第8節 配信少女、合体!
走って戻ると、闇の奥に別の……ケダモノの黒が見えた。
その手前に、亜紀さん。
「亜紀さん!」
しゃがみこんでる亜紀さんに、クマの首が伸びている。
四つ首クマの、混沌の獣。
あの首が厄介だけど……同時に、弱点でもある。
(私は)
自分の姿を。
紫藤 ゆみかという、魔法少女プリスピアを。
イメージする。
(かわいい!)
<――――
承認された! 現実でもシステムメッセージ浮かび上がったし、音声付き! びっくりだよ!
体から緑の光が、魔力が
私は亜紀さんに迫る首を見据え。
ぽんっ、と跳ねた。
それだけで、私の体は矢のように真っ直ぐクマの首へ向かう。
すごい速度だ。なんとか両足を、前の方に向けて。
「おりゃあああああああああ!!」
私の足は、見事にクマの眉間に突き刺さった。
矢や、魔術だけじゃない。
私のスキルは。
どんな攻撃だって、必ず急所に当ててくれる。
反動に合わせて、後ろに宙がえり。
ちょうど……亜紀さんの目の前に、立った。
クマは首を戻し、悶えてる。
四つの首が混乱したかのように、右往左往してて……Vダンと同じだ。
弱点の眉間を攻撃されると、しばらく身動きがとれなくなる。確か180秒。
私は後ろを振り返った。
……亜紀さん、この短時間でもうケガしてる。
足は擦りむいてるみたいだし、左腕からも血が出てて、痛々しい。
ここはVダンじゃないし……治療とかして上げられない、かな。もどかしい。
「どうして戻ってきたの!」
苦しそうに、亜紀さんが声を上げた。
私は。
「私の方が強いからです!」
堂々と言い返した。
亜紀さんはびっくりして固まってる。
「歩けるなら、離れてください。可能なら、亜紀さんが救援呼びに行ってくださいね」
「あなた一人に任せるわけには!?」
「勇気の使徒・プリスピアは!」
私は高らかに、宣言する。
くるりと、クマの方を振り返って。
「敵に背中を向けて、逃げたりはしない!」
私の体が、またほのかに緑に輝く。
まだ何回かは、攻撃できそうだ。
――――いける。
「守るべき人を背にして、負けたりはしない!!」
心を、意識を。
研ぎ澄ます。
10年最前線やってた廃V冒険者、舐めるなよ!
「ゆみか、ちゃん……」
亜紀さんは、まだ動けないみたいだ。
彼女の声を背に、私は飛び出した。
(考えなしに飛び込んだら、こいつはカウンターをとってくる。まずは!)
私が地面を蹴り上げようと、足を動かしたとき。
ぽんっと音がして、眼前の空中に何かが現れた。
<その心意気、気に入ったフォ!>
……は?
え、なにこれ。ボイス付きシステムメッセージで、何か語り掛けてくる。
急展開に、思わず足が止まった。
<我々が!><君の!><力になろう!>
なんか丸ちっこいのが4つ出てきた。
ベージュのクッション、オフホワイトのボール、クリーム色のブランケット、シルバーの毛玉。
……みたいなのに、くりくりカワイイ目と、ほっそい手足?がついてる。
「えぇ〜……間に合ってま<行くぞ! 新たな魔法少女への、祝福フォス!>」
<<<サー、イエッサー!>>>
話聞けよ毛玉。
そいつの白銀の毛がぶわーっと伸びて広がって。
クマからこちらを覆い隠し。
「神秘体が4匹も!? ゆみかちゃん!」
亜紀さんの声を遮って。
私を、包みこんだ。
中は広々とした、白銀の世界。
不思議な力の風が吹き荒れて、私の体を浮かび上がらせる。
<1号、クラウドレッグ。参りますわ!>
ベージュのクッションみたいなやつが、私の両足にはまる。
がきょーんがきょーんと音がして……メカメカしいブーツ?になった。
スカートが消えて、下半身を腰まで覆っている。
「は?」
メカだ。ロボだ。なんだこれは。
<2号、スノウガントレット! 行くッス!>
ワタアメみたいなボールが、私の両手首にすぽっと入った。
ばきーんどぎゃーんと派手な音を立てて、白地に太い黒いラインが入った……ロボ腕になる。
ショールを残して、上半身もメカになった。
「え? ちょ、ま」
<問答無用! 3号、クリームウィング! セット!>
話聞けよ破るぞ毛布。
クリーム色のブランケットは、私の背中からとりついて……ショールの上から体を包んだ。
ずばーんしゃきーんと謎の変形?をし、毛布が鋼鉄の翼に変わる。
<0号、シルバーヘルム! ゆくぞ魔法少女>
白銀の空間が縮み。
それは私の首から上をすっぽり覆って。
がこーんしゃこーんゆうて……たぶん、ロボヘッドになった。
<<<<プリティィィブロォォォォォ!>>>>
この、この……こいつら!
「リテェェェェイク!!!!」
私の! カワイイを! 返せェェェ!
<<<<そんな〜>>>>
ふざけんな出荷すんぞ毛玉ども!
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