第17話:最後の戦い。

四体の傀魔は焼け焦げて死んでいたが残りの一匹はまだ生きてうごめいていた。


神羅と阿加流姫はビルから地上に降りてきた。


「雷神様の力を借りちゃった」


「なるほど・・・硬い金属には雷ってわけか?」

「なんでもできるんだな、アカルは・・・」

「でも、雷神って襖の中にだけいるのかと思ってた」


「襖の絵は、ちょっと失礼だよね、ちっとも似てないから・・・」

「って、そんなのんびり話してる場合いじゃないよ、まだ一体残ってる」


「こいつだけ特別みたいだな・・・雷も通じなかったみたいだし」

「それに、さっきの雷が落ちた時のどさくさに蛾非が逃げたみたいだ」


「まだ追えば間に合います」

「その前に、この強そうな傀魔も倒します」

「いきますよ・・油断しないように・・・」


強そうな傀魔は怒って滅多やたら腕をぶん回すのかと思ったら、冷静にそこに

立っていた。

気がつくと右手になにか持っている。


それは斧だった・・・。


「あれって斧だよな・・・」


「そうですね・・・普通カイライは武器なんか持たないんんですけど

進化してるんでしょうか?」

「やはり今までのカイライと違いますね」


さっきまで不動でいたカイライが斧を振り上げて襲ってきた。

図体がでかいくせに思ったより動きがはやそうだ。


阿加流姫は斧をよけたがその風圧は凄まじかった。

三日月丸をふるう隙さえなかった。

やはりいつもの傀魔より動きが数倍早い。


まともに斧の攻撃を受け止めたら三日月丸でも弾き飛ばされそうだった。

阿加流姫はいつもより早い動きで斧の動きをかわしながら傀魔の懐に入って

いった。


「アカル・・・俺はなにかできないのか?」


今は神羅の出る幕はなかった。


傀魔の動きも早かったが小ぶりなぶん阿加流姫の動きに傀魔の目がついて

いけなかった。

阿加流姫は隙をついてすばやく三日月丸で傀魔の左腕に傷をつけた。

切り落とすのは無理のようだったが傷をつけることくらいはできた。。

すごい抵抗が三日月丸を通して阿加流姫の腕に伝わってきた。


左腕は傷つけたが斧を持った右手がまだ残っている・・・。


阿加流姫は前回のように呪文を唱えて三日月丸を一回り大きくごつい薙刀に変えた。


傀魔は咆哮をあげて阿加流姫めがけてさらに斧をふりおろした。

阿加流姫はトンっと宙に浮かんで止まった斧の先に降りた。

間髪入れずそのまま斧の持ち手を伝って傀魔の手首まで行くと、そのまま

三日月丸で右腕を思い切り薙ぎ払った。

まるで曲芸師みたいだ。


しかし、かろうじて傀魔の右腕は切り落とされず半分くらいくっついたまま

血がダラダラ溢れt出た。

だが持っていた斧は地面に落ちた。


それでもやはり傀魔の皮膚は他のやつより硬かった。

それに再生も早かった。

左腕も傷は塞がろうとしていた。


阿加流姫であろうとも完璧とは言えなかった。

傀魔にもう一本腕が生えていたら苦戦したかもしれなかった。


なにを思ったのか、阿加流姫は神羅のいるところまで飛んで来た。


「やはりあいつは硬いです」

「私に考えが・・・神羅、ここまでいいですから新月丸を中段にかまえて

ください」


「分かった・・・ちょっと待って」


「早くしないとまたカイライが再生して斧で襲ってきます」


神羅はアカルの言う通り屋根の上まで来て新月丸を中段にかまえた。


「これでいいか?」


「はい、じっとしててくださいね、動いちゃダメですよ」


そう言うと阿加流姫は神羅の後ろに回って三日月丸を両手で平行にかまえると、

なにやた呪文を唱えた。

すると三日月丸の刃先がさらに大きくなって彼女の体ごと光り始めた。


「なにやってるんだ?」


前を見たままの神羅にはアカルがなにをやってるのか見えなかった。


「まっすぐ前を見ててください」

「いきます・・・神羅の肩と新月丸を借りますね」


そう言うと阿加流姫は神羅めがけて走った。

神羅の背後まで来ると、ふわと神羅の肩の上に乗った。

ちょこんと足をかけて前に飛んだかと思うと、そのまま新月丸の切っ先に降りた。

新月丸の刃先に降りた阿加流姫は新月丸のオーラをまとってさらに眩しいくらいの

光を放った。

そして一気にそのまま天空高く舞い上がった。

まるでスローモーションみたいに。


神羅は舞い上がる阿加流姫を見上げた・・・。


「眩しくて何も見えないや」


しばらくすると両手が再生して斧を拾おうとしていた傀魔が上を見上げて

動きを止めた。

と同時にすがさず阿加流姫が空中から舞い降りてきた。

すると三日月丸の眩しい閃光が一気に傀魔を捉えた。

傀魔はアジの開きみたいに真っ二つに割れるとゆっくり両サイドに倒れた。


つづく。


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