最終話:束の間の平和。

すべての戦いが終わって神羅と阿加流姫に束の間の平和が訪れて

そして、庶民はなにごとも知らないまま、めでたい正月を迎えていた。


阿加流姫は着物を着て、神羅は紋付袴。

ふたり揃って初詣に来ていた。


「昨日、佐奈ちゃんのところに行ってきたんでしょ?」

「どうでした?」


「ああ、ずいぶん元気になってたよ・・・アカルによろしくって」


「佐奈ちゃんも初詣に誘ってあげればよかったのに・・・」


「誘ったさ・・・」

「そしたら、遠慮しときますって、まだ外に出たい気分じゃないんだって」

「それに俺とアカルの邪魔をしたくないってさ」


「そ・・・気使ってくれてるんですね」


「まあな」


「佐奈ちゃん、神羅のことが好きなんじゃないんですか?」


「たぶんな・・・」


「神羅は佐奈ちゃんのことどう思ってるんですか?」


「どうって・・・幼馴染かな・・・」

「俺にはなんとなく分かるけど、佐奈は俺を慕ってくれてると思う」

「ガキの頃から一緒にいたから分かるんだ・・・」

「でもその気持ちには応えてやれない・・・以前ならそれもありかなって

思った時もあったけど・・・今は無理だな」


「無理って?、どうしてですか?」


「俺といたら今度のことみたいに佐奈を危険にさらすことになるからな」

「今はとりあえず平和そうに見えるけど、いつ何時また夜の街を

アカルと一緒に新月丸ひっさげて走らなきゃいけない時が来るかもしれないだろ?」


「危険だろ・・・だから佐奈は俺から離れてるほうがいいんだよ」


「そうですよね・・・って」

「なに?私は、神羅といつもいますけど・・・危険じゃないんですか?」


「アカルと佐奈を一緒にしちゃダメだろ」


「アカルは心配いらないもんな」

「バカ硬い傀魔を真っ二つにした時は、カッコよかったぞ」


「私だってか弱い乙女です」


「そうか?まあそう言うことにしといてやるか・・・」


「わ、上から目線・・・亭主関白みたい」

「そういう自己中なところからレスってはじまるんですよ」


「なんだよ自己中って、おまけにレスって・・・まだなにもしてないのに・・・」


「あ、そうだ・・・ほれ、神羅に私から・・・」


そう言ってアカルは手提げ袋を神羅に渡した。


「え?プレゼント?」

「俺の誕生日でもないのに?」


そう言って神羅は手提げの中の品物を持ち上げた。


「なにこれ・・・」

「うそお〜」


「欲しかったんでしょ・・・私のパンツ」


「やめろよ」

「まだ、そこにこだわってるのか?ったくしつこいなあ」


「遠慮しなくていいですから」

「それ洗ってないですからね」


「まじでか・・・」


「私の匂いたっぷりついてますからね」


「毎回、俺をそうやってからかって楽しいか?」


「バカ硬い傀魔倒した時、見たくせに私のパンツ」


「み、見てないよ・・・眩しくて何も見えなかったわ・・・なに言ってんだよ」


「うそです・・・見ましたよね、白状しなさい」

「見たんですよね、ね、怒りませんから・・・見たって言って?・・・」


「なにお願いしてるんだよ」

「ほんとにアカルが眩しくて見えなかったの・・・」


「もし見えたら、見たんですよね・・・」


「見てねえっつうの、まじでしつこい、怒るぞ!!」

「お、おい、なんだよその変質者を見るような目は・・・」

「俺は別に最初っからパンツに関心があったわけじゃないからな」

「そもそもおまえが勝手にパンツパンツって騒いでるだけだろうが・・・」


「もういいよ・・・こんなパンツ返しとく」


「こんなってなんですか?」


「初詣に来て女モノのパンツ持ってるなんて、まじ変態だよ」

「とっとと参拝して帰ろうぜ」


「あのね、せっかく神羅のために着物着たんですよ・・・少しは綺麗とか

なんとか言ってくれてもいいと思うんですけどお〜・・・」

「見てないでしょ・・・私のこと」


「ちゃんと見てるよ・・・綺麗だよ・・・」


「げっ・・・おざなりな言い方・・・心がこもってません」


「めんどくさ・・・」


「なにを?」


「はいはい、きれいです、お嬢さん・・まるで舞妓さんみたいだね」

「これでいいか?」


「バカにして・・・」


「ほい100円・・・これ賽銭箱に投げて神様に無病息災、家内安全お願いして」


「え〜当たり前すぎでしょ、それ・・・」


「それでいいんだよ、他になにがあるよ」


「可愛い赤ちゃんに恵まれますように、とかとか・・・」


「なんだ?それ」

「なんでもいからさっさとお参りして帰ろう」


ふたりはラブラブカップルみたいに仲良く参拝した。

こういう平和な毎日がずっと続きますようにと神羅は願った。

アカルは神羅とずっといられますように、そう願った。


「さ、帰ろう」

「ほれ、手つなごう」

「迷子になるといけないだろ」

アカルは嬉しさが隠せないように満面の笑みで神羅に微笑み返した。


(な、なんだよその笑顔・・・可愛すぎるだろ・・・)


「あ、パンツやっぱり洗ってるほうがよかったですか?」


「またそれか・・・」


「神霊のパンツなんて滅多に手に入らないですよ」

「レアだと思いますけど・・・」


「パンツ、パンツって・・・ほんっとにしつこいぞ」


「ね、飛んで帰ります?」


「無視か?」


「いいよ・・・俺は歩いて帰るから」


「え〜歩いて帰るんですか?」

「あ、脚痛い〜」


「置いてくぞ・・・」


「あ〜〜〜ん・・・待ってください・・・」

「しんら〜」

「待てコラ」

「おい神羅!!・・・パンツあげないぞ」


これからも、この世のどこかで闇がうごめいているかぎり神羅と阿迦流姫は、

人々の平和を守るために日夜奔走していくことだろう。

平和でいることの大切さ・・・ふたりは笑顔の中で今の幸せを噛みしめていた。


完。


アカルがやたらパンツにこだわったのは僕のほんのたわむれです。


最後まで読んでくださってありがとうございました。

感謝です。m(_ _)m






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異界行彷徨奇譚。〜肝胆相照らす〜 猫野 尻尾 @amanotenshi

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