第22話 無題
「終わったな」
異境の空が歪む。
「おい、返事をしろビャク……」
振り返る。
そこには誰もいなかった。
「居ない……いや」
周りを見回す。
暗い。暗い。暗い。
全てが暗い。
ザ……ザザザ……
ブラウン管テレビの砂嵐のようにあたりが変換される
ここはどこだ
ーーここは記憶
ここは何だ
ーーここはお前自身
俺はなんだ
ーー『大神雅人』の皮を被った、形亡き者
じゃあ、この腕は
ーー螟ァ逾樊ュ」蝸」縺ョ縲∵怙蠕後?荳?謖ッ繧
俺は
ーー『それ』を使えば、死ぬ
お前は
ーー何者でもない、ただの記憶
あたりの砂嵐が移り変わる。
これは……記憶
『大神雅人』のものではない、『誰か』の記憶
毒死、戦死、死刑、刺殺、屠殺、斬殺。
死が何度もループする。
ある者は真紅の槍を
ある者は禁忌の魔術を
またある者は伝説の剣を
更にある者は究極の一射を
身体が、脳が、魔力回路が、記憶が、経験が、あるはずもない感情までもがこれを否定する。
これは『大神雅人』ではないと
これは『大神正嗣』でもあると
そして自分は『大神雅人』のなり損ないだと。
では俺は、この記憶は、この左腕の魔力回路は
ーー『大神正嗣』であり、『大神雅人』であり、
そして、『 』なのだ。
ーーそしてお前は『人間』でも、『英霊』でも、
ましてや『死霊』でも『生霊』でもない。
……分かってるさ。俺は「 」だ。
だが、その時になれば、
目を開く。
そこには景色
元の街並み
元の平和
「これから、だよな」
後ろに振り返る。
「大丈夫?」
ビャクヤが少し離れた場所で立っていた。
「あぁ、問題ない。……帰るぞ、一神亭に」
読まれもしない物語 MasterMM @Mastermm
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