最終話 また、お姉ちゃんとするときのための練習……シようね



「おはよう、たっくん」


「おはよう、先輩」


「おう、おはよう」


 早いもので、長かったと思っていた夏休みは昨日終わりを迎えた。楽しい時間はあっという間というやつだ。

 夏休み明けの朝。つまり登校日の朝。玄関のインターホンが鳴り、扉を開ける。


 扉を開けた先にいたのは、右希うき左希さき。幼馴染である双子の姉妹だった。

 右希は俺の彼女で、左希はその妹。


 二人は制服に身を包み、俺を迎えに来てくれていた。

 それがわかっていたから、俺もすでに準備はできている。


「お、先輩ちゃんと準備できてるねー。えらいえらい」


「当たり前だろ。休み明けだからってボケていられないよ」


「ふふっ、それはそれで面白かっただろうけど」


 玄関先で他愛ない会話を繰り広げつつ、時間を確認。

 そろそろ登校したほうがいい時間だ。


「じゃ、いってきます」


「はいはい、いってらっしゃい。右希ちゃんと左希ちゃんも、いってらっしゃい」


「いってきます」


「いってきまーす」


 家の中にいる母さんに声をかけ、俺たちは家を出る。

 二人が高校生になってから、すっかり日常と化したこの風景。俺が高校生で二人が中学生のときは、別れ道でわかれていたからな。


 三人揃って、学校に向かって歩いていく。

 夏休み前と、変わらない光景……だと思っていたのだが。


「う、右希?」


「どうかした?」


 俺の右手が、柔らかなものに包まれる。右希の手だ。

 右希が、俺の手を繋いでいる。その行為自体に、驚きはないのだが……だが、右希はこの間まで手を繋ぐのも恥ずかしがっていた。


 なのに、こんな……人前でなんて。

 それも、左希も見ているのに。


「もしかして、嫌だった?」


「嫌なわけ、ないけど……」


「じゃあ、いいじゃないっ」


 右希は、以前に比べて積極さが増したように思う。

 それは嬉しいことだ。だけど、なにかきっかけがあったのか……ちょっと、考えてしまう。


 俺たちは恋人同士なのだから、人前であろうと躊躇する理由はないのだが……


「左希、どうかしたか?」


「! へ、いや、なんでもないよ!」


 ふと、先ほどから黙っている左希が気になり、声をかけた。

 すると左希はわかりやすいくらいに驚き、反応した。いつも賑やかなのに、今日はどうしたのか。


 なんだか、視線を感じた気がしたのだが……気のせい、だろうか。


「もしかして、左希もたっくんと手をつなぎたいの?」


「! そ、そんなこと……」


「でもだめー。たっくんは、私の彼氏なんだから」


 俺を挟むようにして、右希と左希は会話を繰り広げる。

 それは、姉妹の微笑ましいやり取り……のはずなのだが。どうしてか、そうとは思えなかった。


 俺の彼女である、右希。右希とは最近、ようやくキスをする仲になった。恋人として、小さくも一歩一歩を歩んでいくつもりだ。

 対して、彼女の妹である左希とは……俺は、関係を持ってしまった。


 右希との練習だと、左希に迫られて。俺は、拒めなかった。

 付き合っている彼女とは、まだキス以上の関係にはなっていないのに……彼女の妹との関係は、続いている。


 俺は……この関係を、どこまで続けるつもりなのだろう。今さら、もう元には戻れない。

 そんなことは、わかっている……かといって、割り切るなんてことは、できない。


 俺は……


「たっくん、早く行こっ」


「先輩、のんびりしてたら遅刻しちゃうよ」


「あ、あぁ」


 彼女と、彼女の妹。彼女の妹と、決してバレてはいけない禁断の関係を、築いてしまった。

 俺はあのとき、拒めなかったし……きっとまた、迫られたら拒むことはできないのかもしれない。


 右希を傷つけるとわかっていて、なぜ……拒めないのだろう。


「先輩」


 ふと、左希が俺の耳元で、言葉を囁いた。


「また、お姉ちゃんとするときのための練習……シようね」


「……っ」


 その、俺を誘惑する言葉に……俺の心臓は、静かに高鳴っていた。




 完



 ――――――



 あとがき


 目標の10万字ラインを達成し、これにて「美人双子姉妹の姉と恋人になった俺は、彼女の妹と禁断の関係を築く」は完結となります。あっ、あらすじは抜いて10万字です。

 最後まで読んでくださった方々、応援してくださった方々、ありがとうございます! 日々の励みになりました!


 さて今回の作品、どろどろ恋愛ものを書いてみてえなぁと思って書き始めた次第です。

 幼馴染設定が好きで、それでどろどろするにはどうしようかなと考えた結果、双子の幼馴染でこんな形に。


 最初と最後あたり……辰や左希ちゃんだけでなく、特に右希ちゃんに関しても大まかには「二人の関係を目撃させる」というのを考えてはいました。

 ただ、書き進めていくうちに想定していたよりもやばい感じになっちゃいましたね。


 彼氏と妹の情事を見て壊れてしまったのか、それとも……というのは、皆さんのご想像にお任せします。

 関係を持ちかけた左希が一番やばいかな、と思いつつ……でしたね。


 そして迫られた辰もまた、心の内に生まれた感情が……?

 まあここをやるとまた長くなりそうなので、割愛で。


 そういえば、右希と左希の体型は同じですが、「お姉ちゃんとカップは同じだけど、数字は私のほうがあるんだよ」みたいな誘惑セリフ入れようかと思ってたのに、タイミングがなかった……

 まあいっか!


 本編はここで終わりますが、三人の関係はまだまだこれからです。交際三ヶ月を機に変化した関係……夏休みを経て泥沼へ。

 もう元には戻らない関係は、どこへいってしまうのか。それは今は、誰にもわかりません。



 長くなりましたが、改めて最後まで読んでいただき、ありがとうございます!

 他にもいろいろ作品を書いているので、よければ見てやってください! そしていろいろ書いていくつもりでもありますので、そこでまたお会いしましょう!


 では!

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美人双子姉妹の姉と恋人になった俺は、彼女の妹と禁断の関係を築く 白い彗星 @siro56

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