第53話 デート 茨城冬香part
【冬香side】
そ~っと、
私とのデートの時間まで、もう少しあるけど……
まだ、兄さんは寝ているようです。
起こさないように、静かに布団をめくると寝ているのは、兄さん一人だけでした。
どうやら、さくらちゃんは兄さんの布団に潜り込んでいないようです。
流石に、お姉ちゃんからの説教が効いたのでしょう。
「う、うわぁーー! ろ、6を9にーー!! だ、駄目だ、超人強度が足りないッ!」
いきなり、兄さんが絶叫してガバッと身を起こしました。
ハァッ、ハァッ!
「何処だここは? リングじゃなかったのか? 俺は生きているのか?」
兄さんは、股が裂けていない事を確認し、次に首、腰と順に手を触れ、特に異常が無い事を確認した兄さんは、ひとまずホッと息を吐いた。
まったく、私だからいいものの、他の人が聞いたら変人だと思われてしまいますよ。
この世界には、アノ超人の漫画もアニメも無いのでしから……
同じ世界から転生してきた私だからこそ、理解するんですよ、兄さん。
「あれ……冬香、何で僕の部屋に居るんだ ?
あ、ああ、夢か。そ、それもそうだよな。
この世界でキン肉バ◇ターなんて喰らうはずがないもんな。
……それにしても恐ろしい夢だった。
俺は何者かにキン◌バスターをかけられて、もう少しで首折り、背骨折り、股裂きの刑に処される所だったんだよ ! 」
……どうやら、すっかり忘れているようですね、私とのデートを。
「普段のおこないが悪いから、そんな夢を見るんですよ。
起きたのなら、顔を洗って着替えてくださいね。
予定より早いですが、出かけますよ 」
兄さんは、まだ頭がぼんやりとしたまで、少し眠そうな目をこすりながら立ち上がりました。
「え、あ、うん。そうだな、顔を洗う。ちょっと待ってくれ」
そう言いながら、兄さんは浴室に向かいました。
私は一人で部屋に残され、兄さんの部屋の模様替えされた様子を眺めていると、昔を思い出しました。
どんなに歳を重ねても、兄さんの部屋の隅には、いつも漫画やアニメグッズが少しづつ増えていくのが楽しみでした。
数分後、兄さんが戻ってきました。髪を軽く濡らし、顔を洗ったようでスッキリとした表情をしています。
「すまない、ちょっとぼーっとしてた。デートだったな、冬香。準備は大丈夫か?」
「はい、私は大丈夫ですよ。今日はどこに行くのがいですか?」
兄さんは一瞬考え込んだ後、にっこりと微笑みました。
「そうだな、今日はお前の好きなところに行こう。
それから、昼からは特別なカフェに行って、お前の好きなスイーツを食べよう。どうだ?」
私は兄さんの提案に嬉しくなり、顔がほころびました。
「それ、とってもいですね!」
兄さんと手を取り合い、家を出ました。
今日は少し肌寒いけれど、兄さんと一緒ならどんな寒さも感じません。
私たちはまず、私がよく行く本屋に向かいました。
兄さんは、私が漫画や本を選ぶのを隣で楽しそうに見ていて、時々、面白そうな本を見つけては「これはどうだ?」と勧めてくれました。
そうして私たちは昼過ぎにその特別なカフェに到着しました。
外観は古びた洋館を思わせる、どこか懐かしい雰囲気が漂う場所でした。店内は心地よいジャズ音楽が流れ、温もり溢れる照明が柔らかな空間を作り出していました。
「この店はどうやら、新しくできたカフェらしいんだ。雑誌で見かけてね、冬香が喜びそうなところだと思って」
と兄さんは嬉しそうに説明してくれました。
私たちは店員が案内する席に着き、メニューを開いてみると、様々な種類のスイーツと茶葉から淹れた紅茶が並んでいます。
特に目を引いたのがショーケースに並ぶ季節限定のスイーツたちで、見た目も華やかで食欲をそります。
「どれにする?」兄さんが問います。
「うーん、全部美味しそう……でも、あのレモンのタルトとアールグレイの紅茶がいかな」
と私は迷いつも
注文を済ませ、兄さんと二人、窓際の席でいろいろな話をすることに。
「冬香は最近、学校で何か面白いことあった?」
と兄さんが話を振ります。
「うん、実はね、新しい文学クラブに入ったんだ。
色々な本を読んで、それについてディスカッションをするのが楽しいの。
兄さんも時間があれば、一緒に読んでみない?」
私は兄さんに文学の魅力を語ります。
兄さんはいつも私の話を真剣に聞いてくれるので、話していると時間が過ぎるのを忘れます。
やがて、注文していたスイーツと紅茶が運ばれてきました。
レモンタルトは見た目通りの鮮やかさで、一口目から酸っぱくて甘い風味が口いっぱいに広がります。
アールグレイの紅茶は香り高く、レモンタルトとの相性も抜群です。
「これは本当に良い選択だったね。美味しいよ」
と兄さんも満足そうに話してくれました。
そんな兄さんの笑顔を見ると、私も何だかとても幸せな気持ちになります。
食後、カフェを後にした私たちは、ふと立ち寄った公園でしばらく散歩を楽しみました。
木々は静かに風に揺れ、小鳥のさえずりが心地よいメロディを奏でています。
「ねぇ、兄さん。今日は本当に楽しい一日をありがとう」
と私が感謝の気持ちを伝えると、兄さんはにっこりと笑って、
「いや、俺こそだよ。お前と一緒にいるといつも新鮮な気持ちが湧いてくるんだ」
と優しく答えました。
空が徐々にオレンジ色に染まり始めると、私たちは家に向かうことにしました。
今日のような日がいつまでも続くよう、私たちはしっかりと手を握り合って、夕暮れの道を歩いて帰りました。
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