第8話
「くそっ、なんだこの数!」
「こんな数の手下が居たら本体にたどり着け無い
って!」
戦場にて。
戦況は押されている。
本体に辿り着く前に大量の分体が邪魔をしてくる。
その圧倒的な数を前に苦戦を強いられていた。
このまま戦闘が長引けば、街にさらなる被害が及ぶ。だが、この数を相手出来る者がこの場には誰もいなかった。この、瞬間までは。
「ぬぅぉぉぉぉぉ!スラッシュハリケーンッ!」
戦場についた途端、大量の何かが襲ってきた。
「うわッ!ナニコレ!?」
「…どうやら、怪物本体から出てきた手下みたいだ
な。」
「ファンネルってことか…よし、ならここは私の出
番だね!」
「やるなら早くしてくれ。あと範囲絞れよ」
「わかってらぁ!」
すぅ、と澪が大きく息を吸い…
「ギアチェンジ!マテリアルストライカー!」
バカでかい台詞とともにポーズを取ると澪の背後に朱、蒼、翠、茶、金の5色の球が顕現、澪の身体に取り込まれる。
「相手の数が多いなら吹き飛ばしてやるぜ!喰らえ
ぇッぬぅぉぉぉぉぉ!スラッシュハリケーン!」
突き出した左右の手から2つの巨大な竜巻が放たれる。その竜巻は怪物の分体のみを巻き込み、軌道を変え、空に向かって上がっていく。
「これで終わりだァ!サンダースラッシャー!」
放電しながら光速で飛ぶ雷の刃を竜巻に投げ入れると刃が分裂し、竜巻に囚われた分体を切り裂く。
「ファンネルは倒した!あとはー」
ーーーーー!
再び怪物の咆哮。
すると本体から更に分体が放出される。
「まぁだやんのぉ!?」
「増えきる前に倒せばいい話だ、分体は他の奴ら
にやらせて俺等は本体を叩くぞ!」
「了解!」
唖然とする他の勇者を余所に本体へ向かって駆ける。
ーーーー!
こちらが仕掛けると気づいたのか、怪物は咆哮を上げながら突撃する。
「澪!」
「こんのぉ!フレアドライブッ!」
澪の焔を纏った拳を怪物は両腕の盾のように厚い甲殻で受け止める。
その隙を逃さず、地を蹴り怪物の背に周り、黒曜斬鉄を鞘から抜きその重さのまま振り下ろす。
ーーーーー!
背部の甲殻ごと貫通して背中に大きな切り傷が出来る。
ーーーーーーーーーー!
ヘイトがこちらに向き、怪物が腕を振り回す。
「ッ…そこ、だッ」
怪物の腕の甲殻を黒曜斬鉄で受け流し、そのまま切断する。
ーーーーー!
更に激昂し、もう一つの腕を振り回すが、それを回避し、黒曜斬鉄で切り落とす。
「打ち上げるぞ!」
「わかった!」
本体を守るべく分体が本体の両腕部に集合し、両腕が再生するが、その腕が防御に回される前に…
「打ち上がれぇッ!アースファング!」
澪の足元から空に向かって隆起する地の牙と共に魔力を込めて硬質化した霊布を巻いた左拳でアッパーを決める。
ーーーーー!
再生した腕を上手く扱う前に同時攻撃を喰らい、怪物が数メートル程打ち上がる。
「今だ、澪!」
「ギアチェンジ!アブノーマリティインパクト!」
台詞とともに澪は半身に構え、左手を突き出し右手を握り引き絞る。すると、まるで自分なにかの機械のように澪の右腕に半透明な分厚いロボットの腕が現れる。
「喰らえッ!メガトン!パァーンチ!」
凄まじい出力と質量をもった拳が、落ちてきた怪物に直撃する。
ドゴォォォォォォォォ…
ミサイルが落ちてきたのかと言わんばかりの爆破音と爆風が澪を中心として巻き起こる。
そして。
空の色が再び反転する。
ギギギ…と音を立てながら空が歪み、元の空に戻る。
「…終わったな。」
爆心地を見れば、怪物を粉々にしたであろう本人がふへぇ…つかれたぁ…と間抜けた声を出しながら盛大に腹を鳴らす澪がいた。
本当に終わったな…
そうして、初出撃は成功に終わった。
ーーー???ーーー
「…ん…」
目を覚ます。
「ここは…あの街…」
これで何回目だろう…いや、もう…覚えていない。
ほとんど記憶が焼けている。
「…あと、何回…できるのかな。」
いや、そんなことを考えている場合ではない。
ーー場合だけど。
でも、そんなことはどうでもいい。
今度こそ、今度こそやりきらないと。
そのためには…
「…お兄ちゃん…」
連れて行かないと。誰でもいい訳じゃない。
あと1年。あと1年以内に強くならないと。
だから、だから…
「…私がとめるんだ。やるんだ…皆の、日常を壊さ
ないためにも…私が…」
そうして私は傷だらけの仮面を被る。
そして…まずは、彼女に遭わないと…
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