第21話 対分裂怪物戦 〜澪side〜

金平糖を手に握りながら、無駄に分裂させている5人組の下へと駆ける。

「クソッ!なんで増えやがんだよ!」

「一旦落ち着いて!原因を探さないと」

「そうだよ、原因を見つければ怪物の倒し方も分か

 るかも……」

「うるせぇ!お前等は俺に指図される側なんだ

 よ!俺に指図すんな!」

5人中2人は戦闘不能らしい。

盾を構えた大柄な勇者が戦闘不能の2人を庇うように防御している。

「クソッ!クソクソクソクソォッ!」

大剣を構えた勇者が我武者羅に剣を振り回す。

そのあまりに適当な刃は、みるみるうちに分裂体を増殖させていく。

「なんで、なんでだよぉッ!」

(あっれは……見てられねぇ〜)

澪は左足で思い切り地面を蹴り上げ、口に放り込んだ金平糖を噛み砕く。

軽く出るソニックブームを最小限に抑え、反転させてブレーキにする。

「っせぇぇーーい!」

5人組の死角から突撃してきた分裂体に反転させたソニックブームを拳に乗せてぶん殴る。

ごぱぁと内臓が破裂するような音とグギャッと地面に叩きつけられた悲鳴が響く。

「大丈夫か、お前等ァ!」

勢い良く話しかけた事か、それとも眼の前で怪物を素手で相手したことか、口をあんぐりと開けた5人組の姿をジロジロ見て澪は判断する。

「大丈夫だなヨシ!(๑•̀ㅂ•́)و✧」

「いや、お前誰…」

大剣の勇者が口答えするが、

「そこの5人組全員撤退オッケー?」

澪は聞いていなかった。

だが、

「おい、そこのお前!」

「なんだようるさいなー」

「そこをどけ!コイツは俺等の獲物だ!」

「獲物ォ?倒すの?その体で?無茶言うなってばも

 ー(笑)」

「なんだとぉッ!」

「喧嘩はやめてっ!」

杖を持った少女の勇者が横槍を投げる。

「将君、確かに倒さなきゃいけないのは分かる。

 でも、そればかりに囚われて味方もみれなくなる

 のは違うよ。だから、一旦撤退しよう?ね?」

「ッ!……けど、俺は……」

「そうだよ、将。撤退するべきだよ。」

盾の勇者も話に入り込む。

「お、俺は……」

大剣の勇者が、その大剣を強く握りしめた。

直後。

「!飛んでけぇ!」

澪が5人組もろとも吹き飛ばす。と、同時に大量の分裂体が澪に突撃する。

澪はそれを両腕をクロスさせて受け止めた。

「ぐ、ぬぬ……卑怯だぞ!話に横入りするのは

 ぁ!」

両腕を振り払い、突撃してきた分裂体を吹き飛ばす。

「ギアチェンジ!マテリアルストライカー!」

ポーズと共に澪に5つの玉が澪に取り込まれる。

「こんのぉ!スラッシュハリケーン!」

両手から放たれた竜巻は吹き飛ばした分裂体を巻き込み空に舞い上げる。

「トドメだぁッ!」

澪にが右手を上に掲げると、辺りの空が曇り始める。

「な、なんだ……曇、か?」

「いや、もしかして、雷曇!?」

曇から放たれた雷は澪の掲げられた右人差し指に落ちる。

「サンダァァァブレェェェェク!」

指を振り下ろし、雷のビームを薙ぎ払う様に分裂体に当てる。

謎の爆発と共に分裂が焼け落ちる。

「どうだざまぁみやがれ!……あれ」

澪は焼け落ちた分裂体に目を凝らす。

焼け落ちた灰が分裂し分裂体になった。

「はぁ!?それありすか!?理不尽だろ今の!3つの

 戦闘機が人型に変形するくらい理不尽だろ!」

すると分裂体は一箇所に集まり始める。

いや、集まっているわけではない。固まっているのだ。別の形になる為に。

分裂体がドロドロに溶け、1つに融合する。

「な、なんだよ……そんなのアリかよ……」

その液体は羽を形成し、足を造り、顔を出す。

翼竜のような、飛行に特化したフォルム。

『ーーーーーー!』

怪物が咆哮するのと同時に澪が構える。

「もう一丁!サンダァァァブレェェェェク!」

だが、それをひらりと躱し、上昇し始める。

「どこ行く気だコンニャロォ!」

『ーーーーーー!』

再びの咆哮と同時に両翼から何かが飛び散る。

それが澪達の元へ来るとキラリと光った。

「うぇ、マジィ!?」

「皆!僕の後ろに隠れて!」

大爆発。

凄まじい爆風と火力が勇者を襲う。

大柄な盾の勇者が前に立っていた仲間を無理矢理後ろに引っ張って盾で守っていた。

が、澪はその仲間には含まれていなかった。

「ウソだろ……」

「この火力じゃ、皮膚どころか、肉まで……」

爆発煙がまだ消える前に再び怪物が突撃する。

「マズイッ!」

「おい、さっきの障壁出せねぇのか!」

「もう、魔力が無くて……」

『ーーーーーー!』

「「「ッ!」」」

その場の3人は最低でも致命傷は覚悟した。

「とりゃっせぇぇーい!」

怪物の突撃が止まる。いや止められた。

澪が、煙の中から姿を現し、怪物のくちばしを両手で掴んでいたのだ。

そのままグルグルと回転し、怪物を投げ飛ばす。

「ふいー。あーぶなかったぜぇ」

「お前生きてたのか!?」

大剣の勇者が驚愕の声を上げる。

「?そりゃ風のバリアあるし?」

「いやだからって……」

『ーーーーーー!』

その会話を遮る様に怪物が再び飛び上がる。

「さっきは油断したが、今回はそぉわいかねぇ

 ぜ!」

澪は両拳を合わせ、ポーズを決める。

「ギアチェンジ!ゼルトニウム・ノア!」

澪の体に銀河色のオーラが纏わりつく。

『ーーーーーー!』

再び先程の体制に入り、キラリと光る鱗粉を放出する。

「ま、また来るぞ!」

「まかせとけぇ!プロテクトガード!」

鱗粉が爆発ーーーしなかった。

バリアに鱗粉が纏わりつき、爆発の直前で止まっていた。

「今度はこっちの番だ!リフレクトシャード!」

左手を再び突き出し、鱗粉が纏わりついたバリアごと怪物に飛ばす。

勿論、大爆発を引き起こし、怪物がよろめく。

だが、その大きな両翼で体制を立て直し、逃げ出す。

『ーーーーーー!』

「逃がすかぁ!ツインサーキュラー!」

両手から投げ飛ばされた光輪は凄まじい速度で怪物に追い付き、両翼を切断する。

『ーーーーーー!』

流石に体制を立て直せず、地面に落下する。

「来たッ!」

その時を待っていたかのようにその落下地点へと澪が駆ける。

「ギアチェンジ!アブノーマリティインパクト!」

半身に構える。

半透明な機械的な腕が、澪の右腕に重なる。

「喰らえッ!メガトンッパァァァァァァンチ!」

鱗粉の爆発とか比べものにならない爆風と衝撃が周辺の地面を揺らす。

『ーーーーーー!』

最後の咆哮は、最早音ですら無かった。



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