』
今いる守護者は私を除いて8人。敵の1体は私がやる必要がある。
(ここは1番街に近いところをやるべきか。)
不安が募る中、それぞれの戦闘が始まった。
敵の様子に変化は見られなかった。敵を倒して戦闘区の中心へ戻ると、ほかの守護者達はまだ戦っていた。
しばらく戦闘を観察していると、ほとんどの戦闘が終わり、守護者達が集まってきた。
「戦闘終了しました!」
「こちらも同様です!」
無事に誰も怪我することなく戦闘を終えたようだ。だが、不安は大きくなるばかりだった。理由はモニターにあった。
〈1〉
モニターの数字は動かない。
気配を探すが、感じられない。
「No.3、どうしましょう。」
(私だって分からない)
そんなことは言えない。
「……」
呆然とモニターを眺めていると、視界の隅が光った。
『!!』
全員の息を飲む音が揃う。
中央電波塔が点滅していた。
白色に。
(白にも光るんだ…)
ぼんやりと感想が浮かぶ。
(違う、そうじゃない。白ってなんだ。何を教えてるんだ。)
中央電波塔が点滅し始めたのとほぼ同時に空から大量の黒煙が降ってきた。
(あんな量…)
無理だ。直感がやばいと告げている。
(30…とか?)
敵の数を予想してみるも、これ程大量の煙は見たことがないため、大雑把な数しか思い浮かばない。
(いや、こっちじゃない…?)
黒煙は巨大だが、まとまったまま降ってきている。
(そっか!これで1体だ!)
ようやくモニターの数字を思い出す。
モニターをもう一度確認すると、
〈0〉
(いなくなった…?)
どうやら3区の戦闘は終わったようだ。
しかし、巨大な煙はゆっくりと地面に降り立った。
その姿は、4足で立ち、鼻の長い、象だった。
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