第4話 Vtuberの設定を決めよう

合格通知がきて約1ヶ月間、俺たちと事務所で何度も書類のやり取り、事務所と学校とのやり取りを重ねた。


成人以下の年齢は必ず親の同意が必要である。


俺の親は案外喜んでいた。


やりたいことが見つけられたのはいい事で、無理だったら辞めればいいと、勇気づけてもくれた。



瑞希先輩は親と揉めたそうだ。

瑞希先輩は高校3年生、大学受験が控えているからだ。


先月の8月の模試で全国100位以内なら認める、そしてVTuberをやりながらも必ず大学に行く、これを提示され、瑞希先輩はなんと全国16位だった。


これには親もびっくりした様でこれからの活動も応援してくれているようだ。


俺たちの学校、私立橘高校は偏差値60以上。


橘高校の生徒会長はこの高校で1番頭のいいやつが選ばれる。


さすがは橘高校現生徒会長


それにしても8月模試で全国16位は学校全体でもかなりの快挙だったようだ。



千冬が憧れている部分は瑞希先輩の頭の良さも含まれているんだろうな。


千冬は祖父母と暮らしているため、VTuberという文化の説明に苦戦したと言っていた。



学校からの反応は、瑞希先輩が居るなら大丈夫だとなんとか収まったらしい。

俺たちの活動を公にすることはない。


まさか事務所から学校に連絡するとは思わなかったが、いわゆる身バレをした時に学校側から退学等を防ぐためだった。


さすが大手企業。学校側からの苦情が入る前に先に手を打っている。1度こっちで扱うと決めたら全力で周りを固めるんだな。


親の了承もかなりこれがデカかった。



「ふぅ…。」



「え、今遥斗くんため息ついてなかった?」

「それバッチリ聞いた。」「イケメンがなんか真剣に考えてる姿破壊力えぐい」「てか眼鏡がずるすぎるわ!!イケメン+眼鏡=はい無理」




「あ、はると先輩いつものわかってないやつですね。」


「あ?千冬何がだよ?」


「あ、こっちもでしたね」


「なにニヤニヤしてんだよ…。そんなことより、ちょ、はるとぉー!!こっちこっち!!」


翔斗は千冬を呼びに行くと言って席を外していた。


「案外早かったな…。」


俺は自分の席を外して廊下に向かう。


「え?!千冬たん!!」「え?なんで??!!ここ2年の階だよ!!」「ちふゆちゃ〜ん♡♡♡」


「はは…きちゃいました♡」


そっからの女子の悲鳴はBGMと化し俺たちは本題に入った。


「明日事務所にイラストと設定資料もらうじゃんか。そんときの持ち物なんだけど〜……」




「…じゃ、これでOKっと。瑞希先輩は今忙しいから俺から後で伝えとくわ。」


「サンキュ。」「ありがとうございます。」


「この後は?2人はもう帰んの?」


「俺はお前待ってただけだからもう帰るよ。」


「おっけ。明日な!」


「僕も春斗せんぱいとご一緒にさせてもらいます」


「じゃーな!また明日〜!!瑞希先輩には伝えとくから!」


「ありがと。お前も程々に帰れよ。」




千冬とは本の話で盛り上がった。


「…っていうさすがSFでしたよねー!…っどうします?明日僕たちの誰かがこの主人公のヴァンパイアキャラだったら笑」


「ははっ。いや、それはぶっ飛びすぎだろ笑」


「ですよね〜笑 さすがにないですよね〜笑」





「…え?」


「ですから城田さんにはヴァンパイアモチーフのキャラクターでお願いしたいなと…。」


━━━━━━━━━━スクナギプロダクション現在


「っふ…ん"ん"……ふふww」


「何笑ってんすか!遥斗せんぱい!!」


千冬は顔を真っ赤にして俺に怒った。


「なぁにぃ〜?2人だけのナイショの話?」


「…っww…ですww」


「もしかして予想されていました?笑」


「…いえ、大丈夫です。」


千冬は顔を真っ赤にして静かに俺の足を踏んだ。


「…ごめんごめん…ww」



「城田さんの声もそうですし、見た目からも少しアイデアを頂きました。

普段はご自身の容姿から何かアイデアを貰うことは少ないのですが…。必ず女性ウケしますし、城田さんの話し方とヴァンパイアというキャラクターのギャップを全面に出していけたらと思います。」


「…正直に申しますと、今回4キャラクターとも皆様の容姿からアイデアを頂いたものもあります。城田さんはこのメンバーの中でも1番年下なので、そこも活かして欲しいと思っています。1番年下なのに、色気のあるようなキャラクター設定にしています。」


