第13話:連れ去られた佐奈。

あくる日、朝から何事もなく授業がはじまって神羅にも平和な1日が過ぎていくと

思っていた。

板額はんがくのことは俺の思い過ごしか・・・あれは単なる噂だった

のかな・・・」


神羅は自分のポケットに佐奈から投げられたボールがまだ入ってたことに

気づいた。

「あ〜野球部に返すの忘れてた・・・まあいいか」


そう言って神羅はまたボールをポケットにしまった。


授業が終わって神羅は放課後、帰ろうとして廊下を歩いていた時、佐奈の

クラスの女生徒の声が耳に入ってきた。


「 沙奈が板額先生に職員室に連れて行かれた・・・」そんな話だった。


たしかにそう聞こえた。


「君たち・・・今の話・・・本当?」


「はい、私たちも佐奈も帰ろうと思って、教室を出ようとしたら板額先生が

現れて佐奈に何か話していて・・・」


「私たちには、藤井さんと職員室で話があるから、あなたたちは先に

帰りなさいって言われたんです」


「そしたら、先生が佐奈を連れて教室を出て行きました」


「私・・・なんか気持ち悪くて・・・」


神羅はすぐに職員室に向かった。

なにかあると思ったが傀魔の気配も匂いもしなかった。


職員室は電気が消えていて人の気配はなかった。

神羅は新月丸をたずさえて職員室のドアをそっと開けて中に入った。


中は薄暗く・・・この暗さなら傀魔が出ても不思議ではなかった。

神羅は新月丸の明かりで部屋の中を探ったが、

そこには佐奈どころか板額も他の先生の姿もなかった。。


(いったい佐奈はどこへ連れて行かれたんだ・・・)


神羅はこんな誰でも分かる場所で騒ぎを起こすバカもいないと思ったが

敵は何をするかわからない。


(どこへ行った?・・・分からない・・・)


板額の気配も佐奈の気配もいた痕跡もなかった。


(アカルがいないと何も見えないし、何も分からない・・・)


神羅が阿加流姫を学校に呼んだ。

数秒経たないうちに、すぐさま阿加流姫が現れた。


「神羅・・・なにかあったんですか?」


「俺の友達が消えたんだ・・・たぶん、ここに連れて来られたんだと

思うけど・・・その気配すら感じない」

「アカル・・・何かわかるか?・・・」


「悪い気といい気のふたつの痕跡を感じます」

「他に気配は?」

「他にも先生がいたと思うんだけど・・・」


「いいえ、感じるのはここにいた、ふたつの気配」

「連れ去られてますね」


「どこへ・・・こんな短時間に・・・」


「おそらく違う次元でしょう」


「違う次元?・・・違う次元に連れ去るってそんなことができるのか?」


「長年生きて、さまざまな知識を得た者は人知を超えた能力を備えて

るって聞いたことがあります」

「憶測ですけど、おそらく異次元へ連れ去られたんだと思います」


「私も異次元から来ましたからね」


「異次元か・・・やっかいだな」


「この世は、ここだけではなくて目には見えませんが、さざまな異次元で

構成されてるんです」


「人間には異次元へ行く能力がないから誰も知らないだけです」


「そんなところへ連れ去られたら追いかけようがないよ」


「大丈夫・・・間に合えばいいんですけど・・・」

「神羅はここで待っててください・・・」


そう言うと、阿加流姫は消えた。


「アカル?・・・まさかひとりで異界へ行ったのか?」


つづく。

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