第14話:蛾非(がひ)

しばらくすると阿加流姫は何かを手にして現れた。


「鏡を持ってきました」


「そうか、異徊転魔鏡いかいてんまきょう・・・」


「私は自由に異次元へ行けますけど、神羅は鏡がないと無理ですから」

「この鏡を通って異次元に移動しましょ」

「さ、急ぎますよ・・・」


「え?どうやって・・・」


「瞬間移動と同じで私にくついてればいいんです」


神羅はすぐに阿加流姫の手を取って体を密着した。


阿加流姫がなにかを唱えると神羅と阿加流姫は小さくなりながら鏡に吸い込まれていった。

ふたりが現れたところは​今までいた職員室と同じところだった。


そして阿加流姫は異徊転魔鏡いかいてんまきょうを手にしていた。


「鏡を持ってきたのか?」


「私たちの元の世界に戻る時も鏡を使いますかね・・・」

「それに異徊転魔鏡いかいてんまきょうは、他にも役に立ってくれると思います」


「他の役って?」


「神がかりの鏡ですよ・・・そのうち使う時がかならず来ます・・・」


「ほんとに移動したのか?ここは?・・・来た職員室と変わってないけど」

「本当に異次元に来たのか?」


「大丈夫、嫌な臭いがプンプンしてます」


「うん、たしかに臭うな・・・」


「異次元なのに同じ世界にいるのか、俺たち」


「そうですよ・・・ここは異次元と言ってもパラレルワールドです」

「私たちの世界と並行して存在する別の世界(時空)です」

「理論物理学の世界でもその存在は認められています」


三日月丸が光を放つと椅子に縛られた佐奈と背後に立っている板額先生が見えた。


「あ・・・比古神君・・・助けて」


「佐奈、大丈夫か?」


(サナって?・・・ああ・・・さな・・・そうだ神羅の寝言の人?)


阿加流姫はそう思った。


「話は終わったか?」

「くっ、くっ、くっ、おびき出されおって・・・」


「なに?」


「罠だとも知らずに・・・のこのこと・・・」


「お前は誰だ?」


「板額 涼子・・・またの名を「蛾非がひ

「もっとも本物の板額はとっくに死んでるがな・・・」

「よろしくね・・・比古神君」


「佐奈を離せ・・・」


「おあいにくさま・・・」

「この子が傀魔に食われるのを見てなさい」

「食われて恐怖に歪んだ魂を私が美味しくいただく」


「お前が、傀魔を操っていたのか・・・」


「このまま傀魔を操っていてもよかったんだけどさ・・・」

「うっとしいお前らが出てきたからね」

「神霊はともかく、それを呼び出すお前は生身の人間」

「お前さえいなくなれば、私の勝ち」

「だから、お前はここで傀魔に食われて死ぬのよ」


「べらべらと、くだらない講釈はもうよろしいですか?」


「なんだ神霊風情が・・・お高く止まりやがって」


すると薄暗い壁から、二匹の傀魔が出現した。


「こいつらは、この前のやつらとはケタが違うぞ」


「私は蛾非を倒します」

「神羅は、お友達を助けて・・・」


「おっと、近ずくとこの子の命はないよ」


蛾非はどこからともなく短刀を出して佐奈の首に当てた。


「お友達をなんとかしないと戦えませんね」


「一か八か・・・」


神羅はそう言うと校庭で佐奈からもらったボールを蛾非に向かって投げた。


つづく。

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