第11話:傀魔を操るやつ。

時間が経てば傀魔の足が再生する。

そうならないうちに神羅は傀魔の突き出した腕を避けると新月丸を

思い切り振りきった。

大根でも切るように傀魔の腕はグバッと切り落とされた。

残った傀魔の腕から血が吹き出した。


「ぐえっ・・・小僧・・・きさま~・・・」


重い衝撃が体に来るかと思ったが意外と軽いあたりだった。

力は入れていないが新月丸が自然に弧を描いたように感じた。


「行ける・・・」


足を失って腕を切られたカイライはのたうって暴れていた。

だが、徐々に足が再生しはじめた。


「くそっ、早くしないと・・」

「でも、あんなに動いたら首が切れないよ・・・」


傀魔は起き上がろうとして、少し動きが止まった。

鼻から蒸気を吐いて憤慨していた。


「今です、神羅・・・傀魔の横に回って・・・」

「上段から思い切り新月丸を振り下ろせば、きっと切れます」


神羅は阿加流姫の言う通り傀魔の真横にすばやく回った。

傀魔が振り向く前に上段から傀魔の首めがけて新月丸を思い切り振り

下ろした。


ビューッと言う音とともに骨を断ち切る音もしないで傀魔の首は吹っ飛んだ。

神羅は夢中だったため傀魔の首が飛んだのも気がつかなかった。


「おみごとです・・・嘉幻斎様の言いつけどおり剣道を習っていてよかった

ですね、神羅」


神羅はすぐに阿加流姫のところに駆け寄った。


「竹刀と剥き身じゃ違うよって言わなかったか?・・・でも感覚は覚えた」

「それよりアカル・・・大丈夫か?」


「今回は神羅に助けられましたね」


するとどこからか一本の矢が神羅に向かって飛んできた。

その気配をすぐ感じとった阿加流姫は、間一髪三日月丸で矢を払った。


「誰かいる・・・傀魔を操ってるやつにちがいない?」

神羅は矢が飛んできた方向を確認した。

だがそれらしい人物の影は発見できなかった。


「傀魔は弓など使いませんからね」

「暗くてよく見えませんね」


「逃げたんだろ・・・」

「さっきまで気配を消していたな・・・」


「神羅、気をつけてくださいね・・・」

「今のは危うかったですけど、とにかく傀魔を倒せてよかったです」

「二体目の傀魔は意外と強かったですね」


「大丈夫だよ、僕だって傀魔を倒せるって分かったから」

「これからは、ふたりで戦える・・・」


「俺、時間があるときは裏の竹やぶに行って新月丸が自分の体に馴染むよう

修行するよ」


「及ばずながら、私もお手伝いします」


「怪しい気配は消えてますね」

「もう安心でしょう」


神羅は倒した二体の傀魔を見ると、やつらは徐々に蒸発しつつあった。


「アカル、立てるか?」


神羅は阿加流姫を抱え上げた。


「もしかしたら傀魔の腕が当たったところアザになってるかもしれませんね」

「あ、大丈夫ですからね、歩けます・・・ひとりでも・・・」


「いや、俺が支えるから・・・このまま帰ろう」


「あの、私のパンツ見ました?」


「またそれかよ・・・見えるわけないだろ?それどころじゃなかったし・・・」

「俺をからかうなって・・・俺の反応がそんなに面白いか?」


「だって、神羅って真面目なんだもん・・・」

「だから、ついからかいたくなっちゃうんだよね」


「分かった・・・そんなに見て欲しいんなら次はちゃんと見るからな」

「それで満足なんだろ?」

「おかしな神霊だよ・・・なんでそこまでパンツに拘るんだか・・・」


「くすくす・・・」


「もういいから、早く帰えるぞ」


神羅と阿加流姫はなにごともなかったかのようにその場から消えた。


それからも神羅と阿加流姫は夜毎、街に徘徊する傀魔を倒していった。

その度、神羅の剣の腕も強くなっていった。


しかし、傀魔を操ってる者の正未は未だ掴めずにいた。


つづく。

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