第31話 向き合う2人

 無事にペンダントを回収した一行。

 いよいよ戻るというときに、グレーター・デーモンことグレオ(カタムキ貿易 営業本部長 冨田氏)と遭遇し、何故か一緒に旅をすることになった。


「はいはい、いきますよ。ブチョウ」


 そう言って立ち上がる冨田本部長であったが、改めてその身体のサイズの違いに驚く。

 冨田本部長はデカい。ブチョウですら185cmあるのに、それの1.2倍はあるのだ。


 ちなみに、冨田本部長はシンとの古くからの友人でもあり、かつては得意先のカタムキ貿易で手腕を振るっていた凄腕の営業マンであった。転生前の彼の身体は195cmだったが、今となってはそれ以上にデカい。今は職業がない――ので、仲間として活動するには、ギルドへ行って正式に登録しなければならない。


「そういや女神様はなんて言っていたんですか?」


「あれよ、アレ……なんだったかなぁ……。魔王倒して来いとか漠然としたことしか言ってなかったな……」


「なんだか適当ですね……。うちらなんてこの膨大な量のタスクをこなさないと世界滅ぼすとか脅してきましたよ」


 そう言って、冨田本部長にタスクリストを見せた。


「うっわ、なにこのエグい量……これ60日でこなすの?」


「一応、社員総出でこなしているとはいえ、全然進まない訳わけですよ……。第一うちらが受けているタスクですら数日かかるんだから現実問題無理。でも、その事の発端をふっかけたボス倒をそうにも、うちらも力不足なもんで、今は仕方なくこうしてタスクこなしながら鍛えてるって訳ですよ」


「なんだかなぁ……。まぁ俺も手伝ってやるから元気出せよ。そのついでに魔王も見つけられるかも知れんしな」


 そういって、冨田本部長は肩に手をかけると励ましてくれた。


「なんだか、すみませんね……変なことに巻き込んでしまって」


「いいって、ことよ。お前に作って貰ったツールのお蔭で今の俺があるんだしさ、いい加減仮を帰しておかないとって思ってたから、丁度良かったよ」


「それじゃあ、脱出しますよ。みんな固まってくださいね」

 そういってシンは『帰り玉』を取り出すと、地面に投ると煙は一行を包み込むと、地上へと転送された。


 ――――

 ――


 地上に出現後、例のごとくブチョウとミーナが合い向いに出現したためブッ飛ばされた。


 そんなことを他所に冨田本部長は手を空にかざし、溢れんばかりの光を体に受け、感動していた。

「う、おおぉ……。これが夢にまで見た外の世界……、なんと眩しく美しいのだ……!」


 一方、突如出現したグレーター・デーモンに驚き喚き命乞いをしているゴブリンたち……。

 例のごとく、首をアピールしながら横たわり、涙を流している者が殆どであったが、シンの説得のもと、なんとか落ち着きを取り戻したのである。


「いやぁ、大変でしたね。ブチョウ……ぶっ飛ばされたり、ぶっ飛ばされたり……」


「ぶっ飛ばされてるだけで、ほとんど活躍できなかったな……」

 肩を落とすブチョウ。


「そんなことないですよ。ミーナのスキルの糧になってますから。それとほら、冨田本部長さんだって助けられたじゃないですか。なんだかんだ言って、ブチョウの功績は大きいですよ」


「そうだぞ、お前が居なかったらずっと、あの暗闇を彷徨っていたかもしれない……。そう思うと少し怖かったな」

 そういって、冨田本部長はブチョウを励ました。


「そういや、ブチョウの報酬って何だったんですか?」


「あ? あぁ……、バットな……棘が生えたヤツな……」

 ブチョウはバットを取り出すと、シンに見せてきた。


「ま、まぁ……前より攻撃力高そうですし、よかったじゃないですか……」


「これじゃ球打てないだろ!」


「ん? ちょっ、ちょっとまって下さい、ここにボタンありますよ……」

 手に取ったバットを見るとグリップの所に少しだけ出っ張っているボタンが確認できた。


 バットをブチョウに戻した。

「お、ほんとだ……。ちょっと押してみるか……」


 ――シュッ


「お、棘が引っ込みましたよ!」


「なんだよ…ちゃんと打てるような形状になれるんじゃないか…」


 そう言うと、もう一度ブチョウはそのボタンを押した。


 ――バァン!!

 破裂音がしたかと思うと、棘が一斉に四方八方に射出された。


「バッボッ!!」「ゴブラッ!!」


 棘はブチョウとシンの顔を貫通した。後ろのスポーン地点からシンとブチョウが相向かいに出現した。


「いやぁあああぁ!!」×2


 スポーンと同時に殴り合うシンとブチョウ。それはそれは見事なクロスカウンターであった。


 ――ズシャァ


「なかなか良いパンチだったな……」

 横たわるブチョウは体を起こしながらシンに向かって言った。


「いきなり出現しないでくださいよ、全くもう……」


「いや、そりゃこっちのセリフだぞ。って、お前スポーン位置修正されたみたいだな」


「あっ。ホントだ! これで素っ裸で転送されることも無くなった訳ですね素晴らしい……。とはいえ、死に慣れるのは怖いところではありますが……」


 ブチョウは顔をしかめて云った。

「まぁな、俺も後何回リスポーン出来るかわからんしな……」


「しかし、それはそうとこの武器はダメですね……ドラク○のメガンテは味方巻き込まないから良いですけど、これはちょっと危険すぎですね。冨田本部長居なかったら全滅してましたよ」


 冨田本部長はとっさにユウとミーナの前に出ると、その棘から庇ったのだ。さすがは元営業本部長、素晴らしい配慮である。


「それじゃいよいよ冨田本部長の職業決めに、いったん街に戻りますか」


 そう言って一行はエーテル・ヴィルへと向かった。


 ――――

 ――

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