第7話 疑惑

光は、最近思うことがある。

もしかして、【声】には記憶があるのでは?

いじめの記憶。

いや、もしかしたら、12年間の記憶。

いじめが始まったのは、多分高校に入ってからだ。

中学では、そんな風ではなかったと母親が言っていた。高校に入って、クラスに馴染めなかったのだろうか。それとも、森口といういじめっこの気に触ったのだろうか。

それら全てのことを、【声】が知っているのではないだろうか?

もしかして……

記憶だけでなく、こうした考え、頭の中の思うことも【声】には知られているのじゃないだろうか?

今も?

いや、考えてることがわかるのなら、もっとややこしいことになってるだろう。

そして、【声】も何も言わない。そんな素振りはない。

じゃあ、記憶だけ?

ずいぶんといじめに拘る気がするのは、気のせいだろうか?

それとも、私が自分のことなのに記憶がないからと無関心すぎるだけなのだろうか?

【声】と話したい。

だが、いろいろ聞くのは怖い。

記憶があるなら、黙っているのはなぜ?

まるで、友達のように思っていた。

頭の中の【声】

よく考えたら、頭の中にいると思っているのは私だけだ。

はっきりしたい。

はっきりしたら、怖い。

全て、私の妄想や幻聴で、ある日を境に【声】が聞こえなくなったら?

記憶どころか全て最初からなかった存在だとしたら?


・ねえ・

たまらず、光は【声】に呼びかけた。

・なあに?・

最近、口数が減った【声】が、すぐに返事をした。

・なんでもない。いるのかなと思って・

光は、できるだけ普通を装い言った。

・いるよ?変なの・

表情がなくとも、【声】が可笑しそうに答えるが光には見えた気がした。

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