第3章 再び修正される世界

第18話 敵出現

「うぅ……。ふぁああ……。疲れていたはずなのに、なんだかよく眠れなかったな……。夜中は夜中で外からは電子音やらなにやら音がしていたし……」


 今は朝5時くらいだろうか、なにせ時計が存在しないのだが、体感的にわかる。なぜかこの時間になると自動的に目が覚める。昔は全然起きれなかったのに。


 目をこすって、ゆっくりと体を起こす……まだあたりは薄暗い。


 周りを見渡すと、ユウもミーナも寝息を立てて寝ている。そういや同じ部屋で女性と共に寝るとか、こんなシチュエーションは修学旅行ですら無かったな……。職場に入ってもご年配の淑女ばかりだったから、こういうのはちょっとドキドキするな……。


 って、また下手に興奮すると初期地点に戻されるから、今はあまり考えないでおこう。


 そうして、これから日差しが登らんとする薄明りの中、窓の外を確認した。

 我が目を疑った。昨日まで存在し建物は幾つか消滅していた。とっさに窓を開けると身を乗り出し、ギルドの方を見てみたが、ブチョウのいたずらでアホほど高かったビルのような木造建造物は正常な2階建て相当の佇まいとなっていた。


「ぶ、ブチョウ!? ブチョー!」

 早朝だというのに思わず叫んでしまった。その異変に気付いたのか、ユウとミーナが目を覚ました。


「う……ううん。なになに……? 何があったのシン?」

 そういって、体を起こすユウ。帯はしているが少しはだけた浴衣姿で起き上がろうとする。その神々しいばかり御身を一瞬だけ視界に入れるなり、後ろを向いてなんとか耐えた。


「く……、な……。だ、大丈夫だ……、あ……あまり近づくんじゃあない! 変な思考に入るとここでは体が崩壊してしまう!」

 そういって、ユウとミーナから距離を取った。


「へぇ……。崩壊させちゃおっか……?」

 ミーナが不敵な笑みを浮かべながらジリジリと近づいてくる――。


「い、いやっ。ちょ、ちょっと!」

 ずりずりと後ろに下がっていく中、縁側の窓に背が当たった。


「わたし、シンならいいよ――」

 ミーナは顔をほのかに赤くしながら、じっと目を合わせながら顔を近づけてきた。


「くっ、うああぁぁぁぁぁ!!」

(目をつむって、急いで関係ないことを考えるのだ。そ、そうだこういう時は、アレだ……アレ。唇とか体とか! アラダァアァァァァァ!! だめだシンの臓器で心臓とかアホかァァ 理性がスタンピードしてしまうワァァ!)


 両手で目を押さえ、いつもの電気ラケットに触れた時のような感覚を覚悟した。


 ――どれくらいだろう、10とか20秒近く身構えていた。

「って、アレ? 崩壊しないんですが! 崩壊しないんですが!!」

 思わず2回も同じこと言ってしまった。


 ミーナは離れると笑いながらちょっと残念そうに言った。

「あははっ。なぁんだ、崩壊しないじゃない。もしかして修正されちゃった感じ?」


 ユウは後ろでもじもじしていた。


「ふぅ……。スポーン地点に強制送還される身にもなってくださいよ、ペナルティだって何が付くかわからないし、ちょっと痛いし怖いんですよこれ」

 そう言って、膝に手をついて立ち上がろうとした。


 ――あいたたた……

 相変わらず腰だけは痛い。


 頭を下に向け、畳が視界に入る……ゆっくりと立ち上がろうとしたそのとき、ハラリとユウの帯が畳に落ちるのが見えた。ゆっくりと顔を上げると真っ白に透き通った脚がちらりと視界に入った。


 そして――


 ――ドシャァ……


「きゃあぁあぁぁぁぁぁ!!」

 二人が叫ぶと、突如巻きから脱出したブチョウが入ってきた。


「どうした! 敵でも出たのか!!」

 ブチョウの視界に入る『はだけたユウ』とミーナの分厚い本――


「あんたよ!!」

 間髪入れずにミーナが叫んだ。


「ち、ちょイブッ!!」

 ブチョウが廊下の方にすごい勢いで飛んで行き壁に叩き付けられると、ゆっくりと消滅していった。

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