第54話 デート 埼玉愛part

【愛side】


 やっと、やっと私の番、恭介とのデートの日が来ましたわ。

 自分自身のくじ運の悪さを何度、呪ったことか……

 同じ三つ子にも関わらず、豪運の舞、強運の美衣と比べて私の運の無さよ。

 見かけは一緒なのに、中身は結構違っていたりする。

 比較的に真面目な舞、要領のよい美衣……

 同じ三つ子なのに、長女だからという理由で損をすることが多い

 これも性格だからなのか、長女ゆえの責任感がそうさせるのか、恭介とのデートも事前にリサーチ済みである。


 幼馴染みライバルとのデートでは、まだ映画に行ってないことが判明している。

 同じ映画を見て感動を共感したら、好感度も上がるはずだわ。


 ちょうど、新作映画も上映しているから話題性もある。

 本来ならホラー映画でも見て、怖がったフリをして密着するのもアリだと思っていたけど、当の本人である恭介自身が大の怖がりだから、この手は使えない。


 今、話題の『猫の惑星』を見るかヒーローモノの『魔王戦隊 ゴオニンジャー』にするか迷うところだわ。


 結局、『猫の惑星』は話題性と柔らかなストーリーで恭介をリラックスさせるには完璧そうだし、『魔王戦隊 ゴオニンジャー』はアクションが多くて、緊張感を味わえるかもしれない。

 どちらも魅力的ではあるけど、恭介の反応を見て決めることにしたわ。


 デート当日、私たちは映画館に早めに到着して、ポップコーンやジュースを買って席についた。少し緊張している様子の恭介に、


「どちらの映画が見たい?」と尋ねてみた。


「えっと、実は……その、『猫の惑星』が面白そうかなと思って…」


 と恭介が答えた時、彼の顔が少し緩むのが見えた。

 彼が選んだのは予想外だったけれど、彼が楽しみにしているならそれで良かったわ。


 映画は想像以上に面白く、猫たちの冒険に二人で夢中になった。

 特に映画の中の小さな猫のキャラクターがとても可愛らしかったので、映画が終わったあともその話で盛り上がった。

 恭介がこんなにも話しやすいとは思わなかったし、彼の笑顔もまぶしかった。


 映画館を出た後、私たちは近くのカフェでお茶をすることに。

 カフェでは、映画の感想を話し合いながら、これまでの幼馴染みとしての思い出や、これからのことについても話が広がった。

 時間が経つのを忘れてしまうほど、二人の会話は自然で楽しいものだった。


 デートが終わる頃には、恭介から


「また映画見に行こうよ」


 という言葉が聞けたのが何より嬉しかった。

 私も「いいわね、次は何を見ましょうか?」


 と笑顔で応じた。

 この日が、私たちの新たな気持ちの始まりであることを、私は願っていた。


 ◇◇◇


 デートの後の数日間は、お互いに忙しさにかまけてなかなか連絡を取ることができなかったが、恭介からの一通のメッセージがすべてを変えた。


「今度の休み、一緒に海に行かない?」


 海へのお誘いは、まさに夏の風物詩。

 私は心の中で跳ね上がる気持ちを抑えつ、冷静に返信した。


「楽しそう!いいわね、海の準備はお任せしてもいいかしら?」


 恭介の返信はすぐに来て、彼の期待とワクワクが伝わる内容だった。


「もちろん、ビーチバレーや水中メガネも準備しておくよ!」


 海の日が近づくにつれて、私たちの会話は次第にその日のプランでいっぱいになった。

 どんな水着を着るか、どんなお弁当を持っていくか、そしてどんな楽しいアクティビティをするか。


 とうその日が来て、私たちは早朝から車で海へと向かった。

 車内では恭介が用意してくれたプレイリストが流れ、二人で歌ったり、時には映画の話題に戻ったりと、とても楽しい時間を過ごした。


 海に到着すると、すでに多くの人たちで賑わっており、私たちも早速、場所を確保してタオルを敷いた。

 恭介が言っていたビーチバレーを始めると、他のグループも参加してきて、まるで小さなフェスティバルのような雰囲気に。


 昼下がりには、二人で海に入り、波と戯れながらお互いの幼い頃の話をした。

 水しぶきをあげる度に、恭介の笑顔がより明るく輝いて見えたわ。


 夕方には波の音を聞きながら、砂浜に座ってサンセットを見た。

 夕日が海に沈む景色は、どんな映画のワンシーンよりも美しく、心に深く刻まれたわ。


 最後に恭介はこう言った。


「今日は本当に楽しかった。愛、君ともっとたくさんの場所へ行きたいな。」


 私の心は高鳴り、彼の言葉にしっかりと応えた。


「私もよ。これからの季節、一緒に色々な思い出を作りたいわ。」


 そして二人は、これからの未来へ想いを馳せながら、手をつないで砂浜を後にした。

 この日の出来事は、間違いなく私たちの間で特別なページとして記懶されることだろう。


 ◇◇◇


「というを見てしまったわ……」


 昨日のデートの後、あまりにも楽しかったので夢を見てしまい、寝言を舞や美衣に聞かれてしまい、何があったのか事情聴衆をされてしまったのだ。


「「愛ちゃん、妄想し過ぎ ! 」」


 二人して同じ顔、それも私と同じ顔で言われると、妙に腹が立つ……


「だいたい、私達も恭介もなんだから、車の運転なんて出きるわけ無いでしょうに ! 」


 舞が的確に嫌みを言ってくる。

 夢なんだから、そんなの知らないわよ !


「愛ちゃん、可愛い~ ! 」


 美衣にいたっては、からかってくる始末。

 確かに三つ子だけど中身がまるで違う私達、恭介を落とせるのが私達三人の中だったら……共有することを提案しようと思う。


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