第7話 第5区

「ご馳走様でした。」

食事を終えて一息つく。

(夜の戦闘までもうちょい時間あるな…。どうしようか。)

これからの時間について考えていると、

「あっのさ、よ、良かったら、一緒に街の方見に行かない?ちょうど俺の区画で祭りやっててさ。べ、別に、リズと行きたいとかそうゆうことじゃないけど、幹部が顔出したら祭りが活気づくから来て欲しいって言われてて、どうせならもう1人くらいいた方がみんな喜ぶかなって。それだけだから。」

早口過ぎて全部は聞き取れなかったけど、どうやら祭りに誘っているらしい。

(ほかの区画あんまり行かないし行ってみたいな。)

アレンやフィオなど、自分の管轄内の戦闘が終わればほかの区画に行き戦闘を手伝う幹部もいるが、あまり交友関係が広くない私はほかの幹部や区画に行く機会がない。

「行きたい。」

「え、あ、わかった!じゃあ、一旦部屋に戻って待ち合わせでいい?」

「うん。」

その後、時間と場所を決め、一旦解散となった。


「何着てこうかな。」

第3区の外に出るのは久しぶりで、ワクワクしていた。

(たしか、5区は上品な感じだったよね。)

研究院や本部を除き、10に分割されたこの都市では、それぞれの区画で雰囲気が全く異なる。それに加え、年中雪が降っていたり、雨が降り続ける区画もあるため、ほかの区画に行くのは別の世界に行くようで少し楽しい。

(これでいいかな)

おそらく祭りを見てから戦闘へ直行する形になるはずなので、幹部用の戦闘服の中から、襟の着いた比較的上品なものを選ぶ。幹部としてイベントに出席したりする時に着るもので、滅多に着ないものだ。

(お金は…たしか5区ってほとんどカードで払うんだったよね)

都市のお金は全て紙であるため、カード1枚で買い物できるのは大変ありがたい。区画によっては硬貨を使うところもあるが。

(3区でもカード化進めよう)

服装と持ち物の確認をし、待ち合わせの場所へ向かった。


「うわぁ、すごい…」

待ち合わせ場所である電波塔へ向かうと、町は既に賑わっていた。電波塔の周りにはテーブルと椅子が数多く置かれており、ほとんどが人で埋まっていた。

(5区は出店は出さないんだな。なんか上品。)

祭りの最中でも5区の上品さは変わっていなかった。街の人の服装はタキシードやドレスといったものが多く見られる。

(3区の祭りと全然違うなぁ)

別世界の雰囲気に飲まれていると、

「リズ!ごめん、待った?」

タキシードをまとい、髪をしっかりと固めたフィオがやってきた。

「ううん。待ってないよ。なんか…かっこいいね?」

こうゆう時はまず褒めるのが常識だろう。実際いつもよりビシッとしていてかっこいい。

「へっ!?あ、ありがとう。リズも、その、良く似合ってるよ。」

驚きながら私の服も褒めてくれた。

「ありがとう。5区ってほんとに上品だよね。外国みたいで素敵。」

「そ、そう?気に入ってくれたなら良かった。」

2人は互いの区画との違いなどを話しつつ、歩き出した。

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