第12話:板額 涼子と藤井佐奈。

朝、神羅は阿加流姫に見送られて学校に出かけて行った。

結局、阿加流姫は家に残った。


「行ってらっしゃい・・・充分気をつけてくださいね」


「分かった」

「なんだかアカルに見送られると新婚さんみたいだな・・・」


「召喚士と神霊は一心同体ですから、そのようなものですよ」


阿加流姫にそう言われて神羅は苦笑いした。


学校では朝礼の時、校長先生から新任の先生を紹介された。


「みなさんも、ご存知のとおり平先生が定年退職なさったので・・・

「その後任としまして本日より当校に新たに赴任された先生をご紹介します」

「私の右手にいらっしゃる方が新任の板額はんがく先生です」


「みなさん「板額涼子はんがく りょうこ」です、よろしくお願いします」


彼女は そう言ってお辞儀をした。


その先生は板額 涼子「はんがく りょうこ」と名乗った。


板額涼子と名乗った女は血が通ってないかと思うほど青白くてまるで

精気にかけていた。

青白い顔に真っ赤な唇がやたら彼女を冷血そうに見せていた。


板額涼子は神羅の一年下のクラスの受け持ちになった。

佐奈さなのクラスだと神羅は思った。


それと弓道の全校大会で優勝した経験を持っているとかで、 そのため弓道部の

顧問にもなったらしい。


板額が来て、数週間経った頃、偶然かどうかは分からないが女生徒がひとりづつ

消えて行くと言う不気味な事件がおきた。


板額に呼び出された女生徒は放課後になっても教室に帰ってこない・・・

そんな噂が生徒たちの間で飛び交った。

たしかに数名の女子学生が行方不明になっていた。


一応警察には届けて捜査したらしいがたいした進展はみられなかった。


授業が終わって、そろそろ帰ろうと教室から校庭に出た神羅はこれは

もしかしたら大きな事件のはじまりじゃないかと嫌な胸騒ぎを覚えた。


神羅は板額自体がハナっから怪しいと思っていた。

板額が弓の名手と言うのも気になることだった。


傀魔と戦った時、弓矢が飛んできたことを神羅は思い出していた。

そんなことを考えていると知ってる声が背中でした。


比古神ひこがみくん・・・まだ帰らないの?」


振り返ったそこに藤井 紗奈ふじい さながいた。


佐奈は神羅の一年下のクラスの女子で小学生の時から神羅とは幼馴染で

仲が良かった。


「ああ、沙奈か・・・」


佐奈は運動場で拾った野球のボールを神羅に投げた。

ボールを受けとった神羅は、そのボールを投げ返さずにズボンのポケットに

しまった。


「明日、野球部に返しておくよ


「私、もう帰るところ・・・方向、同じだから一緒に帰ろ」


「ああ、いいよ」


神羅は佐奈とは帰る時間が合った時は、時々一緒に帰ったりしていた。


「さっき、ぼ〜っとして何、物思いにふけってたの?」


「ん?・・・いや、なんでもないよ」


「私には言えないようなこと?」


「いや、そう言うんじゃなくて、ほんとになんでもないから」


「そう・・・じゃ〜もし・・・困ったことがあったら言ってね・・・」

「私でよかったら 相談に乗るよ」


「ありがとう・・・」

「そうだ・・・板額先生ってお前のクラスの担任だよな・・・」


「そうだけど・・・」


「これは余計なことかもしれないけど・・・」

「あの板額って先生に不穏な動きがあったらすぐ俺に教えて教えてほしんだ」

「そういうのは女の感の方が鋭いって言うから・・ ・」


「なに?・・・板額先生がどうかしたの?」


「学校で噂されてること知ってるだろ?」


「うん、知ってる・・・だけど証拠もないのに人を疑うってのはどうかな」


「そうだけど、生徒が行方不明になってるのは確かだ」


「うん、分かった・・・板額先生のこと見てるね」


「無理しなくていいから・・・」

「あ、やっぱり、いい・・・佐奈は関わらない方がいい」

「今の話は忘れて」


「へんな人・・・時々比古神君のことが分からなくなるんだよね」


「そうか?・・・」


「子供の時から、そうだよ」

「捕まえられそうで捕まえられない・・・」

「私は比古神君のこと知ってるようで何も知らないんだもん・・・」


「知らなくていいこともあるよ」


神羅はそれ以上は無理に話さなかった。

そんなやりとりをしてるうちに、ふたりは神羅の家の手前の分かれ道まで来ていた。


「じゃ〜ここで・・・さよなら比古神くん」


「じゃ〜な沙奈、また明日」


お互い手を振って右と左に別れた。

神羅はもう一度振り返った。

帰っていく沙奈が振り返って、手を振っていた。


沙奈はクチパクで何か言っていたが、なにを言ったのか神羅には分からなかった。


つづく。

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