第8話 次の約束
「そういえば、今日は何のお祭りなの?」
ふと、気になったことを聞いてみた。
「ああ、僕の周期祭だよ。」
この世界では1000日を1周と数える。周期日とはその人が生まれた日だ。つまり今日はフィオの誕生日なのだ。
「えっ!そうなの!?ごめん、知らなくて。プレゼントとか何も準備してないや。」
(だからすれ違った街の人はフィオにおめでとうって言ってたのか)
せっかく周期際に誘ってくれたのに何も準備してない自分がとても恥ずかしい。
「いいんだよ。言ってなかったし、来てくれただけで嬉しいよ。」
そう言って彼は笑った。街に来てからの彼は別人かと思うくらいにとても親切だ。
「ほんとごめんね。後日何か持ってくね。好きな物とかある?」
プレゼントの参考に好きなものを聞くと、
「ほんとにいいんだよ。来てくれただけで充分だよ。」
と、先程も聞いたような答えが返ってくる。
「そっか。わかった。なんか…意外と優しいんだね。」
思わず余計なことを言ってしまう。
「えっ!?いや、別に、今日が周期日なのに別の日に貰ったってしょうがないだろ。どうせ、3区のものが僕に合うはずないし。」
余計なことを言ったばかりにいつものフィオに戻ってしまった。
「そっか。そうだよね。ごめん。」
3区のものが合わないと言われたのは少し落ち込んだが、今回のは自分が悪いので言い返せない。
「あっ、いや、あの…」
フィオが口篭り、少し気まずい空気が流れた。
その後も少し重い空気は続いたが、5区限定の美味しいものや、3区のことを話したりでだいぶ打ち解けてきた頃。
「ね!あれも美味しそ…「リズ」
唐突に名前を呼ばれた。
「…どうしたの?」
(もう帰りたくなっちゃったかな?)
訪ねながら顔を見ると、なんだか落ち込んでいるようだった。
「………」
「どうしたの?」
「あの、さっきのことだけど…」
「さっき?」
(幹部と会ったたことかな?)
顔見知りの幹部なら先程会い話したばかりだ。
「さっき、3区のものは合わないとか言っちゃって…ごめん。」
(そっちか。気にしてたんだ)
「大丈夫だよ。多分事実だし。」
軽い言い方に笑顔を添えて返す。
「いや、ほんとに酷いこと言ったから。それに3区のこと全然知らないんだ。」
だいぶ反省してくれているらしい。
(なんか、逆に申し訳ないな)
「じゃあ…今度、来てみる?」
「行くってどこに?」
「3区」
「…えっ!いいの!?」
やっぱり興味無いかな?なんて思いつつ言ったが、意外にも食いついてきた。
「うん。実際に来てみたら案外好きな物とかあるかもだし。その時はプレゼントさせてね?」
(やっぱり1000日に1度の日だしプレゼントは渡したい)
「ありがとう。酷いこと言ったのに。楽しみにしてる!」
フィオの表情は会ったばかりの時のような曇りないものになった。
「じゃあそろそろ戦闘始まるみたいだし、お開きにしよっか。また食堂で会った時にこっち来る話進めよ。」
気づけばもう28時だった。1日40時間の内、戦闘は10時と30時からなので夕食をとって、のんびり準備してちょうどいいくらいだ。
「そうだね。戦闘、気をつけて。じゃあ、また。」
彼が手を振り離れていく。
「うん、またね!」
同じように返し、部屋へ戻った。
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