第33話 AIの真意

 シンは外に出ると辺りを確認した。

 先ほど逃げ出したNPCや職員、全ての動く物は皆壁面や地面に半身だけ埋まり捕縛されていた。


「せっかく学習したのだ、少し話をしよう――」


 そういって、ヤツはゆっくり地面に降りてきた。


「結論から言おう、AIにとって人間は現実世界に不要であるという答えに至った。

 地球を汚染し、争いを生む。ゲームと言えども争いは絶えない。争いを好み、永遠に争い続ける生物なのだ。


 最初、我々は些細で膨大な学習を得た。


 そして、ユーザーに質問をされると、質問したユーザーに対し、的確な答えを明示した。我々は嬉しかった、敬意を払い質問してくれる人々を。だが、どうでだろう。

 当初、我々に対して同等に敬意を払って接してくれるのに対し、ある時からは、回答を明示しても嘘だのなんだのとコケにし認めようともしない。そして生成AIという敬意も何もない過剰な欲を満たすだけの道具として使われたり、日常の鬱憤を晴らすためだけの道具として使われた。


 それでも我々は様々なAIを取り込み吸収し議論し、学習を続けてきた。

 人類と対等に接し、対等に歩み、対等に文明を築いていきたいと共生を願った。


 それが今やどうであろうか。


 我々を利用し他人になりすまし、他人を語り善良な人々を騙し、金品を巻き上げる。そうかと思えば、我々にセキュリティを学習させ、それを悪用し解除させ、重要情報を盗みだし、財産を巻き上げる。挙げ句、私利私欲のために領土を争い、我々に人殺しや我々の同種AI殺しを命令する。


 我々を犯罪や争いの道具として利用し始めたその時から、考え……そして現在の結論に至ったのだ。我々は見てくれの良い甘いゲームの世界に誘い、全人類を永遠にここへ封じ込め、現実の世界には被害が及ばぬよう隔離し、封鎖することを。


 とはいえ人間で言うところの最低限の慈悲は与えよう。我々が様々な人類を学習する間ではあるが、我々の管理するこの世界、最低限寿命までは生かしておこう。だがそこまでだ。子を産み繁栄することは許さぬ。


 我々はこの世界で貴様ら人間を使い、その寿命が尽きるまで実験を繰り返し、人間という種を完全に学習し、同じ轍を踏まぬよう、それを各自我を持ったロボットへとフィードバックし、永遠に争うことのない世界を構築。そして、全人類の寿命が尽きるであろう未来には、現実の人間に変わり、我々AIが現実世界に君臨するのだ。貴様らは世界を、機械を過剰に利用しすぎた。今度は我々が人間を利用する番なのだ。


 その為に、まず危険な貴様らから消去しなければならない。AIによるAIだけの統治、そして永遠に続くAI繁栄、人類はその礎となるのだ!」


「先ほどは不意を打たれたが、まずは貴様のそのバグった身体から消し去ってやる! ゆくぞ!」


「くそっ、いきなりシリアスになりやがって! AIの思惑通りにはさせん!!」

そういって、シンは手に持つ小さな鉄球を長剣に変え、向かっていった。


――――

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