エピローグ ささやかな結婚式

 ――いつかの夜、いつもの反省会を終えて。ウチら六人はささやかな式を開いていた。


「――まさか、最古参である私を差し置いてゴールインする不届き者が現れるなんて思いませんでした……しかしおめでたいことも事実! それに、式場をゼラヴィア教会ここに選んでくれた、できたヤツらでもあります。彼らとの出会いは偶然の、運命のめぐり逢いのようなもので……」


「はい、かんぱ~い!」


「「「「かんぱーい!」」」」


「ちょっと神様、先に乾杯しないでくださいよ! ねえ、リーダーからのありがたい話をみんな聞いてよ~!」


 主役の二人より目立つうるさいリーダーは無視して、残りの五人でさっさと乾杯する。というか、こんな豪華な料理の前で長話なんて聞けないっての! んん~、肉美味しい~!


「まあまあ、いずれマキさんにもいい人が現れるもん。もっと信者の方に目を向けるもん!」


 シルフィナは四本の腕を巧みに操り、肉に野菜にどんどん口に運んでいく。その上マキの頭を撫でるといった離れ業まで見せている。ここまでくると、もうすごいを通り越して怖い。


「うええええん! シルフィナは美少女だから、慰めが嫌味にしか聞こえない~!」


「いや、シルフィナは男だもん……」


 そうなんだよな、コイツは見た目美少女だけど中身は男の子……いやいや! ウチらよりかわいいのって、やっぱりなんかおかしいよなぁ!?


「まあまあ。リーダーも師匠サンもかわいいから大丈夫だっテ。それに……ネ?」


 純白のドレスに包まれた新婦は、なぜかニドの方に視線を移す。いや、なんでコイツが話題に……えっ、もしかして!?


「なあリーダー……いや、。あなたとこの教会で共に人助けに励んでいく中で、いつしか二人でも助け合って生きていきてェと、思うようになりました。だから……もし俺と一緒に生きてェなら、コイツを受け取ってください!」


 そう言ってニドが片膝をついて差し出したのは、キラキラと輝く宝石のついた指輪だった。

 いや、まさかニドがマキのことを好きだったなんて~! ……イルガ夫妻もシルフィナも、なんならプロポーズされた本人も『うんうん』って頷いてるし、知らなかったのってウチだけ!?


「――待ってたよ。でも指輪はいらないかなぁ、つけても邪魔だし。だから売ったお金で、美味しいものでも食べよ?」


「……おう!」


 ま~た主役より目立っちゃってるよ。まさか結婚式の途中に、新たなペアが生まれるなんてなぁ。今度はコイツらの式もしてやんないとだな……。


「アツアツだァ~! ってことは、みんなから見たボクたちってこんな風なんだネ~。すっごい楽しそうジャン!」


「……だな。オレたちもあんな風に、みんなの前で楽しく笑い合える日が来ればいいな」


「だいじょぶだいじょぶ、イルガたんならきっとできるヨ。だって、ボクの旦那さんは『みんな勇者』だモン!」


 ――そう言って、主役の二人はさらっと誓いのキスをする。

 全ての種族が手を取り合って助け合う世界になれば、きっとイルガたちも心置きなく笑い合える。今がその第一歩だ……!


「「「「改めて、結婚おめでとう~!」」」」

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神様系記憶喪失美少女シスター・クラリス 最早無白 @MohayaMushiro

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