第11話 夢

夢を見た。

寒い寒い冬の夜。

あの夜だ。

体の感覚がなくなり、目の前は夜の暗闇より濃くなった。

自分の心臓の音が聞こえる。

ひどくゆっくりと。

父親と同じ部屋にいるより、閉め出された寒いベランダの法が安心できた。でも、体はそうじゃないらしい。

死ぬのかな……そう思った。

悲しみも絶望もなかった。

そこで、意識は途絶えた。


光は、暗い洞窟のような場所にいた。

ゴツゴツとした壁。

不器用にくり抜いたように続く洞窟の通路。

行き止まりだと思われる明るい光が遠くに見える。

そこを目指して歩くことが決まっている。

1歩づつ、ゆっくり。

明るい光は、だんだんと近づいてくる。

まぶしい。

そして、あたたかい。光さす方に更にあるく。

陽だまりのように柔らかい光が降っている所に誰かいる。

後ろ姿。教室にあるような椅子に座る少女がいる。


光と同じ年ごろだろうか。

しゃんと背を伸ばし座っている後ろ姿。

その姿を見て、なぜか光は安心する。

左右にドアが、ひとつづつ。

右のドアに手をかける。音もなく開いた。

広くも狭くもない部屋。

窓は無い。

中央に古い木製のベッドがあった。

真っ白な布団が敷いてある。

掛け布団もきっとフカフカだろう。

ふんわりとふくらんでいる枕。

当たり前のように、光はベッドに潜り込んだ。

これで、安心。

これで、大丈夫。

これで、眠れる。

小さな吐息をひとつ吐き、光は微睡みはじめ、やがてあたたかいベッドで眠った。


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光さす方へ 黒川 賽 @kurokawa-sai

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