「…わかりました」




「では次に夏目さんですね、狼男のキャラクターになっています。」


「へぇ!狼…!かっけぇ!」


「…動物っぽいバカってことですよ」


「ち〜ふ〜ゆ〜?wwお前今何言っても負け惜しみにしか聞こえないぞぉ〜?」


「っるさいです!」


「確かに…金髪ですね、このキャラクター。俺っぽい!八重歯とかあとこれも…」


「はい、夏目さんはこのメンバーの中でも特に天真爛漫という印象がすごく強いです。



一番最初にも言いましたが、この4人のキャラクターは全てハロウィンモチーフにしています。



その中でも夏目さんは狼男がピッタリですね。喜怒哀楽が分かりやすく、その度に耳や尻尾に変化があるので、観ている視聴者の方が楽しいと思います。」



「動物って感じだもんね翔ちゃん!たまに尻尾見えてるときあるもん!」




翔斗が狼男、千冬がヴァンパイア確かにピッタリ。


「先輩…それ褒めてます?」


「褒めてる褒めてる〜♪」


「っ…でも!真剣に考えて下さってありがとうございます!」


「いえいえ、それがお仕事なので…!夏目さんの素直をそのまま活かして欲しいと思っています。」





「そして秋山さんには夢魔をイメージしたキャラクターを提案させて頂きます。皆様、夢魔をご存知でしょうか?」


「はい、知っています。」


そう答えたのは千冬と瑞希先輩


「む…ま?」


そう答えたのは俺と翔斗だった


「…夢魔というのはですね、悪魔の一種なんですが、主に女性が寝ている時に襲う夢の中に現れる悪魔でして…。女性版ではサキュバスと言われています。」


「サキュバス?」


「まだ翔斗せんぱいには早いですね。」


「ああ?」


「後でこっそり教えてあげるね♡」


「はぁ…」


この後夢魔の存在を知って翔斗は発狂するとこになるが…


俺は未だによく分かっていない


「え、それって男の夢の中も入れますか!?」


千冬が騒ぎ出した。


「はい、そこが今回の狙いです。男女問わず夢の中に入っていける夢魔で、まだやってみないと詳しくは分からないですが、男性票をかなり占めるような気がします。」


「なるほど…。」


「髪の毛も秋山さん同様ピンクモチーフにして秋山さんの普段の声で思い切り誘惑して欲しいキャラクターになっています。」


「…よく分かってるじゃん…何この判断能力…」


「なぁ〜に?ふゆちゃん?嫉妬してんの?かわいいね〜♡」


「っ…してません!!瑞希せんぱいによくお似合いのキャラクターですね!!」


投げやりにも聞こえた千冬の反応を見る限りこのキャラクターと瑞希先輩はよく合っているのだと思う。


いつもあれだけ慕っている千冬がこの数ヶ月で瑞希先輩の性格をピタリと当てられて嫉妬しているんだろう。



「…最後は俺か…」


「はい、夜咲さんには…黒猫モチーフのキャラクターです。」


「くろ…ねこ…」


「はい、黒猫というキャラクターは巷ではツンデレという部類に入っています。十分夜咲さんの性格と合うと思っています。」


「俺が…ツンデレ…」


照れる時なんかあるか?ツンツンしてるとはよく言われるが…


「もちろん夜咲さんが普段からしている眼鏡はそのままこのキャラクターもしています。夜咲さんの性格的にクールなイメージがあります。夜咲さんは本当にそのままで配信されて問題ないと思います。

先程夏目さんに言いましたが、耳と尻尾がついている分感情が目に見えてわかります。ので…」



「いや、待ってください。俺は…いや、僕は翔斗みたいに表情が豊かではないので、耳とか尻尾とかついても変化ないと思います…。だから面白くない…気がします…。」


「はい、ですから…です。

現段階ではあまり自分自身のことをわからないまま進めて頂いた方がよろしいかと。このまま私がはっきり申し上げますと意識されるのではないかと杞憂しています。


視聴者の方に言って頂いた時に初めて自分の性格に気付く事が、配信の楽しさであり、それこそが視聴者と造り上げていくということです。」


「はぁ…なるほど…。?」


「ピッタリだね遥ちゃん!」


「僕もそう思いますよ。」


「俺もそう思う!」


「翔ちゃんほんとに分かってる〜?笑」


「いや、遥斗の黒猫の性格とかより‪︎︎"視聴者と造り上げていく"はマジでそう思う!そう思います!」


「はい、なによりVTuberであり配信者ですからもちろん皆様も同じです。視聴者の方ありきでお仕事がなっていますから後でも言いますが、視聴者の方達と楽しむことを忘れずに。」


「そして、このキャラクターたちの名前ですが、皆様共通して春夏秋冬が入っていますね?本名の方に。」


たしかに…。言われてみれば…


俺が︎︎夜咲"︎︎はる"︎︎と

︎︎"︎︎なつ"︎︎め翔斗

"︎︎あき"︎︎やま瑞希

城田ち"︎︎ふゆ"︎︎


「なのでその要素は入れたいと思っています。どの季節も欠けてはいけないですから。」


「なので…」





━━━━━━━━━━スクナギプロダクション帰り道



「うわぁ、まだ慣れねぇこの名前…」


「でも、ふゆちゃんとはるちゃんは今まで通り呼べるねー!」


「僕は瑞希せんぱいって呼びたかったです…。」


「そんなの学校でいっぱい呼んで?お仕事の時は秋せんぱい?秋くんでもいーよ!」


「っ!!!!くんなんて!!だめです!!ぜぇっーたいだめ!!!」


「えぇ〜?そう?」


千冬が頭を上下に激しく振る


「そっかぁ…いつか楽しみにしとくね♪」


「せんぱぁい…今日僕の夢の中に来てくれますか?」


「お前何言ってんの?」


「あ、ほんとだ!む…ま?教えてくださいよ!」


「いーよ♪こっちおいで翔ちゃん…じゃなくて世夏くん」


「狼魔…でもいいですよ!」


「ドヤってんのきっつーおぇー」


「よぉーし!冬雪こっちこぉーい!」


「もぉー!その名前で呼ばないでくださぁい!」


「慣れないうちは事務所に入ったら名前を変えて呼ぶ。そう言われただろ?規約にも書いてたぞー。ふ・ゆ・き!」


「そうでしたねー!ねこはるせんぱい!!」


「やっめろ!!」


俺たちは8期生として10月にデビューする。


━━━━━━━━━━━━━━━

猫番 春 ねこは はる:黒猫

狼魔 世夏 ろうま せな:狼男

夢日 秋 あすな あき:夢魔

一 冬雪 にのまえ ふゆき:吸血鬼

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