第48話 デート 埼玉美衣part

【美衣side】


 恭介のことは嫌いじゃ無い、むしろ好きな方だけど……

 どちらかと云うとLOVEよりLIKEなんだよね。

 まあ、他の男どもより遥かにマシなだけなんだけど。

 私の分のデート回、正直、愛ちゃんか舞ちゃんにあげても良かったのだけど、半分コするわけにもいかないし、これが切っ掛けで、姉妹喧嘩なんて見たくは無い。

 私達は仲良し三姉妹なのだから……


 恭介も連続のデートで大変そうなので、サクッと終らせようと思っていたら……


「おうおう、姉ちゃん。 可愛い男の子を連れているじゃないか ! 俺達にも分けてくれよ 」


「アタシらの方がスタイルもいいっしょ !」


「ウリウリィ~、ウチの胸、好きにしてもいいっすよ ♪」


 福岡姫子ふくおか ひめこ九頭龍珠緒くずりゅう たまお牛込カスミウッシーが変装して出てきた。

 コイツら全然、懲りてないわね……前言撤回 !

 以前、『邪魔はしないけど応援もしない』と言ったけど、せっかくのデートで私に恥をかかせる気なら容赦しないわよ !


「恭介、行こう ! 」


 戸惑っている恭介の腕を取り強引にをして歩き始めた。

 嫌がる素振りを見せず、私に併せて歩いている姿を見て、後ろの三人の視線が突き刺さるのを感じた。

 ……アンタたちが悪いんだからね、恋愛バトルの舞台から降りた私を巻き込んだのだから。

 売られたケンカは買ってやるわ、それが


 私と恭介の後を追いてくる、姫、クズ、ウッシーたち。

 まったく、あきらめの悪い娘たちね。


《恭介、私に併せて !》小声で言うと、私の意図を理解した恭介は小さくうなずいた。

 恭介の腕にしがみつくように密着すると、後ろの三人は声にならない声をもらした。


「「「◌◇●◆○……」」」


 見える訳では無いけど、口をパクパクさせて驚いているのが伝わる。

 このまま、ウインドショッピングも悪くないけど、いい加減埒があかないわね。


 パタン !


 私達の直ぐ前にタクシーが止まって、中からお客さんが出たのを見計らい恭介の手を引っ張りタクシーに乗り込んだ。


「ごめんなさい、運転手さん !

 私達、悪いハングレのレディースに追われているんです。

 直ぐに車を出してください ! 」


 運転手さんは怪訝な顔をして振り返ったけど、私達が乗り込んだ後ろから、ハングレに変装したクズちゃん達を見て、ギョ とした。


「よし、わかった ! オイチャンに任せな ! 」


 私達に追い付こうとした三人が走り出したのと同時にタクシーは出発した。


「災難だったな、お嬢ちゃん。

 せっかくの彼氏とのデートだったのによぉー !

 安全な所で下ろしあげるからな。

 な~に、料金はオマケしてやるからよ 」


 よく見れば、料金メーターの棒を下ろしていないからか、料金メーターが動いていない。

 あちゃー、運転手さんには悪いことをしたかなぁ~と思う一方で、この逃亡劇がスゴく楽しく成っている自分がいた。



 タクシー会社と運転手さんの名前はチェックしたから、後から御礼の電話をお母さんにしてもらおう。

 ハプニングがあったデートだけど楽しかったのは事実。

 後で、愛ちゃんや舞ちゃんに自慢してやろう。


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